弟と言葉。
その時私は窓からFlyできた。
いや、したかった。
しかも一階の窓から!
それは、こっそり夕飯をつまみ食いに行った時のことだ。
そこには、我が愛らしき弟がせっせと私のために餃子なるものを作っていた。
家のボスと一緒に。
いつもならボス一人で作っているのだが…
まぁ弟一人ならなんとか気を逸らせてつまめるとおもった。
しかし。
なんのサービスか、母の背中に、おんぶ紐で囚われた我が姫もいる。
彼奴は意外と耳が良くて私が近づくと必ずねーねだ!と言う。
言うなればボスの上…つまりクッパだ。
「くっ…、これでは、門番が多すぎるっ…!」
私は自分の両手を見た。
私はギリギリ人間だ。
それなのに、頭に六つの斑点があるあの人類最強の男と同じような目くらましの術は使えない。
無論閃光弾さえも持っていない。
これぞミッションインポッシブルだ。
私はここにきて作戦変更した。
敵の懐に入り込み目を盗んでつまみ食うことだ。
しかしこれには欠点が一つある。
恥ずかしながら、私はこのミッションをクリアしたことがない。
それはなぜか?
盗み食いをすることへの罪悪感。そして、単純にやる前にバレるからだ。
まぁそれ以前に、私の中のアリンコ並みの正義など使い物にならない。それ故に神に見放された、そういうことだ。
もしこれが、いつもは青い狸に頼らないと射的とあやとりが唯一の取り柄にしかならないあの少年だったなら…。
あの少年は映画の時だけ存在が正義のような少年だからこそ神も見放さない。
最後にはハッピーエンドが口を開けて待っているのだ。
何が言いたいかと言うと、私は良いことなんて行って来なかったと言うことだ。
おねぇさん大好き五歳児も映画の時には立派な青年だ。
私はといえば、文化祭の時に「リア充が一匹ぃぃいいぃ!」
などと…
いやこれは置いておいて、、、。
私はまた作戦変更した。
その時私の中の天使が呟いた。
こんなことやめましょう?諦めも大切よ?と。
ー諦める?俺の辞書にそんな言葉はない!
※私のモットー:食べ物に関しての追求は人間の悲しいサガである。
私はそっと敵陣に近づいた。
その時!運命の悪戯か!
ピーチ姫は眠りに落ちていたのだ!!
「母よ。一つ食しても文句はあるまい?」
この勝機が見えた私は母に尋ねた。
声が震えている。
これぞ秘技直接頼む!
「いいよ〜」
軽いっっ!
とは思いつつ、二つとって口に葬る。
餃子の悲鳴が聞こえてきそうだ。
「美味しっ!」
「ほんと?」
弟が嬉しそうに言うもんだから、褒めちぎったら地雷を踏んだ。
「さすが!未来の飛び級の大学生!!」
※最上級の褒め言葉である。
悪乗りしたお母さんが一言。
「なんで黄色い富士は飛び級しなかったの〜?ニヤニヤ」
「お母様ぁ〜?ニヤニヤ」
すると弟が一言。
「高校生になりたかったんだよね?
だってねぇちゃんふつーに頭いいじゃん。
飛び級できたけど、そもそも飛び級ってないし、それに、単純に高校生になりたかったんでしょ?」
弟の純粋な尊敬が、そのまっすぐな視線が痛い…。
ごめん弟。いつか気づくだろう。
私は君の望んだ理想の姉ではないと。
君の姉は、ほんと、バカなんだよ……。
体型だけは飛び級なんだけどね……。
いや、いいんだ。弟よ。
私がいつまでも君を騙していい姉を演じるから。
それが君の望む結末ならね…(泣)
「そうだよ弟よ。
私は今の高校で満足っ!(つ…強がりじゃないんだからね!!)
ただ、JKというブランドが、欲しかったのさ……」
明後日の方向を見ながら…。
弟は私を見て微笑んだ。
「さすがねぇちゃん!」
お母様は笑いを堪えていたけど…
「…………wwww」
我が家は今日も賑やかだった。
弟がどの高校を選ぶのはまだちょっと先の話だ。