第九話「境界の来訪者(後編)」
> 巨影が崩れ落ち、境界霧が晴れた。
> ブラックリム前線基地には、久しぶりに“空”が戻っていた。
ミオは深く息を吐き、端末を握りしめたまま呟く。
「……終わった……のよね?」
レイはTYPE Aのコックピットで、
まだ微かに光を帯びる腕部を見つめていた。
「終わった……いや、違うな。
“始まった”んだ……ここからだ」
TYPE Aは、今も境界干渉の残響を纏っている。
本来あり得ないはずの現象が、まだ機体に残っていた。
ミオが驚きを隠せずに言う。
「レイさん……TYPE Aの干渉値、まだ安定してる……
まるで、機体そのものが“境界に適応した”みたい……」
レイは静かに答える。
「……あいつらが託してくれたんだ。
戦える力を……護れる力を……
この機体にも、俺にも」
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◆ TYPE I ― アキラの帰還
TYPE I がゆっくりと基地へ戻ってくる。
境界本層の光は収まり、機体は静かに脈動していた。
アキラはコックピットを開き、
レイのTYPE Aを見つけて微笑む。
「レイさん……生きててよかった」
レイは笑い返す。
「お前こそ……よく戻ってきたな。
境界の奥なんて、普通は帰ってこれん」
アキラは少しだけ視線を落とす。
「……向こうで、“誰か”に会いました。
境界に残った人たちの……意思の集合体みたいな存在に」
ミオが息を呑む。
「やっぱり……境界はただの現象じゃない……」
アキラは続ける。
「彼らは言いました。
“境界は問いで、僕たちは答えだ”って」
レイは眉をひそめる。
「問い……答え……?」
アキラは頷く。
「でも……“答えは自分たちで見つけろ”とも」
ミオは震える声で呟く。
「……まるで、試されてるみたい……」
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◆ ◆ ◆
その頃――ブラックリムから遠く離れた場所
薄暗い部屋。
複数のモニターに、TYPE I と TYPE A の戦闘データが映し出されている。
黒いコートを纏った人物が、
静かに画面を見つめていた。
「……境界干渉の“共鳴”……
軍部の技術ではないな」
別の人物が答える。
「ええ。
“あちら側”の意思が介入したと見るべきでしょう」
コートの人物は、画面に映るTYPE Iを指でなぞる。
「……面白い。
境界の問いに、答えようとする者が現れたか」
「どうしますか?
接触を?」
コートの人物は首を振る。
「まだだ。
今は“観測”でいい。
だが――」
画面に映るアキラとレイの姿を見つめながら、
その人物は静かに微笑んだ。
「――彼らは、いずれ“こちら側”に辿り着く。
その時が来たら……迎えに行こう」
モニターに映るロゴが、暗闇に浮かび上がる。
《第三勢力:オルタ・フレーム機関》
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◆ ブラックリム前線基地 ― 戦闘後の静寂
アキラは空を見上げる。
「……来訪者が言っていた“問い”……
俺たちは、答えを見つけられるんでしょうか」
レイは隣で腕を組む。
「見つけるしかない。
境界が何者で、何を望んでいるのか……
俺たちが確かめるんだ」
ミオは微笑む。
「三人なら……きっと行けるわ」
アキラは頷く。
「……行きましょう。
境界の向こうへ。
“答え”を探しに」
その背後で、TYPE I と TYPE A が静かに光を放っていた。
次回予告
第十話「オルタ・フレーム機関」
第三勢力の影が動き出す。
境界の問いに答えようとする者たちを、
別の“答え”へ導こうとする存在が現れる。




