志望動機
「さて、エントリーシートで最初に説明するのは『志望動機』だな」
「それですよ! 色んな会社を受けるから、段々適当になっていくというか、訳が分からなくなってくるんですよ……」
ふむぅ、と俺は唸る。
「ちなみに、普段どんな感じのこと書いてる?」
「えっと、御社の社風が合うとか、企業理念に惹かれたとか……」
さすが後輩、やはり王道を行ってくれる。
「それは完全に間違いとは言えないが、足りないな」
「足りないんですか?」
「志望動機は以下の項目をきちんと書ければ、面接対策にもなるから覚えておけ。
1.その職種を選んだ理由(インフラ、金融、販売、etc)
2.その業界を選んだ理由(電気、ガス、銀行、信用金庫、etc)
3.その会社を選んだ理由(○○電力、××ガス、△△銀行etc)
4.その会社でどんな仕事をしたいか(総務、経理、営業、広報、etc)
多くの就活で上手くいかない人は、大体『この職種で働きたい!』『この業界で働きたい!』っていうのは伝わるんだけど、「じゃあなんでうちの会社に来たいの?」っていう部分が抜けてるから熱意が伝わらず残念ながら……って場合が多いんだよね」
「はぁ、なるほど」
「例えばだけど、某電力会社の合同面接で見かけた人なんだけど、『私は将来の日本をエコでクリーンな世界に誇れる国にするため、御社を希望しました!』って言ってる人がいたんだ」
「凄いじゃないですか」
「ところが、面接官から『別に他の電力会社でも良いんじゃないの?』って言われた途端に言葉に詰まっちゃったんだよね」
「あららぁ……」
「この場合、1と2はきちんと出来ていたのに、3のこの会社への志望理由が抜けちゃってたんだよね」
「やっちゃいそうですね……でも、『なぜその会社が良いのか』って意外と難しくないですか?」
後輩の質問に、俺は頷く。
「多くの学生は『興味ある業界だから』『大手だから』で会社を選んでると思う。ぶっちゃけ、業界上位の企業の差異なんてそこまで無いと言っても良いだろう」
「だったらその会社を選んだ理由書くの無理じゃないですか」
「そこで、会社説明会だ。それぞれの会社で『自分の会社の強み』っていうものがあるんだ。海外進出をしているだとか、新しい商品開発に力を入れているだとか。会社説明会でそういったことをしっかり聞いておけば、そこに魅力を感じたって書けるだろ」
「なるほどぉ」
「そして、この会社を選んだ理由に付随する形で、『私は自身の強みである○○を活かせる営業職で、御社の魅力を引き出したいです』とか言えば、おお、この子はちゃんと勉強してるな、って見える」
「ふむふむ」
「だから、ちゃんとその会社にどんな部署があるかも、資料や会社説明会で聞いておくことが大事だな」
「はぁ、そんなこと考えてませんでした……」
「ちなみに、どの会社に行っても働く部署の希望を何も考えずに『企画・広報』にしている奴らは多いから要注意な。きちんと、自分の持ち味が活かせる部署を書くように」
「自分の持ち味ってなんでしょうか」
「それはまぁ、自己PRと学生時代頑張ったことのところで説明する」