表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/28

洗濯物

汚れ物を出したのは……?

お久しぶりです、遅くなりました……。

「最近、暑くなってきたなぁ……」


 縁側に洗濯物の入ったカゴを置き、竿にタオルなどを干しながら、十川(とおかわ)夕介(ゆうすけ)は雲の隙間から顔を覗かせた太陽を見て呟いた。


「まあ、早く乾くからいいんだけども……」


 そう言いながらも、テキパキと洗濯物をさばいていく。


「……よし、終わり。あれ……?」


 全て干してからカゴを片そうと中を見ると、まだ残っていた。それも汚れている。


「……影くんか?」


 夕介は首を傾げて、サンダルを脱ぐとカゴを持って洗濯機に向かった。



 とりあえずカゴの中の物を洗濯機に容れ、スイッチを押す。

 グワングワングワングワン……と洗濯機が動き始めた。


「とりあえず、また干さなきゃだなぁ……。影くんに文句言ってやろ」


 夕介は洗濯機から離れ、部屋に戻る。

 すると、ちょうど影くんがススス……と動いているのを見つけた。

 影くんとは、夕介が引っ越してくる前から居た人の影のようなモノのことで、夕介が名付けた。


「ちょっと影くん──」


 夕介の声に反応して、影くんはぴたりと動きを止め、それから夕介に近づいてくる。

 夕介も影くんに近づいて、正面で立ち止まった。


「一つ訊きたいことがあるんだけど、影くん汚れ物出した?」


 影くんは、出してないというように、首を振る。


「だよね……、じゃあ誰だろ」


 夕介は「うーん……」と唸りながら、縁側に向かった。

 縁側に座って、ぼんやりと洗濯物を眺める。

 竿に干されているタオルなどが、風に吹かれてゆらゆらと揺れた。


「……はぁ〜」


 ばたんと後ろに倒れて、目を閉じる。


「ま、いつかわかるかぁ……」


 夕介はそう言うと、一つ欠伸をしてから眠った。


         *


「……ん──あ」


 寝過ごした……と顔を覗いていた夕陽に、夕介は目を(またた)く。

 それから洗濯物を部屋に入れて、畳んだ。

 それからタンスにしまいに行くと、洗濯機とは別の音が聞こえて、夕介は首を傾げた。


「……乾燥機?」


 タンスにしまってから、夕介は洗面所に向かう。

 洗濯機は止まっていて、中を確認すると空だった。

 

 ──ピー、ピー、ピー、ピー


 と洗濯機の上に設置された乾燥機から、停止音がした。

 夕介はそっと、乾燥機を開ける。

 中には、乾いた水色の洋服と緑色のズボンが入っていた。


「上下だったんだ──」


 夕介はそれらを取り出し、(はた)いてからきれいに畳む。

 それから縁側に向かって、二つ重ねて置いた。


「……俺が干せなかったから、乾燥機に容れたの?」


 何もない空間に、夕介は声を掛ける。

 もちろん返事はない。


「でも、勝手に使うのは、やめてほしいなぁ……」


 そう苦笑いで言うと、庭の草陰からコロコロコロ、と何かの木の実が転がってきた。謝罪とお礼のつもりなのだろう。


「はは、何の木の実? うーん、まあいいや。今回はそれで許してあげる」


 夕介が笑うと、ソレは草陰から姿を現した。

 金色の体毛に、ふっさりとしていて、先が白くなっている尻尾。四つの脚でしっかりと立ち、切れ長の目で夕介を見ていた。


「……キツネ?」


 夕介がきょとんとしていると、そのキツネはヒョコヒョコとやってきて、服とズボンを咥えると、少し跳ねて、くるんと回った。

 するとボンッと白い煙に包まれて、キツネは少年になった。


「わ、すごい、初めて見た。上手いね」


 と夕介が手を叩くと、キツネの少年ははにかんで頭を下げる。

 ありがとう、とでも言うように。


「あれ……? でもそうなる前に部屋に入ったら、部屋汚れるよな……。どうやって……?」


 と首を傾げると、キツネの少年はスッと指差した。

 指差した方向に顔を向けると、そこには影くんがいた。

 影くんはわたわたと両手を振って、これには訳が……と言いたげだ。


「……話は後でね──とりあえず、キツネくん気をつけてね、これからどこに行くのかはわからないけど」


 キツネの少年は、にこりと笑うと頷いて、手を振って庭を出ていった。

 夕介はサンダルを履き、草の前に転がっている木の実を拾いにいき、縁側に腰掛ける。


「……赤い実だよ、影くん。半分あげる」


 影くんは、おずおずと夕介の隣に座り、木の実を受け取った。

 それから影くんは、乾燥機を使ったことについて話し始めた──。


 影くんによると、キツネは干してもらうのを待っていて、乾いたら木の実を置いて帰ろうと思っていた。だが、夕介が寝てしまったので、いっこうに干されない……。

 そこに影くんがやってきて、乾燥機なら使い方見たことあるからわかるぞ、ということで、使ったとのことだった。


「……なら、仕方ないか」


 と夕介が言うと、影くんはよかったよかった、というふうに夕介の手をとって、ぶんぶんと縦に振った。


「でも、次からは一言声掛けてね」


 手を離して大きく頷く影くんを見ながら、キツネくんは無事帰れたかな……と思う夕介だった──





夕介「生で見られるって、凄いわー」


これから不定期更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