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第5話

 DTDは<ミスズ食堂>から出たあと、人目につかなさそうな森に囲まれた廃墟に入り込んでその2階にある寝室のベッドでくつろいでいた。



 窓は半分割れており、天井の角にはクモの巣が広がる埃っぽい真っ暗な所だった。



 1階にも寝室らしきものがあったが忍び寄って中身を覗いてから厄介ごとを起こしたくないから2階に移動したのだ。



 先客がいたのだ。



 黒と青の半透明の結晶の皮膚を持ち、複数の顔がくっついた2メートルにもなる異形は月光に照らされ不気味に輝いていた。



 DTDはそのステータスを思い出す。



ヴィエ・デス


モンスターレベル 65


モンスター種族 アンデッド


体力 5287/5287


攻撃力 1046


防御力 1972


器用 710


素早さ 502


知力 104


魔力 278



 あのステータスから察するに硬い肉弾戦モンスターだろう。相手にするには厄介だ。



 館に住んでいた者の成れの果てだろうか、DTDには判断しかねた。



 彼が思慮にふけっていると1階で爆発音が聞こえた。



 そして、人の叫び声も。



 位置的にあの怪物と戦っているのだろう。



 DTDが様子を見に行こうとベッドから降りたその時だった。



 ギシ、ギシ



 遠くから微かにだが複数の足音が聞こえる。



 さっきの轟音で神経をとがらせなければ聞こえなかっただろう程度の音、されど足音がこちらに近づいてくるのは間違いなかった。



 足音のする廊下へさらに耳を傾ける。



 途切れ途切れだが、


 下で戦闘、副隊長、犯人、いない、部屋、次は、


 という単語が聞こえた。



 犯人、恐らくDTDが今日の昼に殺人をしたことを指しているのだろう。



 間違いない、彼らはDTDを探している。



 そうなると彼の行動は決まったようなものだ。



 足音が近づく。



 犯人に聞こえないようにするためか随分小声で話しているようだ。



 会話から隊長なるものの存在が確認できる。



 警ら隊隊長、かなり腕の立つ相手だ。



 彼らがDTDのいる部屋の前に来る前にDTDは扉の前に静かに立ち、剣を抜いて構えていた。



 足音が扉の前に来た次の瞬間、彼は心臓を狙うようにして思い切り薄い木製の扉に剣を突き立てる。



「グッ、アッ……」



 警ら隊の1人が突如として現れた剣に貫かれた。



 即死だろう。



 そして、目にも止まらぬ速さで剣を男の体から抜き扉をその男ごと吹き飛ばす。



 DTDは空いた部屋から颯爽と抜け出し廊下の左右を素早く見やる。



 右には唖然として口を開ける3人、そして左には既に片手剣を振りかざそうとしてる屈強な男、彼が隊長なのだろう。



 1秒で起こっていることを理解したDTDはすぐに剣を体の前に構え、防御の姿勢をとる。



 ドンっ



 凄まじい激突音が廊下に響き渡り、DTDは隊長の攻撃の勢いを削げずそのまま廊下の窓に突っ込み、そのまま2階から広場へ放り出された。



「奴が犯人だ! 逃がすな」



 怒号が聞こえ、上にいた4人が一気に窓から飛び降りてDTDのもとにやってくる。



 彼はすぐさま倒れた体を起こし、それに応戦する。



 4人は彼を取り囲み、誰か1人にDTDの斬撃を集中させないようにしている。



 だが、1分ほどの攻撃の応酬で彼らの戦闘スタイルを見抜いたDTDはすぐさま攻撃へと転換する。



 突如として変わった彼の動きに4人は少なからず困惑し、隙ができる。



 キンッ



 それを狙ったDTDがすぐさま回し切りを行い、4人を5メートルほど退かせた。



 4対1の有利な勝負のはずなのに一向にダメージをDTDに与えられず、微かに不安を覚えつつ疲労の色を見せながら警ら隊の1人が彼を睨みつける。



「オズウェル隊長! ここはアレをやりましょう!」



 呼びかけに応じてオズウェルと呼ばれた男が頷く。



 4人は先ほどとは打って変わった型で突撃の態勢をとる。



 必殺技か何かだろう。



 では、こちらも奥の手を出そう。



 DTDは心の中で静かにつぶやき、寒風の中で目をつむり剣を下に向けじっと立った。



 彼の異変に気付いたオズウェルが部下に叫ぶ。



「何かおかしいぞ!」



 だが時すでに遅し。



 オズウェルは部下の後ろに立っている影をその時ハッと垣間見た。



 ブシャッ



 DTDの一歩手前で警ら隊の2人が胸を貫かれた血しぶきをあげる。



 胸には黒い手刀が突き刺さっていた。



 これがDTDの奥の手、<影の悪戯シャドウ・ミスチーフ



 対象の影を独立させ、その影に対象を襲わせる魔法族ニュクスの能力の1つ。



 唯一の回避方法は対象が自らの影を視認することだけ。



 操っていた影が元に戻り、地面に2体の死体が転がった。



 味方を2人失ったことで陣形を整え直すためオズウェルとその部下は大げさに距離をとった。



 2人は異変に気付きギリギリで目視していたのだ。


 切迫した緊張と死の香りがあたりをわずかな静寂とともに包む。



「それじゃあ、俺の番だな」



 戦闘が再開され、立場が逆転する。



 オズウェルと部下は防戦一方になり、やがて部下が地面に崩れ落ち1人となった。



 オズウェルの持ってる大盾の堅固な守りのせいでDTDは切り傷を多少与えられるもののどれも深手には至らない。



 彼は頃合いを見て攻めるのを中止し、一歩退きオズウェルのステータスを確認した。


オズウェル


NPCレベル 56


魔法族 サルクス(※肉体系魔法族レベル1)


体力 670/1568


攻撃力 720


防御力 1700


器用 641


素早さ 276


知力 519


魔力 570


<装備>


クルシーズの兜

クルシーズの鎧

クルシーズの籠手

クルシーズのブーツ


全て防御力5%アップ


ヨルバの盾


防御力30%アップ


ルマニックの剣


接触した対象にスロウ効果


 だいぶ、オズウェルは弱っていたが、マジックアイテムのおかげもあって未だに図太く立ち続けている。



 DTDはさらなる攻撃に打って出る決意を固め、飛びかかろうとしたその矢先に、彼の足元の地面が歪み、土の壁をもってして閉じ込めようとうごめいた。



 DTDはそれに難なく対応し、回避しつつ魔法の使用者の発見を急いだ。



そして、

「やっと、駆けつけられましたよ」



と館の方から声がした。



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