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ところで聖剣は何処へ?

は、半年経っての更新ってまじ…?????

 ――そんな、そんな……!貴方……!


 母が、泣いている。兵士さんの前で泣いている。兵士さんの手元には父のよく使っていた帽子と父の名前の掘ってあるタグがあった。

 どうやら、父は死んだらしい。魔王率いる魔物の進行が北の国境付近であったとのことで、兵隊は軒並みそこで戦っている。その戦場で父が散ったらしい。

 母は一晩泣き続けた。その次の日には何事もなかったかのように振る舞ったが、時折俺に見せないようにして泣いていた。

 俺はそんな母を守りたくて、力が欲しくて母に内緒で勇者の選抜を受けた。別に勇者になれるとかなれないとかはどうでもよかったが、選抜を受けた者には訓練学校に行く選択肢が与えられたからだ。


 そして、あの日。俺は勇者の剣とされる聖剣を抜いた。


 それからは目まぐるしく状況が変わった。勇者の剣と共に各国を巡る旅が始まり、母は静かに泣いて送り出してくれた。仲間がいたが、それらも苦しい魔物との戦いに疲弊し死んでいった。僧侶も、魔法使いも、戦士も旅の最中で散っていった。半ば自暴自棄になるように、何処かの国の王様の依頼を受けた。曰く邪悪な龍が巣食ってしまった山があり、危険だから討伐してくれといった内容だった。ちょうど最後の仲間だった僧侶が亡くなった後で、普段なら受けない依頼内容だが受けた。ここで死ぬならそれまでと思ったのかもしれない。


 でも、あの龍は思ってたようなものとは違った。邪悪な龍と言えば「この我の何処が邪悪じゃ!」と言うし、俺の聖剣を見ては「なぁんだそのなまくらは!この我の鱗をそんな鉄の塊で貫通できると思ってるのか!」と言う。必死に魔法や剣を振り下ろしても「はっはっはっは!なんじゃそのひよっこい魔法は!効かぬ効かぬぅ〜」と煽ってくる始末。

 終いには疲れ果てて座り込んだ俺を尻目に何もしなかったのだ。普通、人間ですら自分の住処に凶器を持って押し切られたら抵抗するなりつまみ出すなりするのに、だ。強者故の無関心か、あるいは無闇矢鱈と殺すことを忌んでいるのか。

 そして座り込んでいる俺に向かって龍は言ったんだ。


「そぉんななまくらが人を選ぶわけなかろう!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。しかも初代のポンコツ勇者なんぞお前と同じ年頃は数倍ポンコツだったわ!」


その衝撃は今でも忘れられない。仲間はなんのために死んだのかとか、なんのための旅だったのかとか。

 そのあとはあまり記憶がはっきりしないが、もう一度龍に会いに行ったのは覚えている。力を授けて欲しいと言えば「力が欲しい?知らんがな」とあっけらかんに返された。もっとこうなぜ貴様に力を貸さねばならんのか、とか我に力を示してから言え、とか雰囲気を大事にしてほしいと思う。だけど、そのあとちゃんと話を聞いてくれた。母を脅威から守りたくて選抜を受けたこと、仲間が逝ってしまったこと、父のこと。誰にも打ち明けてこなかった胸中に思わず涙が出てしまったが龍は静かに聞いてくれた。

 はぁ〜〜〜〜〜〜と長く大きいため息をついた龍は突然、自身の鱗を剥がして渡してよこした。誓約があって力を授けることはできないが、生えて変わるゴミを渡したところで誓約には触れないだろうと言っていた。とはいえ、ゴミはゴミだが世界一のゴミだとふんぞり返っていたからあまり格好はついていなかったが。


 だからなのだろう。あの日、追い詰められて逃げる場所に選んだのはあの龍のところだった。

 もし、何かあってもあの龍なら人々を無下にはしないだろうと思ったのだ。


 だから、だからあの瞬間、龍が俺達と一緒に氷で覆い尽くされそうになったとき深い後悔と罪悪感に襲われたのだ。

 ただただ手を伸ばしても届かない、氷に覆われる寸前目にした優しい瞳の龍が、とても大事に思えて仕方がなかったのは――自分の都合で巻き込んだ罪悪感か、それとも、己を知る友のような情があったのかは――今でもわからない。


◆ ◆ ◆


 「う……」

夢見が悪かったときの特有の倦怠感を感じながらロイは目を開ける。窓から仄かに入ってくる柔らかな日差しは、朝の穏やかさを物語っているように見えた。ふと、ぬくもりを感じそちらに目線をやれば美しい黒髪が目に入る。


「ッッッ!!!!!??????」


いつの間にか自身の布団に潜り込んだノワールがすやすやと眠り込んでいる。驚きで固まると、振動に気づいたのかノワールはむにゃむにゃ……と口を動かす。どうしたらいいのかあたふたすれば、その動きが気に入らないのかノワールはロイの体を拘束するように手や足を絡ませてくる。

