第3話:柏木 由香〜ヒーラー〜
愛美の導いた先、貧民街の最中に、行列が出来るのを横目にその先へと向かった。
ソコでは、愛美と仲良しなのが容易に想像出来る、地味過ぎる美人の1人、柏木 由香が、貧民街の住人に少しずつの食料と引き換えに、回復魔法の一つ、『完璧なる回復魔法』の魔法を掛けてゆく姿があった。
「あっ!」
「ヤッホ♪♪」
「ちょっと待って!」
ほんのちょっとのやり取りで、由香は愛美からの用事があるのに気が付いた様子だった。
「皆さん、ゴメンナサイ!今日はこれで魔力切れです!
一応、1回分の余裕はあるから、物凄い緊急の方以外、また今度でお願いします!」
行列に並んでいた人は、今回は物凄い緊急の人は居なかったらしく、全員が散って行った。
「で、何、愛美?」
「由香の力が必要なの。手伝ってくれる?」
「……詳しく聞かせて」
愛美は斯々然々と説明をして、ソレを聞いた由香が、『えっ!?』とか『まさか?!』と云う反応を返す。
「『魔法』の譲渡が可能で、ヒーラーの存在を必要としている?!
目的は何なの!?」
「まぁ、魔王を倒す事、かな?」
外史は当然と言わんばかりにそう言った。
それを聞いた由香は、ハァーッと息を吐いた。
「まさか、3人でソレを成し遂げるつもり?」
「出来れば、盾役の者が居てくれると尚安定するな」
「言っておくけど、私の回復魔法はとんだ欠陥品よ。
完全に回復してしまう代わりに、回復しなければ成長した要素が、成長しなくなってしまうんだから」
「うん。で、ソレは恩恵じゃないよね?
魔法を半ば騙された形で購入してしまっただけでしょ?」
「私の恩恵は、『消費魔力軽減』。レベルを上げる事で、消費魔力は減っていくものみたいだけど……」
「恩恵のスキルレベルは?」
「えっ!……Lv.4」
「十分!」
恩恵の『消費魔力軽減』は、Lv.1で1/2、Lv.2で1/3、Lv.3で1/5に至り、Lv.4ではパーティーメンバー全員の消費魔力を1/2に下げてくれると云うものであった。
だから。
「良し!全員で魔法の共有をしよう!
そして、適性次第では、役割の交代も選択肢に入れて考えようか!……って、リーダーでも無いのに仕切ってゴメンナサイ……」
「えっ?外史君がリーダーで良いんじゃないの?」
「ですです!」
ちょっと思う所があったものの。取り敢えず。
「端っから『外史君』呼びするんだったら、由香さん呼ばわりしちゃうぞ?」
その言葉で由香の顔は真っ赤に茹で上がり、言うべき言葉が見つかる前に、話題の切り替えを試みる。
「じゃ、じゃあ、手持ちの魔法を交換し合う、って事で大丈夫?」
「由香さんが良ければ、それでお願いします!」
「えっ?!あ、二人は共有し終えて居るのね。
じゃ、じゃあ、愛美ちゃん、お願いします!」
「はい!」
顔は未だ赤いままだが、由香は堂々とした態度で臨む事にしたらしかった。
先ずは女性陣2人が魔法を交換する。
「……何コレ!スッゴく気持ち良いんだけど!
……え?コレを愛美と外史君の2人でしたの?
……え?私が外史君とコレをしたら、愛美、怒ったりしない?!」
「しない、しない!しないったら!」
愛美も由香のその発言に、顔を赤らめた。が、必死で否定する。
「じゃ、じゃあ、外史君。魔法の共有、お願いします!」
言葉ではそう言うが、その手が中々外史の方に向かわない。
「やる気無いんだったら、別に他の役目で貢献出来るって言うなら、それはそれで良いんだけど?」
「べ、別にやる気無い訳じゃ無いわよ!(この無自覚地味イケメン!)」
「ん?最後の方の言葉が聞こえづらかったんだけど?」
「な、何でもないわよ!ホラ!」
由香はとうとう外史に手を差し出した。
外史は、ココで焦らしても良かったのだが、誂うのは辞めようと、由香と両手を握り合った。
「贈るぞ!で、ソッチも贈ってくれなかったら、この『贈り合い』って裏技は使えないんだからな!」
「判っています!……って云うか、『裏技』って言った?
