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異世界超能力者  作者: 天羽ヒフミ
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第十四話 もう1人の候補者

 誰か、助けてほしい。この状況。


「おやおや、救世主殿。ルリはこれから訓練の手伝いです。この手を離して頂けますか?」

「そう言っていつも土御門を独り占めしてるのはそっちじゃないか!」


2人の男に両手を取られていた。

動けないし、この状況に理解が追いつかない。


 ことの発端は私が歩いて訓練場に行こうとしている時だった。

天草くんが声をかけてきたのである。


「あ、おーい。土御門。」

「おはよう、天草くん。何か用かしら。」

「えっと、その…今日暇か?」

「残念ながら今日は訓練の手伝いがあるから暇じゃないわ。」

「明日は?」

「明日もよ。」

「明後日は?」

「明後日もだけれど。」


何故か不満気に言われた。

私は聞かれたことに答えただけなのだけれど。


「時間がないからこれで失礼するわね。」

「あ、ちょっと待ってくれよ!い、いつなら暇だ?」

「明後日以降になるわね。それがどうかしたの?」

「じゃ、じゃあさ、俺と」

「居た。ルリ、もうすぐで訓練が始まるぞ。」

「あ、アルバートさん。じゃあ、話があるみたいだけど私は用があるからこれで。」


その時だったのだ。天草くんに手首を掴まれたのは。


「…めだ。」

「え?」

「ダメだ。土御門はいつもやらなくて良い訓練の手伝いばかりをしてるじゃないか。少しくらいサボっても良いだろ?」

「それをどうして貴方が決めるのかしら。」

「それは!その…。」

「私の目の前でよくサボれだなんて言いますね、救世主殿。」


アルバートさんの目が笑っていなかった。

ちょっと怖いかもしれない。


「ルリの手首から離してください。」

「嫌だ!」

「おやおや救世主殿。ルリはこれから訓練の手伝いです。この手を離して頂けますか?」

「そう言っていつも土御門を独り占めしてるじゃないか!」


とまぁ、こういう経緯なのである。

アルバートさんまで私の手を掴んでいるものだから身動きが取れない。

誰か、助けて。マジで。


「天草殿。離しておあげなさい。ルリ殿が困っているでしょう。」


そう言ったのは魔法騎士団団長のアーノルドさんだった。

顔面偏差値ここだけ高くない?

モブ顔の私、かなりキツいのだけれど。

アーノルドさんと城の中で会ったのは初めてだ。

会うとしてもいつも外だったから珍しい。


「アーノルド。君が城に居るとは珍しいな。」


アルバートさんが何かに警戒しているかのようにそう言った。

もう両者の関係は良好のはずなのだけれど、何かあったのだろうか。


「王様に呼ばれただけだよ。」


そう言って私に向けてニコりと笑った。

…あのアーノルドさんが笑った!?

今日は雪でも降るんじゃないでしょうね。

そのようなことを思いつつ、アルバートさんが「失礼。」と言って私の手を強く握り締めながら訓練場にへと後にした。

天草くんの手は簡単にふり解けた。

訓練場まで距離は短い。

それなのにアルバートさんは私の手を離そうとしない。

どうかしたのかな。

尋ねようとした時にはもう訓練場に着いていた。


「ルリ。出来ればこれからはテレポートで移動してほしい。」

「…わかりました。何か事情があるんですね。」

「いや、事情というほどじゃない。個人的なお願いだ。」

「そうですか。とにかくわかりました。」


そう言うと、少し安心したような顔をしながら手を離した。

アルバートさんどうしちゃったんだろう。

そんな疑問が過ぎらずにはいられなかった。


 帰宅。


「そりゃあ、貴女を独り占めしたいからでしょ。ライバル多すぎるしねぇ。」


今日のことを話すと女神様はそう言った。

私にはなんのことやらさっぱりだ。ライバル?どういうこと?