 まずい。この状況はまずすぎる。何がってノワールは今の見た目は絶世の美女そのものだ。いくら中身が人じゃないとしても今は見た目が完全に人間。そんな美女が自分のベッドにいるだけでもいろいろとまずいのに、更にまずいのが大きすぎず小さすぎず形の整った胸が自身の腕にひっついて――


「勇者様、朝になりましたがお目覚めでしょうか?」

「マ゜ッッッ!?!?!」

 コンコンとちょうどいいタイミングで修道女のとノックが響き渡る。ちなみに形容しがたい叫びをあげたのは言わずもがなロイである。そしてつい反射でノワールを布団から振り落としてしまった。んぎゃっみたいな悲鳴が上がった気がするが、それどころではないロイは爆速でベッドから飛び降りてドアをほんの少しだけ開けた。


 そこにはロイの勢いに気おされたような、昨日夕餉を持ってきた修道女がいた。

「い、今準備しますんで!」

「は、はい……?神父様は朝のお祈りをしておりますので、終わりましたらこちらに来ます。それまではお寛ぎください」

「あ、は、はい。わかりました」

中の様子が気になっているのか、ちらりと部屋を一瞥したあと修道女は去っていった。


 「んん~~~~なんで我床に寝てるのぉ……」

うごうごと床を這うノワールにロイは深いため息をつくよりほかなかった。


「なんでお前俺の布団に入って寝たんだよ」

「我……鱗あったときは寒さなんてへでもなかったんだが、この体は寒さに弱すぎるぅ……」

「だッ……からって、異性のベッドに入ってはいけません」

「なんでぇ……?」

「いろいろあるんです」

「さむい……」

「厚着しろ」


 はぁい……と言いながらいそいそとノワールは服を着こむ。外着の分厚いコートにまで手を伸ばしたので慌てて止めれば、起きているんだか寝ているんだかわからない半開きの瞳でロイを見つめる。


 一体何なんだと思いながら肩を揺らすとノワールはカッと目を見開いた。

「待て、貴様。聖剣はどこへやった」

「びっっ……くりするだろ!」

「おお?すまんな……?いやなに、そういえば降臨の媒体にしてた聖剣放置しているかもしれない現状に思い至ってな」

 そういえば、聖剣のありかについてはノワールに伝え損ねていたと思い出す。先日の神父の話だと、聖剣については現在女神教の聖都にて保管されているとの話だった。なんで聖剣が封印されてるこの場にないのかといえば、ロイの持つ聖剣は神を降ろした際に霧散してしまったとのことだ。後日、新たに聖剣が打ち直されたといわれている。それも女神様直々の信託の元、打ち直されたという。

「あの時持っていた聖剣自体は消えたらしい。新しい聖剣が聖都で打ち直されたと聞いた」

「打ち直し?ということは触媒にしただけの使い捨て――?いや、実物を見ないことにはわからんか。じゃあロイは聖都に聖剣を取りにいくということで間違いないか?」

「ああ。……とはいえ、ここから聖都まで歩いて3か月はかかる。情報の収集がてら間の国――ストリア国で路銀や物資を集めたいと思っている」

 この山――フォルリィア山は聖地としてどの国にも所属しない土地だと神父から聞いた。周辺はストリア国、ヴァスパニア帝国、フリージア王国が隣接しており、目的の聖都サンクシアはストリア国の隣に位置している。周辺の地図をもらったが、そこまで大きく500年前から国境や都市が変わっていることはなさそうだった。つまり、大体の土地勘に頼っても問題なさそうだ。


 とりあえずの疑問を解消し、眠気を思い出したのかしおしおと萎びたノワールを横目にロイは身支度をぱっぱと済ませる。

「ところでロイ、お前我の鱗は鎧に加工したのか」

ロイの身に着ける防具を見ながらノワールが言った。確かに、加工した先をノワールに見せた覚えがなかったなと思いつつ――

「ほんとは剣に加工でもしようかと思ってたんだが……流石龍の鱗。溶かせなかったんだ」

「なるほどなぁ~~~」

 流石我の鱗だな!と踏ん反り帰るノワールを無視し、改めて装備を整える。視界の端でノワールが着替えを手に取ったのが分かり、慌てて仕切りでノワールを隠し早いところ常識を教えないといけないかもしれないとため息をつく。これから先の旅路を思えば、前途多難の文字が浮かび頭を振る。まだ出発もできてないのに幸先が悪い考えをしてはいけないと己を律し、横から聞こえる「なんだこの布?どこにつけるんじゃ?」とか「これが下着というやつなのか…!?」とか「布面積としてはこれであってるのか…?」とか思考を乱そうとしてくる言葉を遮るように耳をふさぐのだった。

もっと更新頻度上げるように頑張ります…;;

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