まさか、この世界って何かのゲームの世界の中なの?!」
「おっ、鋭い!
『ベネフィット・ワールド』って云うんだけど、マイナーなゲームだから、知られていないだろうなぁ……」
「クッ!随分と余裕ですね!
まさか、外史君にはこの気持ち良さ、感じられないの?!」
「いやぁ?凄く気持ち良いけど?
どの位って言われると、下ネタになるから、あんまり言いたくないんだけど?」
「クッ……!コレが『クッコ□さん』の味わった屈辱だと云う訳ね……!
確かに屈辱的だし、相手が余裕っぽいのは、より屈辱感を増してくれるだけだけれど……!」
「おっ、由香さんって、ヲタク文化に理解がある方だったりする?
あと、サッサと済ませたいのは判るけれど、コレ、結構かなりな快感だから、もっとスピード上げると、少なくとも僕は気絶しちゃうから、──女性は快感や苦痛の耐久限界が男の7倍だか9倍だから、耐えれるかも知れないけど、反応から考えるに、由香さんの快感の方が強そうだから、快感での気絶し合って、下手したら魔法の交換、やり直しになるんだけど?」
「クッ……!ココでペースを落とせ、っての?
って云うか、耐えられている時点で、……クッ!現状維持で大丈夫なんじゃないの?!」
「別に良いけど、コレ、性的な快感じゃないから、気絶と云うか寝落ちしても別に大丈夫だけど、魔法を渡し終える瞬間、一気に何倍かの快感が訪れるけど、耐えられそう?あ、具体的にどの位かは聞かないでね。ソレを表現する尺度は僕には下ネタでしか表現出来ない程の気持ち良さだから、女の子の前で言うのは恥ずかしいかな?
僕は贈るペースを落として、快感をある程度落としてるから、多分、フィニッシュを迎えても気絶はしないかな?
多分、贈り合う魔法の性能差で、快感の差が生じていると思うんだけど……、贈る方の魔法の性能に比例しているような気がするよ?」
「クッ……!なら、私の得た回復魔法は、性能が高いと云うの?!
──って云うか、ソッチは性的な快感とは違うと云うの?!」
「気持ち良いマッサージでも受けている感覚だねぇ。
ゆっくりにしても、快感に意識が飛びそうな感じではあるけれど、寝落ちって感じかなぁ……。
……あ!」
外史の反応から、何かに気付いたらしい事に由香も気付くが、現状ではソレを聞き出す余裕も無くて、魔法を贈るペースを少し落とした。
「ふぅー……。未だちょっと……ンッ!快感は走るけれど、耐えられない……アッ!ってレベルでは無いわね。
──で、……ウンッ!何かに気付いた様子ですわね。
一体……もうッ!何に気付かれたのですか?……ンッ!」
「……言っても手を離さないでね。やり直しになるから。
でも、僕が気付いた事を指摘されて、正しかったら、由香さんは恥ずかしくは無いのかなぁ?」
外史が、握る手を更に強く握った。
「……ンッ!い、言わないで頂戴!」
この反応の時点で、愛美も事情を悟ってしまい、言わない外史の優しさなのか、逆にサディスティックなのかに迷い、結論、外史の優しさを信じる事にした。
「あー……、この程度のペースだと、軽く気持ち良い程度で、しばらく耐えられるわね。
……でも、このペースだと──」
「うん!30分は掛かるね!
……大丈夫?
凄いよね、由香さんの魔法と、由香さんと愛美さんとの、魔法に対する適性って。
多分、僕に適性の無い魔法を贈ろうとしているから、快感が強いんだと思うよ」
「……!クッ!少しペースを上げますわよ!」
そうして10分が経った頃、由香は軽く絶頂を迎えたものの、無事に魔法の贈り合いに成功したのだった。
外史「あー、気持ち良かった〜♪♪」←鬼畜www