「あのガキンチョにアーノルド。あと2人も候補に上がっているということよ。」

「そんな話、アーノルドさんから聞いてない!」

「しないでしょ。貴女に酷い仕打ちをしていたのだし。」


あれって酷い仕打ちに入るのかな。

別に慣れているから気にしていないんだけれど。

アーノルドさんが候補…だからアルバートさんが警戒していたのかな。

滅多にこない城に国王と話をしたと言っていたし。

きっとそうに違いない。

長いため息をついた。


誰か、この状況から助けて。


そう思わずにはいられなかった。


 休日。

アルバートさんのご要望通り、テレポートで移動する。

今日は街中を見ようと思って装いもちょっぴりお洒落にしてみた。

あくまでも自分視点だけれど。

今日は何かの祝日のようだ。

賑わっている。

いや、祝日ならあの女神様何か言いなさいよと言いたくなったが今は居ない。

ぼっちで楽しむか、と意気込んだ。


 国花であるマリーゴールドを眺めながら1人、歩く。

屋台なんかもあってなんだか美味しそうだ。

そういえば何もまだ食べていなかった。

何か屋台で注文して食べよう。

串肉をそう思って注文し、お金を支払おうとした時だった。


「お金は私が支払いますよ。」


 そう言ってきたのはアーノルドさんだった。

珍しいところで会うものだ。

せっかくなので奢ってもらうことにした。


「今日は謝肉祭なんです。」


あの女神様、そんなこと全く言ってなかったけれど。

自分の謝肉祭くらい覚えていなさいよ。


「そうだったんですか。どおりで賑やかなわけだわ。」

「よろしければご一緒しても?」

「あー…はい。多分、大丈夫です。」

「アルバート殿に何か言われても貴女の責任ではありません。問題ありません。」

「そうですか。なら、案内して頂けますか?」


即答してしまった。

アルバートさんのことを何も思っていないわけじゃない。

ちょっと悪いかなとは思っている。

しかし、彼は束縛を好まないようだ。

だから何も言ってこない。

砂糖を吐くようなセリフはよく言われるけれど。


「ええ。今日は私が貴女をエスコートします。」


そう紳士的に言われてしまった。

アーノルドさんもアルバートさんに負けないくらい美男だ。

そして一応彼も、一応って失礼ね。

騎士なのよね。

だからなのか、案内はとても丁寧にしてくれた。

あの乱暴な言い方はどこに行ってしまったのか、と思うほどだ。

罪悪感で候補者になったのかなと思う。

私なんかに魅力なんてものがあるとは思えないし。


 国王の考えも理解が及ばない。

王女様とかなら分かるけれど、異邦人の私よ?

なんでこんなに婚約者がいるわけ?

