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聖なる歌姫は嘘がつけない。  作者: 水瀬 こゆき
幼少期編
15/22

な、ななななんじゃこりゃーーー!


くるくると毛先が緩やかに波打つ、艶のある金髪。

同色の、長い睫毛に縁取られているのは桜の花びらで染めぬいたかのような大きな薄桃色の瞳。

頰はふっくらと美しい弧を描き、まるで化粧をしたように薄っすらと桃色がかっている。

唇はぷっくりと可愛らしく、桜の花びらのよう。

肌はシミひとつなく、透き通るように白い。


これが、アルカティーナの容姿です。

正直初めて鏡を通して自身の姿を見たときは、え?アルカティーナって悪役だったよね?と、思ってしまった。だって、悪役と言えば吊り上がった猫のような切れ長の目に血で染めたような真っ赤な唇、でしょう?それなのにアルカティーナの容姿ときたら、可愛いかどうかはさておき、まるで人形のよう。


…わたくしって、本当に悪役なんでしょうか。


只今アルカティーナはそんなことを考えながら、ずっと鏡の中の自分を見つめている。ナルシストとか、そう言うのではありませんよ!!!

でも考えれば考えるほどアルカティーナが本当に悪役なのかと疑ってしまう。

だって、乙女ゲームの悪役ってあれですよね?

ヒーローに好かれるヒロインに嫉妬して、嫌がらせするって人ですよね?多分。

それはつまりアルカティーナは嫉妬すると人に嫌がらせをしてしまうような性格に育った、ということ。

ですが、わたくしにはアルカティーナがそんな風に育った原因が分かりません。

だって、お父様もお母様もお兄様も、使用人の皆さんも皆優しくて、わたくしに親切にしてくれます。

それに、お母様からは貴族令嬢としてのマナーや作法をスパルタで教えてもらっています。


ーーこんな恵まれた生活で、どうしてそんな人間に育つのでしょうか。


ーーそもそもわたくしは本当に悪役なんでしょうか。

ーーそれともただの夢でしょうか。


ぼんやりと思考にふけっていると突然頭に直接、誰かの声が響いてきた。まるでテレパシーのように。

(もー。酷いなぁー、もう忘れちゃったの椿さん?)

「な、ななななんじゃこりゃーーー!」

予想外の事態に思わず叫んでしまう。生まれて初めてテレパシーなるものを体験しましたよ!!というか、今の声…それにあの間延びした口調は……。

(ピンポンピンポン!大正解ー!僕だよー!天使だよ!久しぶりだね、ティーナ。)

会話方法はテレパシーに変わっても、人の心を止めるのは相変わらずらしい。

(あれ?そう言えば天使さんは今どこにいるんですか?姿が見えないんですけど…)

(僕?あー、僕はこう見えてもすっごく高位の天使なんだーー。)

「いや。こう見えてもって、見えないんですけど!」

アルカティーナのツッコミに天使はやはり間延びた口調で返事をする。

(あ!そっかそっかー。そうだったねぇー。それでね?だから僕、実は凄く忙しいんだ~仕事で。でも久しぶりにティーナとお話ししたくなってー、だから体は死者の世界(こっち)にあるままテレパシーを送ってるんだよ~。)

(なるほどー。天使さんはテレパシーも出来たんですねぇ。凄いです!)

(あ、そうそうー。それなんだけど~、天使さんじゃなくてちゃんと僕の名前で呼んでほしいなぁ~)

まるで付き合いたてのカップルのような台詞である。

…ん?待てよ??天使さんの名前、わたくし知りませんよ??

(あ!言い忘れてたけど僕の名前はナビって言うんだよー!)

(………そう言う大切なことは先に言いましょうね。)


そう言えば先程、天使さん改めナビは「久しぶりにティーナとお話ししたくなってー、」と言っていましたけれど…何か大切な用事でも??


するとナビはまた、ピンポンピンポンピンポーン!と叫んでから嬉しそうにこう言った。


(その通りなんだー!実は今日テレパシーを送ったのは、()()()()()()()()をティーナに伝えるためなんだよー!!)


ルール?ソースの二度づけは禁止~とかですかね?


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