表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/29

親と子

お久しぶりです。

小さい頃、夕介は図書室で親と子に会う──。


※途中、夕介の語り?が入ります。

 とある休日。十川(とおかわ)夕介(ゆうすけ)の家に、夕介の近所に住んでいる高校生、龍野(たつの)(すず)とその友だちの鈴木(すずき)(けん)佐藤(さとう)(えん)がお邪魔していた──。


「皆、夏休みの宿題とかちゃんとやってる?」


 お茶を持ってきた夕介が訊くと、佐藤があちゃ~という顔をして口を開いた。


「それは言わないでくださいよ、まだ夏休みだって始まったばっかりなのに……」

「そんなこと言ってるとすぐ夏休み終わっちゃうよ」


 とお茶を置きながら夕介は笑う。


「十川さんは学生の時、宿題とか早めに終わらせてました?」

「うーん、おれは計画立ててやってたかな。でも、休みが終わる一週間前には終わらせてた」


 と夕介が鈴木の質問に答えると、佐藤はすごいと手を合わせた。


「私だったら絶対終わらない……」

「佐藤はすぐ横道に逸れるからな」

「だって、夏は心霊特番とかいっぱいやるから、リアルタイムで見たいじゃん!」


 と佐藤は涼に言う。

 夕介はそんな佐藤に一つ提案した。


「じゃあ、今日現代文の課題全部終わらせたら、おれが一つ話してあげるよ。実体験」

「え! ほんとですか!?」

「うん」

「やったあ!! じゃあ頑張ります!!」


 俄然やる気が出てきた佐藤に微笑む夕介に、鈴木が窺うように訊く。


「いいんですか、そんなこと言って……思い出したくない事とか、あったりしないんですか?」

「ん?うーん、そうだな……。おれはほんとに小さい頃からそういうことに関わってきたから、思い出したくないとかはないんだ」


 「まぁ、悲しいとか寂しい思い出はあるけど」と夕介は付け足した。

 夕介は、小さい頃からよく視たり聞いたりしてきたため、そういうことやモノに怖いと思うことはあまりないのだ──。


「そうですか、ならいいんですけど……」

「うん。心配してくれてありがとう。大丈夫だよ──」

「……いわれてみれば、十川さんの小さい頃ってちょっと気になりますね。なんか、今の十川さんがそのまま小さくなった感じなんすかね?」


 と鈴木と夕介の話を聞いていた涼が不思議に思う。


「んー、どうだろう。そうかもしれない──まあ、その話は皆の課題が終わってからゆっくり話すよ。はい、頑張ってね」


 上手く話を切り上げ、夕介は軽く手を叩いた。

 そして三人は夕介の話を聞くため、持ってきていた課題に取り掛かり始めるのだった──。


             *


 三人が課題を始めて二時間経つか経たないかくらいで、三人は課題を終わらせた。


「十川さん、終わりましたよ!」


 と佐藤が期待を込めた眼差しを夕介に向ける。

 夕介はそんなに期待されても困るんだけどな……と思いつつ、口を開いた。


「じゃあ、そうだな……。おれが小学生の時の話でもしようか──」


             *


 それはおれが小学二年の時の話なんだけどね。

 「本が好きなの?」って、図書室で本読んでたら、綺麗な女の人が声掛けてきたんだ。

 その時図書室にはおれしかいなくて、昼休みだったから皆外行ってたりして、図書室使う人いなかったんだよね。

 で、訊かれたら答えなきゃいけないなと思って、はいって答えたんだ。

 そしたらその女の人がおれの横に座って来てさ、笑顔で言うんだ。

 「じゃあ私が読んであげる」って。

 その時ちょうど読んでたのが絵本だったからさ、読み聞かせしてくれるんだなって思ってたんだけど、その女の人が話し始めたの、絵本の内容じゃなかったんだよね。

 「……私にもね、あなたぐらいの息子がいたのよ。ほんとに可愛くてね、目に入れても痛くないくらい──」って、女の人、息子の話を始めてさ。

 おれは絵本の続きが読みたかったから、ちゃんと女の人の話聞いてなくて、少しぼーっとしちゃったんだ。

 そしたら「聞いてる?」って顔覗いてきて、その時まで気付かなかったんだけど、女の人の顔が(あざ)だらけだったんだよ。それはもう、痛々しいくらいに……。

 おれは女の人の話とかより、そっちの方が気になっちゃって、女の人に「顔痛くない?大丈夫?」って訊いたら、女の人が一瞬驚いてから、自分の顔を覆ったんだ。

 それで弱々しい声で、女の人は「……うぅ、私の息子も、優しい子だった……ほんとに、優しい子だったのに……っ」って泣き出して、何度も何度も謝ってて、おれどうしたらいいかわからなくてさ……。昼休みも終わっちゃうし、どうしようって思ってたら、図書室におれと同じくらいの男の子が入ってきて、女の人の横に立って「お母さん、僕はここにいるから、行こう?」って、女の人の手を取ったんだ。

 女の人は男の子に引かれるように歩いて行ってね。

 で、図書室から出る所で男の子が振り向いて、苦笑いで小さく頭下げたんだ。

 なんか、ごめんねって言われたみたいだったよ──。


            *


「……まぁ、二人とももう亡くなってて、女の人が先生で、帰りによく男の子に図書室で読み聞かせしてたらしいって、結構経ってから知ったんだけど」


 と夕介が話を締めると、佐藤と鈴木は小さく息を呑んだ。


「なんか……何とも言えない話ですね……」


 と鈴木は苦笑いする。

 佐藤は腕を組むと、少し考えるようにして言った。


「なんで女の人は十川さんに声を掛けたんだろう、男の子と似てたのかな」

「かもな。それか歳が近かったら誰でも良かったとか?」


 「わからないけど──」と涼が付け足す。


「……でも、男の子が来てくれてよかったよ。授業に遅れるところだったからさ」


 「間に合ってよかった」と夕介がのほほんと言うので、三人はそこ?と不思議に思うのだった──





夕介「ほんとに、痛そうだったんだ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