何か企んでるとしか思えなくなってきたのだけれど。

いざとなればテレパシーを使おうと決めている。

自分の身くらい自分で守らなきゃ。


そう密かに決意していた。


 夕方。


「今日は案内ありがとうございました。」

「いいえ。貴女を独占できて良かったです。」

「そういうことは本当に好きな人に言ったほうが良いですよ。では失礼しますね。」


そう言って私はテレポートした。

だからこそ聞こえなかった。


「貴女だからこそ言ったのですが。」


その言葉は女神様にしか届かなかった。

 自室に戻るとニヤニヤした顔で女神様が居た。


「モテる女は大変ねー。」

「何を言ってるんだか。」


モテるって意味が違うと思う。

私は婚約者が無駄に多いだけでモテるって意味とは絶対に違う。


「またまたー。アーノルドのこと、気をつけることね。アルバートが知ったら良い顔しないわよ。」

「わかっているわ。そんなこと。」

「あら?もしかして嫉妬でもさせたかったの?」

「いいえ。そんなくだらない理由で謝肉祭に参加したわけじゃないわ。」

「じゃあなぜ?」

「いや、なんとなくだけれど。」

「…貴女がそういう女だって私は知っていたわ。ええ、知っていた。」

「いきなり独り言やめてくれないかしら。」

「あら、ごめんあそばせ。」


絶世の美女が微笑む。

きっと女神様の姿を見れば、3人とも恋に落ちるに違いない。

私なんかモブ顔だもの。

ちょっとだけ女神様の美貌が羨ましく思った。


 翌日。


「おはよう、ルリ。今日の装いも美しいな。」

「おはようございます。ただのワンピースですよ、アルバートさん。」


訓練場に着くなり甘いセリフを吐かれる私。

この人も凄いな…と思っていた。

それと同時に何故か謎の罪悪感に囚われていた。

アルバートさんに何も知らせずにアーノルドさんと謝肉祭を過ごしたこと。

別に悪いことをしたわけじゃない。

彼に止められていたわけじゃない。

私が勝手に罪悪感を抱いているだけ。

それだけだ。


「どうかしたのか?ルリ。」

「いいえ。なんでも。訓練場に向かいましょう。」


そう言って先に行こうとする私。

アルバートさんがそれを止めた。


「俺は束縛する権利もないしその気もない。だからアーノルドと君が謝肉祭に参加していても何も思わないよ。」


振り向くと、ニッコリと笑って言っていた。

罪悪感を持っていたことに気がつかれたのかもしれない。

でも彼の拳は悔しげに握り締められている。

何かしら思っていることは確実だった。

彼は嘘が下手らしい。

テレパシーで聞こえてきそうになるが、どうにか封じる。


知りたくない。

この謎の罪悪感の理由も知りたくない。


私は心の中で耳を塞いだ。


訓練場に向かうと昨日も会ったアーノルドさんが居た。

どうしたんだろうか。

私は軽く会釈して手伝いの準備に取り掛かった。

準備を終えて戻ると、まだアーノルドさんが訓練場に居た。

どうやら騎士団に用があるらしい。

私は邪魔にならないように隅っこにいようと思った。


「ルリ!君も来てくれ!」


アルバートさんに言われて走り寄る私。

アーノルドさんの視線が痛いように感じた。


「今日から魔法騎士団も一緒に訓練に加わりたいとの話が来たんだ。」

「アルバートさんはどう思っているんですか?」

「良いことだと思う。協力関係にあるのだし、いざとなった時に協力体制を敷けるのは良いことだ。」

「総団長の貴方がいうのならそれで良いのではないでしょうか。」

「そうか。実践のもルリは魔法騎士団相手にすることになる。それでも構わないか?」

「問題ないですよ。どんと来いです。」

「なら決まりだな。アーノルド。その話を呑もう。」


どうやら魔法騎士団がこの訓練場に来て協力関係を敷きながら訓練することを話していたようだ。

天草くんの姿も見える。

何故か不機嫌そうな顔に見えた。

良いことだと思うんだけどな…。

どうしたんだろう。

よく、わからなかった。


 お昼。

なかなか協力体制で訓練というのは難しいようだ。

実践は午後からなので基本的に私は午前中は見学をしながら、怪我をした人達を治したりしていた。

魔法と剣。

ファンタジーありありなものだけれど、よく考えたら全く違うものだ。


魔法は特別なもの。

剣は頑張れば誰でもできるもの。


だからこそ違いが出てしまう。

以前のような差別的な発言は全くなくなったが、その違いが協力という形にするまでは一日では難しそうだった。


 午後。

いつも通りに私が相手となり実践の訓練が開始される。

アーノルドさんは最初躊躇していたが、私が平気だとちゃんと教えると魔法騎士団の人たちに指示を出していた。

そしていよいよ開始。

今日は魔法も含まれているので私も気合いが入る。

全ての攻撃を今日も躱し、一日が終わった。

アーノルドさんはその光景がとても驚くべきことだったようで、ポカンとしていた。


「大丈夫ですか?アーノルドさん。」

「はい、ええ、大丈夫です。貴女は本当に強いんですね。」

「ただの超能力者ですよ。」


そう言って私は訓練の後片付けを手伝った。

こうして魔法騎士団との訓練の1日目は無事に終わった。


「アーノルド。君も婚約者候補になったんだろう?」


アルバートさんが訓練後、彼にそう言った。


「ええ。快くそのお話を引き受けることにしました。」


その言葉にびっくり。

私にまた婚約者が出来てしまった。

まだ高校生なんだけれど…。


誰か助けて。



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