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神の使い  作者: 嬉遊
8/12

【第8話】相棒の告白

「……っ」

しばらく、走っていた。目的地もなく、ただ、走った。

が、疲れたので足を止める。

「くそ……っ」

いつもなら、このくらいじゃ疲れたりなんてしないのに。

……精神的な問題か。

木々がざわめく。それが、俺を責めているように聞こえて。

……やっぱ、俺が謝んなきゃ……いけないよなあ……。

「でも……今更戻りにくい……」

あれだけ喚き散らかしたのに。

いやでも、ちゃんと謝んないと、とか考えていると、遠くから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「リスター……」

……ルージスだな。

「リス……あ」

目が合った。と同時にルージスが来た道を戻ろうと方向転換した。

「待て!俺を探しに来たんじゃなかったのかよ!?」

「いや、そうだけど……」

もごもごと何か言う。それから、意を決したように顔を上げて、今度はハッキリと言った。

「ごめんね。リスタのコト、信頼してないわけじゃないんだよ……」

また俯く。

「あー……いいって。俺が悪かった。そんな無理しなくていいから……」

「違うの!ぼくがリスタに言えなかったのは、リスタに迷惑かけたくないと思って……。結局かけちゃったけど……」

本当にごめんね、と泣きそうな顔で言う。そんな顔で言われたら、こっちまで泣きたくなってくる……。

ルージスは俺の上着をきゅっと掴んだ。

「ぼく、実はラルティアの生き残りなんだ」

さらっと、本当に何でもないことのようにさらりと言った。

ラルティアの……何だって?

「親とか親族の人達は、襲撃事件の時にみんな死んじゃったんだけど……ぼくだけ生き残ったんだ」

「……は?」

生き残り。

唯一神の石を所有することが許される、神の使い(ラルティア)

その生き残りが……ルージス?

「じゃあ……ラルティエシェインは、お前が持ってんのか?」

「うん。今はぼくの体内にある」

「たい……?」

さっきから、爆弾発言ばかりだ。そろそろ頭がついていけなくなってきたぞ。

体内っつーのは……体の中ってコトだよな?

「……何で体の中なんかに?」

「ぼくの父親が、ぼくを養父に預ける前に埋め込んだんだ。ラルティエシェインが誰にも奪われないように。……多分、襲撃されることを予想してたんだと思う。案の定、ラルティアの一族はみんな死んじゃったんだけど……ぼくだけ生き残った。ラルティエシェインもここにある。だけど……」

自分の胸の辺りに手を当てながら。

「体内のラルティエシェインを取り出す方法が解らないんだ。それを記してある本も、襲撃事件の時に奪われたらしい。だからぼくは、その本を探してるんだ」

「…………」

「そしてその本が見つかって、ラルティエシェインを取り出すコトができたら、ラルティエシェインを消そうと思っていた。だけど……ラルティエシェインはぼくだけの力では消せない。そんな時、リスタに出会った。『衛星(つき)の雫』が使える君に。だから……」

青い瞳を俺の方に向ける。

「偶然にも、ぼくとリスタの目的は一緒だったんだ」

ラルティエシェインを消すこと。それが、俺達の目的だった。

ずっと……同じモノを、探し求めていたんだ。

「今まで黙っててごめんね……」

ルージスは自分の額を、俺の肩にとん、と乗せた。……泣きそうな顔で。

「いや……こっちこそごめん……。そんな事情も知らないで色々……」

言いながら、頭の中で整理する。

ルージスはラルティアの生き残りであり、体内にラルティエシェインが埋め込まれている。そしてそれを取り出すために、本を探している。取り出したら、ラルティエシェインを……。

……いや、待てよ。ラルティエシェインは、“ぼくの力だけでは消せない”と言っていた。つまり……。

「ルージスの力も必要……なのか?」

ルージスの力だけでは消せない。ということは、俺の力だけでも消せないのだ。

「ラルティエシェインを消すには、二つの力が必要なんだ。一つは、リスタが使える『衛星(つき)の雫』。もう一つは、ぼくの『神の石(ラルティエシェイン)の排除』。……この二つなんだ」

つまり……俺1人では、例えラルティエシェインを見つけたとしても、何もできなかったんだ。ルージスと……ラルティアの生き残りと出会わなければ……。

「だから……リスタに会えたコト、凄く感謝してる。……今では、『衛星(つき)の雫』が使えるからってだけじゃなくて、ぼくのコト、信じてくれるから……だから本当に、嬉しくて仕方ない」

「……俺だって……」

こいつに出会えて、本当に良かったと思う。例え、俺のことを信頼してくれていなくても。

「ぼくの力が強いのは、ラルティエシェインが埋め込まれてるからなんだ。……そのラルティエシェインを取り出して、力が弱くなっても、相棒でいてくれる?」

「…………お前まさか、俺がお前と相棒でいるのは、お前の力が強いからだと思ってんのか?」

「違うの?」

……やっぱり信頼されてなかった。予想はしていたが、面と向かって言われると寂しい。

「お前……馬鹿じゃねぇの?お前はお前だろ?」

ルージスは微かに笑った。

「うん……そだね……」




「お、仲直り出来たか?」

店に戻ると、ツェルノがいつもの笑顔で迎えてくれた。何事もなかったかのように。

「ああ」

今は、その笑顔が有り難かった。

「ツィアと……親父さんは、平気か?」

「あー、別に平気じゃね?様子見に行ってないけど」

おい、行ってあげろよ。

「1回くらいは……」

「お兄ちゃん!?」

寝室に繋がる扉が、物凄い音で開いた。

顔を出したのは、金髪をおろしたツィア。

「ねぇ、お父さんは!?お父さんはもう、いっちゃったの!?」

目に涙を溜めながら、ツェルノの服を掴む。

ツィアも、心配、してたんだろうな。

「大丈夫だって。隣りの部屋で寝てる」

「ほんとに?」

「当たり前じゃねぇか」

大きく、安堵のため息をついた。

「よかったあ……」

本当に、お父さんが大好きなんだな……。

まったく、こんな良い子をおいて、あのおっさんはドコほっつき歩いてたんだか。

「ねぇ、これからはお父さんも、いっしょにいられるの?」

再び心配そうな顔でツェルノに問う。

「あー……多分な。俺がどうにかするし」

「やくそくだよ?どうにかしてね?」

「ああ。どうにかする」

ドコか別の部屋で、いきなりバタンという音がした。……相当でかかったな。

「何?」「親父が寝台から落ちた音かも。寝相悪いんだよなあ……」

ぶつぶつ呟きながら、音が聞こえた部屋へ行く。

入る前にしっかり、

「誰も入ってくんなよ?」

と、言い残して。

「……まあ、そりゃあそうだよね。久々だし。親子水入らずで話したいよね」

「だよな。あいつ、何だかんだ言って、父親のコト大好きみたいだしな」

「うん。でもね」

ルージスはにっこりと笑った。

「入るなって言われたら、入りたくなっちゃうよね?」

きたー……。こいつは何でこう、意地の悪い奴なんだ……。

「いや、それはマズいだろう。責めて、盗み聞きに……」

「よし、じゃあ盗み聞きしよっか」

……ということに話はまとまり、部屋の前まで行く。


そして息を潜めて、ドアーに耳をつけた。

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