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閑話1:少女A〜貧民街〜

 物語の本筋とは外れるお話になります。

「あっ、居た居た」


 由香は外史のパーティーに参加を表明するなり、貧民街に戻っていた。

 そして、貧民街で1人の少女を探し出した。


「回復屋のお姉ちゃん、どうしたの?」

「アフォちゃん、確か、『浄化(ピュリフィケーション)』の魔法を使えたよね?

 私の回復魔法、アフォちゃんに贈るから、『ピュリフィケーション』の魔法、私に贈ってくれない?」

「……私が回復屋のお仕事をするの?」

「出来ればソレをお願いしたいんだけど、ダメ?」


 アフォは首を横に振った。


「私が回復屋を引き継ぐ!」

「じゃあ、やり方を教えるね!──」


 由香は、外史のやり方を愛美に教わった通りに、アフォに説明して、お互いの手を握る。

 その時、由香が味わった快感は、外史と交換した時ほどでは無い為、声も上げずに耐え抜いた。


「じゃあ、今日から『回復屋』はアフォちゃんのお仕事。ね?」

「──うん!!!!」


 アフォは力強く頷いた。

 その後、アフォは『回復屋』のお仕事を頑張り、余裕のある人から少しずつ食糧やお金を貰い、食うに困らない生活を送れるようになった。

 由香としても、未練が無くなり、肩の荷が1つ下りた。


 そうして、貧民街の怪我人や病人はアフォによって治されてゆき、少しずつ貧民街の生活レベルが向上してゆく事となる。

 又、少年・少女達によるトリコーン・ラビット狩りの際に、アフォが誘われる事もあり始めた。彼等・彼女等は少しずつ基礎レベルが上がり、由香が『完璧なる回復魔法パーフェクト・ヒーリング』の説明の際に欠点として教わった、自然回復によるステータス上昇と云う現象は確かに阻害する効果があったものの、基礎レベルの上昇に伴うステータス上昇には影響が無く、貧民街の少年・少女にとっては、それで十分だった。

 そして、アフォに齎された知識を以て、魔法を始めとする、巻き物(スクロール)に依って獲得したスキルの共有化が進んで行き、彼等・彼女等はパーティーを組み、食うものやお金を稼ぐ為に冒険者となり、その上の世代からは頼りにされ、同世代〜下の世代からは羨望(せんぼう)の的となるのだった。


 そして、彼等・彼女等はこう言うのだった。『全部、由香姉ちゃんのお陰だ!』と。


 そして、由香を見掛ける度に、騎士の真似をして敬礼をするのだ。騎士に対しては好印象の無い彼等・彼女等でも、騎士が敬礼する姿はカッコいいものであり、その原因も、騎士は由香達に出会う度に敬礼をするものだからと云うものである。

 つまり、勇者候補生に対しては何の知識も無くても、騎士が由香達に敬礼する気持ちは、少年・少女達の気持ちと大差無いものであり。

 基礎レベルの上がった彼等・彼女等は、武力に依る秩序だが、貧民街に最低限の秩序を齎した。

 その功績は王の知るところとなり、特に中心的な存在である、アフォを含む三男・三女は勲章を与えられる寸前まで話が進んだのだが、少年・少女達はソレを『由香姉ちゃんのこうせきだ!』と、功績の意味も何となくでしか知らないのに、そう言いのけて、ならばと由香に勲章をと云う話に変更されそうになったのだが、由香は説明を聞いて呆れるのだが、『思い遣りの連鎖が産んだ奇跡』と云う説明付けをして勲章を辞退した。

 ならばと、王は『秩序のお祭り』と題して王都全域での大規模な祭りの開催を宣言した。

 結果、無礼講に近い形を取ることで、却って無秩序にお祝いが為され、必ずしも秩序を保つ事が最大の善行では無く、無秩序の中にも善行があると思い知り、王の意識が成長したのと共に、この例を歴代の王家の受ける教育の題材の1つとされた。

 そして、『正義』と『善』の違いをこの題材から見出す者こそが王に相応しいとさえされるようになり、この王国『ビヨンド王国』の繁栄に大きな効果が時が経てば経つほどに大きく齎されるのであった。

 コレは、1つの親切が国をも繁栄させたと云う稀有(けう)な例であった。

 中でもアフォと由香の名は、歴史にその名を刻む程の、由香からしてみれば大袈裟過ぎる話になったのだが、『ビヨンド王国』に於ける大きな教訓として、暫くの間の生ける伝説として広く知られるのであった。


 尚、魔法・スキル交換の知識は、アフォ達も由香も明かす訳がなく、その知識を齎した外史の名は、この件に於いては影も形もその姿を現さないのであった。

 やはり、この件でも、外史はハズレを引くのだった。

 由香の後釜について、メインストーリーとは外れるけれど、この話を残しておきたくて掲載しました。

 まぁ、風が吹けば桶屋が儲かりますよね。

 コレ、原理はバタフライ・エフェクトと一緒なんですよ?

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