あ、わたくしは女神だったわ。
僕は天使!
ある女神様の部下なんだ!
僕は部下として女神様が深夜テンションで作っちゃった合計12の世界の魂の輪廻転生の管理をしている。
すっごく大変なお仕事なんだけど、うまく出来たら女神様が、ぽてとちっぷすって言うパリパリした美味しいお菓子をくれるからいつもがんばってるんだー!
でも、僕はお仕事の後にしか食べられないのに女神様はいっつも、でぃーえす?を片手にバリバリ食べてるんだよー。羨ましいよー!
でね、僕の管理下じゃない世界の魂なんだけど、凄く面白い魂を見つけたんだ!それが『浮島 椿』さん!
彼女の生涯を見て見たけど、それはそれは悲惨なものだったねぇ。
でも僕、彼女のこと気に入っちゃったから今度こそ幸せになって欲しいって思ったんだー。
だから普通なら出来ないことなんだけど彼女自身に転生先を決めてもらったって訳!
でも、よりにもよって悪役に転生しちゃった…。
大丈夫かなぁ~??
「ねぇー、どう思う?女神様~~。」
「ぅ、わっ!ちょっと!いきなり現れないでよ、びっくりしちゃうんだから!!…どう思うって、例のあの女の子よね?そうねぇ、あのゲームの悪役令嬢、皆んなそろってヤバかったんだけど…中身があの子でしょう??……一種のキャラ崩壊になりそうねぇ。」
目の前には相変わらず胡座をかきながら、いやほん?とやらをし、ゲーム画面に向かう女神様。
そしてその手元にはやはりぽてとちっぷす。…あれ?
「ねぇねぇ女神様~。その、ぽてとちっぷす!もしかして期間限定ってやつ?そのパッケージ初めて見たよーー。」
目を輝かせる天使に女神様は慈愛に満ちた笑顔を浮かべる。
「あはは。このポテトチップスが気になるのね?食べて良いわよ?何なら丸々一袋あげるわ!」
「えー!いいのー??ありがとー!女神様!!」
やったぁ!女神様ってやっぱりすっごく優しいよー!大好きーー!えへへ!
「じゃあ女神様、そろそろ僕は帰るね!」
「えぇ、じゃあね。」
女神が天使に手を振ると、天使は満足げな顔を浮かべて溶けるように姿を消した。
そして、残された女神はと言うと……。
「よっしゃ!ゲーム再開ぃーーー!ひゅーう!てか、さっきやったゲームマジクソゲーだったわぁー!それに引きかえこのゲーム!神かよ!マジ神!神よ!ありがとう!私は貴方が大好きよ!!あ、私女神だったわ。」
ゲーム画面を見つめながらふと、女神は思い返す。
例のあの女の子、悪役令嬢に転生したって言ってたけど……一体どの悪役に転生したのか。
あの世界ーー『聖霊のアネクドート』という乙女ゲームの世界には、悪役令嬢が三人登場する。
その三人はなかなかにクセの強いキャラクターでストーリーを見ているぶんには最高に面白かった。
だが、その三人の中でもランクがある。
所謂、結構ちょろい雑魚の悪役が一人。
まあまあやばい中ボス的な悪役が一人。
魔王級にやばいラスボスな悪役が一人。
…彼女は一体誰になったんだろう。
そういやあのラスボス、なんて名前だっけ。
えーっと、あ!そうそう!思い出したわ!あれよ!
アルカティーナ・フォン・クレディリア!!
見た目は超絶可愛くってまるで天使!でも中身がってやつよ!
うん、まぁアルカティーナとかになったらマジでやばいわね!ないとは思うけれど。
そして女神は思い返した。
『聖霊のアネクドート』も神ゲーだったなぁ、と。
そして同時に、こうも考えていた。
天使にあのポテトチップス押し付けられて、マジで良かった!!!!あのポテトチップス本当に不味かったのよねぇ、と。
◇ ◆ ◇
鼻歌まじりで天使は一人、ぽてとちっぷすの袋からぽてとちっぷすを一枚取り出した。
それは、優しい優しい女神様がくれたもの。
天使はそれはそれは嬉しそうに、いっただっきまぁ~~~~~す!!!と言ってからパクリとそれを口に放り込む。
そして、次の瞬間天使はそのぽてとちっぷすをブホッと吹き出した。お行儀が悪いとかそんな事は言わないでもらいたい。
だってこのぽてとちっぷす、すっっごく不味い!!!
天使は足元に転がったぽてとちっぷすのパッケージに目をやった。期間限定、と書かれたその袋にはこう書かれてあった。
『おいし~いスイカレーメンタイコ味』
その横には腹立たしくも美味しそうなスイカとカレーと冷麺と明太子の写真がプリントされている。
成る程、通りでゲテモノの味がする訳だ。
天使はショックでその後三日、寝込んだ。




