第8話:照内 千尋〜スキル無しパーティーの恩恵〜
雷鳴が、お誘いの成功の合図で、千尋は美香と共に金光と合流して城下町を出た。
「一応、俺は本気モードだけど、触らないでくれよ。
折角充電したのに、漏電しちまう」
露払いは、金光が。そして、愛美達が待っている場所に辿り着くと、金光が周囲の警戒に回り、そして、温泉用のスペースとして確保した場所に愛美達が案内した。
「東角は?」
「入浴後に合流して打ち合わせしよう、と」
そして、千尋達が革鎧を脱いでから、由香が『温泉』の魔法を発動させた。
「「「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」」
──この作戦、コチラの勝利だ!
等と、由香は千尋達の反応から確信してしまうのだが、入浴して話を始めて直ぐに、「えええええええ!!!!!!!」と驚く事になる。
「何だ?コレから女子6人のみで戦おうと思ったら、スキルスクロールなんて高価な代物になど手を出さず、武器と鎧を軽微でも良いから備えた方が安心出来るだろう?」
「……それで、残金は?」
「各自、金貨10枚程度は残しているな!」
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
外史さんに何て報告すれば良いのやら……。
──そうだ!恩恵は?!」
聞き出したところ、恩恵は以下の6つ。
1.照内 千尋『指導者適性』
2.皐月 如月『加工能力』
3.藤原 弥生『何でもショップ』
4.桜 卯月『超回復』
5.如月 亜矢『超命中』
6.萩原 牡丹『棚から牡丹餅』
「ふぅん……、藤原さんの『何でもショップ』が凄そうだけど」
「でも、金貨1枚で100mpmにしかならなくて、100円位の商品しか買えないんですよね」
「桜さんが1人だけ傷が無いのは、『超回復』のお陰っぽいよね」
「このタイミングでレイドのお誘いと云う事態になったのは、萩原さんの『棚から牡丹餅』の恩恵の影響でしょうね」
「如月さんの武器が弓なのは、『超命中』の恩恵に肖る為?」
「元々、アーチェリー部だったし」
………………
…………
……
女の子同士、話は盛り上がったが、『ホット・スプリングス』のスキル効果時間の限界に依って、強制的に中断を強いられた。
それでも、外史パーティーの情報を殆ど流さずに聞き出したい最低限は聞き出せた。
それから服を着て、装備を整え、外史と金光が呼ばれた。
情報料としては、温泉の提供だけで十分だった。
問題は、レイドを組むかどうかだ。
外史はそれぞれの恩恵を聞いて。
「将来性を考えたら、レイドを今の時点から組む価値はあるな」
「東角──」
「外史と呼んでくれ。俺も千尋と呼ぶ」
「──!
そ、そうか。外史は傷痕を治してくれると聞いていたのだが。
温泉でも十分と思わないでも無いが、約束は約束だ。
出来る事なら、治して欲しい」
「レベル上げ以外の訓練は、直近24時間以内に行なっていないか?」
「あ、ああ。
最初は筋トレ等しながら安全マージンを取ってレベル上げもしていたが、ここ1週間はレベル上げに専念しているな」
「そうか。
由香!回復させてやってくれ。
で、レベルは幾つ位だ?」
「全員、もう少しで30に届く」
「十分だな。
──で、全員、金貨10枚程度の備えはあるんだな?
コレ、重要だぞ!
全員、金貨10枚での買い物を出来ないなら、レイドを組むと云う話は無しだ。
あと、藤原 弥生!恩恵を試すのに、実験したい事がある。協力願えるなら、恩恵が化けるぞ?
それこそ、恩恵を利用させてくれるなら、パーティーに勧誘するか、レイドを組む案の決定条件になる位に」
「弥生!返答は焦るな!
