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幕間 ソレ

※妖精は幼児並みの知能の子もいるが、全て絶対ではありません。

 


 生まれて初めて人間に力を使ったソレ。


 ソレは思考することにより精霊から妖精へと変化をしたことに暫く気付かなかった。


 《愛し子》の歪んだ力を介して腕を振るったソレは、歪みに気付かず己のなした結果に満足していた。


 何故ならば、好ましい力をもつ小さいヒラヒラは人間に放っておかれている。

 《愛し子》が望んだように、嫌われ避けられている。


 大小たくさんの人間が小さいヒラヒラを嫌悪して避けるように、それぞれの人間が厭うものに見えるようにしたのだ。


 ソレは騒ぎを愉しそうに見ていた。


 《愛し子》の願いを叶えたのだ。

 喜んでもらえるかな。褒めてもらえるかな。


 ソレは倒れた《愛し子》が起きるのを待った。


『早く起きないかな』


 ソレがウキウキ待っていると、周りに以前のソレと同じものが集まってきた。

 以前のソレは思考することがなかった。

 ただ好きな場所や環境、者たちに惹かれて集まるのだ。今も以前のソレと同じものは《愛し子》に寄ってきている。

 以前のソレも、今のソレも《愛し子》などの好ましい力を持つ人間の近くにいたがるものなのだ。


 それは、今のソレになってからの方が欲求が強い。


 そこで初めてソレは己が精霊と呼ばれる存在から妖精という人間と関われる存在へなったことに気付いた。

 ソレは思考をしている。だから、《愛し子》の願いを叶えられた。


 ソレは己が力を使えることを喜んだ。


 これでもっと《愛し子》の願いを叶えられる。

 そうしたら《愛し子》は喜ぶ。

 喜んだらソレを役立つと思う。

 役立つならソレを側においてくれる。


 ソレは《愛し子》と一緒にいられるのだ!


『まだ起きないかな』


 ソレは《愛し子》が目覚めるのをずっと待った。


 まさか《愛し子》に嫌われるなんて思いもよらずに。







 ソレは悲しかった。


 目覚めた《愛し子》に怒られた。


 何故?

