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第9話:藤原 弥生〜恩恵『何でもショップ』〜

 その夜は、皆で交代しながら見張りをする事で、野宿をする事になった。

 外史は浅く眠って警戒する事で、初日からしていた事なのだが、基本、トリコーン・ラビットやゴキブリンは夜に活動する事は稀で、むしろ人の方が怖いらしいと説明がされた。他の『魔物(モンスター)』はこの近辺では目撃情報がそもそもほぼ無い。

 そして、今後、野宿は必須能力で、今から慣れなければ生きていけないとあって、15人で5交代制で軽く眠って身体を休める。

 金光が一番手、外史が五番手で、二番手に美香、四番手に千尋が配置され、三番手の中心人物を誰にするかで議論が起こったが、外史の意見で、由香が三番手を率いる事になり、他のメンバーは適当に配置しようとなったものの、外史の意見で弥生と如月が外史と同じ五番手として、恩恵の確認が行われる事になった。

 その理由故に外史の意見は通ったが、外史のパーティーメンバーは、思うものがある様子だった。


 そして、何事も無く五番手まで順番が回り、最初は皆の近くで3人で声を掛け合い、目を覚まして行った。もう次の夜まで睡眠はしないのだ、はっきり目を覚ますのは重要だった。


「それで、弥生」

「は、はいっ!」

「確か、金貨を売ったら、『100mpm(・・・)』と言っていたよな?」

「?……はい、そうですけど」

「フム……」


 外史が弥生に手を差し出した。弥生は頭を傾げて疑問に思う様子。


「僕の仮説を言おう。

 仮想通貨『mpm』は、『MPマネー』だと予想する。

 そして、全員無職な以上、最も『MP』が多いのは最もレベルが高い僕だ。

 今から、『MP』を差し出す。

 ソレが換金出来たら、半分を僕の判断で使わせて欲しい」

「……へ?」

「『屁』じゃないよ、下品だな。──ゴメン、(からか)った。

 条件としては、悪く無い……と思うんだけど、ダメかな?」

「そうじゃなくて!……半分で良いのかなぁ、って」

「勿論。残り半分は自由に使って貰って構わない。

 異論が無いなら、手を握ってほしい」

「は、はい!」


 弥生は右手をゴシゴシと服で(ぬぐ)って、外史の右手を握った。


「……どう?換金出来てる?」

「えええええええ!!!!3,000mpmも!」

「良かった……。

 で、アンパンが1個100mpmで買えるなら、15個買って欲しい」

「えええええええ!!!!!!1人でそんなに?!」

「人数分だろ?この後の朝飯だ」

「!買えます、アンパン!丁度100mpmで1個!」


「念の為、確認しておくけど、在庫はある?」

「え?ふぁぁ!!10個しか無いです!」

「なら、同じ対価でジャムパンとクリームパンが買えるなら、全部5個ずつで良い?」

「えっ?!あ、はい!──あの……」


「ん?何?」

「いえ、何でも無いです!」

「じゃあ、後で皆に配ろうか!」

「ハイ!……アレ?希望を取って買っても良いような……」


「ああ、その方が良いね。

 じゃあ、確りと目が覚めたでしょう?

 僕は、如月ちゃんの恩恵の確認に行くから。

 少し遠くまで、モンスターが現れないか、察知したら声で報せて。

 気を付けてね」

「は、ハイ!」


 弥生は外史が如月の方へ向かった後に、『10個買ってしまったアンパン』を1個取り出し、「えへへ……」と笑いながらパクリと食べ始めるのであった。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「どう?」


 外史の声に、如月は首を横に振る。


「やっぱり、レシピを手に入れないと、必要な素材も判らないか……。

 因みに、樹の幹に対して、木刀でも創れたりはしないかな?」

「あ!──」


 如月は間近な樹の幹に手を添え、外史の方へと顔を向けると、頷く。

 そして、外史が親指を突き付けると、如月の手元の樹の幹が動き、立派な木刀が如月の手に収まっていた。


「良し!材料があれば加工出来る事が判った。

 あとは、レシピの情報集めでも頑張ろう!」


 如月は木刀を外史に渡すと、地面に手を付けて、何とガラスのコップを作成して見せた。


「フム……、石英の成分の多い土なのかな?

 砂地だったら、もっと楽に創れるかも知れないね」


 如月はコクコクと頷く。


「色素を加えて、綺麗な色の模様を付けて……難しいかな?多分」


 如月が地面に手を付けたまま、集中を始めようとしたが──


「待って。

 もう、完全に目は覚めたよね?

 見張りに専念して、難しい物を創るのは、また別に時間を作ろう!」


 如月は少し俯いて立ち上がる。


「まぁ、時間は十分にある。今直ぐと云う訳にはいかないだけだ。

 お金も稼げそうだし、役に立つ能力には間違いないよ!」


 その声に、如月は頷いて顔を空に向け、拳を握った。


「じゃあ、見張りを頼むよ。

 朝飯は、ちょっとしたご褒美だから!

 でも、期待されちゃったらガッカリするかもだから、あまり期待せずに楽しみにしていて!」


 そう言って、外史は最も要警戒の方へと向かったのだった。


 残された如月は、見張りをしながらも、手元で石英と鉄分で酸化鉄の赤いガラスを色々な形に変えながら、恩恵のスキル上げにようやく入れた事を楽しみながら鍛えるのであった。


 尚、30分程で『MP』が尽き、大人しく自然回復に任せる儘、見張りを頑張るが、その頃には早番の内で早く起き出す、金光辺りが動き回り、問題は無かったものの──外史がトリコーン・ラビットを一羽狩る等と云う事態が起きて、目が覚めて処理された兎肉で簡素なスープを作られるのを見て警戒の重要性を思い知り。

 弥生から配られる菓子パン3種から1個を受け取って朝飯とすると、取り敢えずギルドに討伐報告をして対価を受け取って、オニークやオニーガと云う、Lv.30相応に当たるモンスターの出る、北東へと進路を決めて魔法機を返却し、城下町を出るのだった。

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