で、全員が金貨10枚持って居るなら、レイドを組むと云うのは、どう云う用件だ?」
「お前らは、スキルの可能性をナメている。
真価を発揮させてやる!」
「この備えは、万が一に備えての貯蓄だ、半端な条件では出費出来ない。
条件を聞きたい」
「だから、スキルの真価を──」
「ソレは聞いた。
その、スキルの真価と云う奴を教えて欲しいのと、スキルスクロールは一番安くて金貨30枚だった!」
「……判った。
直美、若干勿体無いが、『ヒーリング』の魔法と、俺の持つスキルの一つと交換しよう。
若干勿体無いと云うのは、判り易いように、コチラの提供するスキルを『ホットスプリングス』に限定させて欲しいと云う理由だ。
心配しなくても、『ヒーリング』の魔法が失われる訳じゃ無い。
お願い出来るか?」
「え?はい。むしろ嬉しいですけど、良いんですか?」
「問題無い。やり方を説明する──」
外史は説明を全員に判るように言い聞かせた。
そして、外史と直美は手を繋ぐ。
「──ンッ!アッ……、え?気持ち良いんだけど……ンッ!」
直美は赤面するが。
「あー……因みに、恥ずかしがってるとそう云う気持ち良さになるが、快感に身を委ねれば、マッサージ受けている感じの気持ち良さになる」
「えっ?!……ンーッ……あ゙ー、本当だ。
気持ち良い〜♪♪」
その事態に、由香が文句を言い出す。
「ちょっと!私の時は、そんな説明無かったんだけど!」
「ハハハッ。可愛いから辱めちゃった♪♪なんちゃって♪♪
いや、正直に言うと、由香の快感の原因を考えたら、そう云やそんな設定あったなぁー、と後になってから思い出したんだ。
スマヌ。また似たような事があったら、可哀想かなぁと思って、警戒している時間に必死で思い出したんだ」
「う〜〜〜〜っ!!!!」
「……で、でも、……ンッ!恥ずかしいと思っていた方が、アッ!よりっ!気持ち良いです!ぅンッ!」
「あー……、別にソッチがお好みと言うなら、止めはしないけど、スキルを渡し終える時に軽く絶頂して意識遠退くと思うから、推奨しないよ?」
「ン〜〜〜〜、確かに、コレでも気持ち良いから良いんだけど、目の前に男の人の顔があって、ンッ!その……前より精悍になって、ちょっと怖い位だけど、うんッ!イケメンが居たら、集中しないと、快感に呑み込まれちゃいそう、です!……ッ!」
「そんなに僕、容貌が変わったかなぁ……?」
「ンッ!少し慣れた!
前は、ずーっと本にのめり込んでいる様子だったから……」
快感に身を委ねながらも、外史を見て赤面し、ポーッとしていると、やがて嬌声を上げては快感に身を委ねての繰り返しをしている内に、スキルの交換が終わった。
「あ゙ー、スッゴい気持ち良かった!!」
少し顔が赤いが、直美はマッサージの最中にちょっと恥ずかしさが混じっていた程度の感覚で、衆人環視の状況であった事には、暗闇の中と云うのもあって、然程恥ずかしくは無かったのだけれど、何故か外史の姿だけは、はっきり見えている事に、直美は疑問を抱いた。
「アレ?他の人は影が見える程度だけど、外史君だけは顔がはっきり見える……」
「ああ、スキルにも換算されない機能で、気配を伝えたり消したりとかが出来るから、ソレで見えているだけだと思うけど?
試しに気配、消してみる?」
「……何か怖い気がするから、今は辞めておきます」
「──と云うように、便利機能が幾つもあるんだけど、レイド組むなら幾つかを段階的に公開して行くけど?」
「因みに、気配を伝えたり消したりとかが出来る機能は、私達も教わっています!」
愛美が胸を張ってそう言うと、美香や千尋のパーティーメンバーが「そう云えば……」と外史のパーティーメンバーの顔がはっきり見えていた事と、美香や千尋のパーティーメンバーの顔ははっきりとは見えなかった事を思い起こす。
「はいっ!では、レイド組むのに賛成の者、挙手!」
「なっ……!金光!」
金光の掛け声で、美香や千尋のパーティー全員が挙手した。
「はい、多数決でレイド組むのを決定!」
「やりやがったな、金光!」
「別に良いだろ?他のクラスメイトを出し抜いて、サッサとレベル上げて、安全な環境を確保しようぜ!」
そう言われては、外史も文句を言えなくなる。
兎も角、ようやくレイドを組む事が決定したのだった。