 ソレは《愛し子》の願いを叶えたのに。

 怒られるとは思わなかった。


 あの小さいヒラヒラと《愛し子》の願いを両方上手に叶えたのだ。

 褒めてもらえると思っていた。

 ソレは初めての力が上手く使えて満足していたのだ。


 なのに、《愛し子》はそんなこと望んでいないとソレが勝手に間違えたと嘘を吐いた。

 もうソレなんか見たくない。ソレと関わりたくないと怒鳴った。


 ソレは嘘を吐けない。


 嘘を吐くと理を外れてしまうのだ。

 ソレが正しく力を使うには、好ましい力を持つ人間の願いを叶える必要がある。

 力を使うには理を守らなければいけない。

 理を外れるとソレは対価として魂を取られて消えてしまう。

 だから《愛し子》も嘘を吐いたらいけない。

 正確にソレが願いを叶えるためにも《愛し子》が嘘を吐いては正しく力を使えない。

 理はソレらの女王様が管理している。


 きっと《愛し子》も女王様が見ている。


 けれど《愛し子》はソレの言うことを聞いてくれない。


 酷い。

 辛い。

 悲しい。

 怒られるのも無視されるのも愉しくない。


 どうしたら《愛し子》は機嫌を直してくれるだろうか。

 どうしたらソレと一緒にいてくれるだろうか。


 ソレが近付かなければ《愛し子》は怒らなかった。


 だからソレは己が《愛し子》に見えないようにした。

 姿を隠したり、他のものに化けたりしたのだ。


 時々《愛し子》の願いを叶えに姿を現したが、やはり怒られてしまう。

 たまに細やかな願いを叶えた時は無視されたが、ソレが姿を隠した後《愛し子》が少しだけ喜んでいたのを知っている。

 それからは、なるべく細やかな願いを叶えるようにしては《愛し子》がたまに喜んでくれるのを確認してソレは満足した。


 そうしてソレはずっと近くにいた。







 いつからか《愛し子》はある人間の話をよくするようになった。


 ある人間は《愛し子》の近しい血族の宿敵らしい。

 《愛し子》が嫌いな人間はソレも嫌いだ。何故なら《愛し子》の機嫌を悪くするから。


 けれど、ある人間にソレが会うことはなかった。


 シカンガッコウと呼ばれる人間の作った大きな箱に《愛し子》が行く間はソレは着いていけなかったからだ。

 ソレらの王様の力が膜を張っており、ソレらは近付けないようになっていた。王様が人間の王の願いを叶えるために力を使ったらしい。


 そして《愛し子》が人間の王の住み処に行くようになってからもソレは着いていけなかった。

 人間の王の住み処にもソレらの王様の膜が張ってあったのだ。


 だから、ある人間にソレが会うことはなかった。


 あの日までは。







 その日《愛し子》は人間がたくさん集まる大きな箱にいた。

 ここには王様の膜がないのでソレは着いていけた。

 箱の中は、少し高い場所で人間が歌って踊っているのを見るためにたくさんの人間が集まる場所だった。


 人間は変なことをする。


 見るのではなく皆で歌って踊ればいいのに。

 ソレらは歌って踊るのが大好きだ。

 だから見るだけで満足できる人間を理解するのは難しい。


「・・・あのツヴァイ・マカダミックが女連れ?」


 急に《愛し子》が呟いた。

 呟いた名は《愛し子》が嫌いなある人間の名だ。


 ソレが視線を追うと黒い人間がいた。

 そしてソレは困った。


 ある人間は黒い人間で、黒い人間は《忌み子》だった。


 ソレは《忌み子》には何もできない。

 しかも、近付き過ぎれば力が使えなくなってしまうのだ。

 《愛し子》が力をくれて惹かれる存在ならば、《忌み子》は力を奪い弾く存在だ。


「何でアイツばっかり・・・だいたい、あの令嬢は誰だ?」


 ソレは少しだけ力を使い、《愛し子》が気にする《忌み子》と一緒にいる人間が顔を上げる瞬間に、人混みに隙間が空くようにした。


「は?まさか・・・シェイラ・ヘイゼルミア?」


 そして、その時に思い出した。

 ソレが生まれた時、生まれてすぐ使った力の結果を。

 あれ以降《愛し子》は小さいヒラヒラの人間の噂を聞いては怒るのだ。


 嫌いな《忌み子》と小さいヒラヒラだった人間が一緒にいる。

 良くない。駄目だ。《愛し子》の機嫌がどんどん悪くなってしまう。


『何とかしないと』


 ソレは力を使い、近くにいた小さいヒラヒラを妬む人間の嫉妬心を煽った。ソレは《忌み子》に近付けないから人間の感情を煽って動かすしかできない。

 でも、騒ぎが起きて《忌み子》と小さいヒラヒラだった人間はいなくなった。

 ソレは安堵した。


 けれど《愛し子》は怒っていた。

 小さいヒラヒラだった人間は自分のものだと。《忌み子》が一緒にいるのが赦せないと。

 ソレは困った。《忌み子》には何もできない。

 しかも《忌み子》は普段人間の王の住み処にいるから様子もわからないのだ。


 だからある日、《愛し子》の近しい血族が《忌み子》に接触した後、《忌み子》が外に出たらわかるようにソレは力を使った。

 そして《忌み子》が外にいる時、人間の姿に変化して《愛し子》を連れ出した。






 ソレは《愛し子》が近くにいたら《忌み子》に多少近付けるのだ。

 これで《忌み子》の邪魔ぐらいできるだろうと思った。


 けれど、ソレは考えが足りなかった。


 例え《愛し子》が側にいても《忌み子》の前では姿を保つのは難しく、変化できなくなってしまったのだ。

 その上思考力が落ちてしまい、《愛し子》たちが揉めている間にふらふらと《忌み子》に近付き過ぎてしまった。


 仕方がなかった。


 何故なら《忌み子》の食べるアップルパイが美味しそうだったから!






※妖精はビスケットやミルク、甘いケーキが大好き。


窓辺に置いておくと餌付けができるよ!

お礼に家妖精(ブラウニー)が家事を手伝ってくれるかも!

『お向かいに殺人鬼が引っ越してきました』記載。


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