新しい人類と古い人類の話
新人類は所詮、失敗作でしかなかった。そしてそれは人類にも同じことが言える。
主人公はとある学校の少年だった。
主人公は第一種の新人類だった。新たな可能性を託された、人類の次なる希望。
彼ら新人類達は全て遺伝子組み換えによって誕生した。第一種の新人類は、他の人間とできることも感じることも何も変わらなかった。
主人公は母子家庭で育ったため、マザコンだった。当然ながら母も新人類だったため、偏見や差別は決してなくならなかった。生まれてしまった後に、普通の人間に生まれ変わるなんてことは出来ない。
主人公は母を憎んだ。なぜ生んだのか、と。
同じクラスのヒロイン1は、同じ第一種の新人類だったため主人公を差別しなかったが、同じく新人類のヒロイン2は徹底的に主人公を差別した。
そんな中、主人公は自分のことを認めてくれるヒロイン1のことが好きになっていった。だが日常に変化は訪れる。
母の様子がおかしくなったのだ。
左腕だけが巨大化し、脳の一部に損傷が起き、理性が亡くなった。それは遺伝子組み換えによる副作用だった。
母は人間ではなくなった。
母は新人類だった。だが今の母はモンスターだ。
母は、第二種と呼ばれる主人公とは別の新人類で結成された処理班によって処理された。その処理班にはヒロイン2がいた。ヒロイン2は第二種の新人類だった。
主人公の母を殺したのはヒロイン2だった。
第二種の新人類は通常の人間ができない全てのことができた。
地球上のどの生物よりも優れた彼らは新たな可能性として期待された。
主人公の学校の先生が産休明けで復帰してきた。先生は普通の人間だが、奥さんは第一種の新人類だった。人類と第一種の新人類との間にできた子供。彼らは第三種の新人類とされた。
彼らは普通の人間よりも脳が発達しており、人類の誰よりも早く進化の行く末にたどり着く。
その答えを元に彼らは第二種の処理班と協力し、人類を滅ぼすことを画策する。その手始めとして処理班は主人公のいる学校を襲った。
彼ら第三種は自分を生んでくれた親を最初のターゲットにしたのだ。
そして先生は殺された。
その時にヒロイン1も殺された。ヒロイン1は新人類などでは無かった。
普通の人間だった。
それでも主人公のことを差別しなかった。主人公はそんなヒロイン1の仇を討つことを決意する。
処理班で暗躍するヒロイン2には一つの夢があった。好きな人と普通の家庭を築くことだった。
その為にもこんなことは早く終わらせたかった。
そしてヒロイン2にも好きな人ができる。
その人は同じ処理班の参謀で、第三種の新人類だった。
ヒロイン2はそういうことには不慣れであった為、中々気持ちを伝えることができなかった。だが考え方の違いで彼と衝突してしまう。彼は参謀であるが人類の粛清には消極的であった為、普段からヒロイン2とは対立していた。
そんな時、処理班の宿舎が何者かに襲撃される。ちょうどその時ヒロイン2達は遠征していた為、駆け付けるのが遅れる。ヒロイン2が帰って来た時にはもう遅かった。
参謀だった彼は無残な姿でヒロイン2によって発見される。
彼を殺したのは主人公だった。
怒り狂ったヒロイン2は主人公を殺そうとするが主人公の一言によって彼女は失意にのまれる。
「お前がこいつと仲良くして、いずれ家庭を築くことなんて無理だ」
「だってお前ら第二種の新人類には、生殖能力がないからな」
不意を突かれ、ヒロイン2が動けない間に主人公は逃げ出した。ヒロイン2は、彼を殺した主人公を殺すことを決意する。
その後ヒロイン2は実力をつけ、処理班の班長になる。そしてかつての宿舎に主人公を呼び出す。だが先に待っていたヒロイン2は思わぬものを発見する。
それは彼の遺書だった。
彼は自殺していたのだ。
その遺書には彼の考えが綴ってあった。人類は最初から間違っていたのだ、と。そしてそれを解決するにはもう死ぬしかない。そして遺書の最後には、一言だけごめん、と書かれてあった。
ヒロイン2はかつて彼の亡骸があった場所で泣き崩れた。
そしてヒロイン2は彼の考えを受け入れた。かつての、今までの自分の行動を見直した。
殺した命が元に戻ることはない。
だが、ほんの小さな事ならできるかもしれないと考えた。そして遅れてやってきた主人公に謝った。
お母さんを殺したことを、ヒロイン1を殺したことを。
主人公もヒロイン2を怒らせたことを謝った。彼らは和解することができた。
だが、彼らもまた、新人類だった。
ヒロイン2の様子がおかしくなる。体が巨大化し、彼女もまた、理性を失った。彼女にも、副作用が起きたのだ。モンスターと化した彼女を止めることは出来なかった。彼との思い出の宿舎も壊してしまう。
だが、暴れつくしたそのモンスターは自殺する道を選んだ。
主人公はそのモンスターを宿舎の跡地に埋葬した。そして主人公は共存の道を模索し始めたのだった。