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聖なる歌姫は嘘がつけない。  作者: 水瀬 こゆき
前世編
7/22

また明日って、言ったじゃないっ……!!

怒声が聞こえていたはずの部屋の中からは突然、何も聞こえなくなった。不審に思って慌てて私達はその部屋のドアを開けた。


その光景に、目を疑った。


部屋の中にいるのは、たった3人。

一人は部屋の隅でガタガタと震えている40代後半ほどの男性。

二人目は、部屋の中央辺りでナイフを手に不気味な笑みを浮かべた、同じく40代後半ほどの女性。

そして、もう一人。

同じく部屋の中央辺りにいてナイフを向けられている、10代後半ほどの女性ーー椿だ。


椿以外の二人の大人は、どこか椿に似ている。恐らく椿の両親だろう。でも、どう言うことなのか。

だって椿は家族と凄く仲が良いはず。それも抜群に。

今日だってDVD見るって言ってたじゃない!


ーーそれがどうして、実の母親らしき人に殺されかけてるの


空も、鈴堂も、状況が上手く飲み込めずに混乱していた。しかし、事態は一刻を争う。

考えている暇なんて、ない。


その時だった。


椿が笑った。ナイフを向けられていると言うのに。

ゾッとするほど美しく微笑んだのだ。

なぜか、部屋の隅にある観賞用植物の方を見ながら。


そして、空と鈴堂が止めに入る寸前で椿は刺された。

私達は、間に合わなかった。


「いやぁぁぁぁぁああああ!!!!椿っ!椿ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」


「おい、嘘だろ!?しっかりしろ!浮島、浮島っっ!」


椿の身体はゆっくりと傾くと、床に倒れた。

空たちは慌てて椿に駆け寄り、ボロボロと涙を零しながら呼びかけた。


「どうして逃げなかったの!?!?なんで助けてって言わなかったの!!ねぇ、椿ってば!返事をしてよ!」


「……くっそ!!!!!!なんで…!!俺は取り敢えず救急車呼ぶから!!」


私達がいくら叫んでも、いくら涙しても、椿は目を開けない。どうして?なんでこんなことになったの?


空は、小さな声で椿に言った。


「また明日って、言ったじゃないっっ……!!」



その時、閉じたままの椿の瞳から涙が零れ落ちた。


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