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23 ツヴァイと訓練

 


 昼の休憩時間が終わる前に訓練場へ戻るため、早めに殿下達の前から下がらせていただき、愛しのシェイラ嬢を馬車までエスコートして送った。

 今後の相談もあるので、シェイラ嬢との次の約束も忘れず取り付けウキウキで訓練場へ戻る。


「おおぉ~い!ツヴァイ、やっと戻ってきたか~!」


 訓練場から第2の隊長を勤めるアーモンディが模擬刀を握った手をぶんぶんと振ってきた。

 何故休憩時間中に模擬刀を握っているのかは謎だ。


 平民からの叩き上げであるこの男はかなりの腕を持つ。

 第2騎士団は騎乗戦に長けた者が多く、得物も長剣や槍が多いのだが、アーモンディは有るものを何でも使いこなす派だ。

 実際9年程前にあった西の国との戦では得物を選べる状況ではなかったらしく、当時のアーモンディは下級騎士にも関わらず単騎で敵軍に突っ込み、有るもの全て使って道を切り開く猛者として一気に戦果を挙げたのだ。


 当時14歳で士官学校に通っていた俺からしたらアーモンディは雲の上の存在で英雄だったのだが、脳筋アーモンディはそこそこ腕の立つ俺を気に入ったらしく、入隊してからは手合わせしようと無駄に絡んでくるようになった。

 そんなこんなで気が付けば、アーモンディとは年の差はあれど気楽な友人付き合いになっていった。因みに敬語禁止された。


「ん?まだ休憩時間は終わる前だが、俺に何か用だったか?」


「おう!午後の訓練は俺対全員の多人数戦にしようと思ってな!ちとフライングしたんだわ!」


 アーモンディが模擬刀の潰した刃先を肩越しに後方の訓練場へ向けた。ニカッと笑いながらウィンクすんな、気持ち悪い。

 その先に目を向けると、第1、第2の部下達が力尽きて倒れている。見るも無惨な土まみれで、食べたばかりの昼飯を吐いている者もいる。


 うん。全然ちょっとではないな。

 この様子だと昼休憩の半分は無くなっていたに違いない。

 あ。俺まだ昼食べてなかった。お腹空いた。


「・・・アーモンディ、お前何やってるんだ」


「けっ、最近大きい問題もないせいで締まりがないないからなぁ!舐めた口聞くやつが多いから鍛えてやろうと相手した!」


 どうせ、脳筋とかサボるなとか言われただけだろう。


 アーモンディは書類仕事等の机にジッと座っている系の仕事が苦手らしく、よくサボって馬で逃げ出すらしい。第2の副隊長が嘆いていた。

 仕事が滞るのをよく愚痴られるので、皺寄せがいく王宮内兵舎勤務の隊員や事務員ら経由で伝わり周知の事実である。


 今もアーモンディが訓練指導に出ているので、第2の副隊長は執務室に缶詰めであろう。可哀想に。

 因みに第1は護衛勤務時間にもよるが基本は隊長と交代制である。


「確かに怠けたり弛んだ奴や腕が伸び悩む奴は多かったが、休憩時間中にこんなに疲弊させて午後の訓練をどうするつもりだ?」


「ああ、だからどうすっかなぁーと考えたが、決まんねぇからお前に任せた!!こういうのはクソ真面目なツヴァイの方が得意だろ?」


 あっけらかんと言われた。

 これは部下から脳筋と言われても文句は言えまい。


 しかし、本当にどうしたものか。

 いくらアーモンディが群を抜いた猛者だとしても、ひとり相手に簡単にやられ過ぎである。情けない。


 アーモンディと話しながら訓練場脇の補給場へ歩き、軽食を摘まむ。

 今日はワイルドサンドか。パンより挟まれた肉の方が分厚いという、正に男のための雑なサンドイッチだ。もしゃもしゃごくり。


「うん?アーモンディ、何割でやった?」


「んあ?・・・ふんっ、模擬刀一本だから6割ぐらいか?しかも、時間保たせるために何回かに分かれてきてたぞ」


 全力10割。

 つまり6割しか力を出していなかったらしい。

 緊急任務が来た時のために隊長格が訓練中全力を出すことがあまりないにしても残念な結果だ。

 いつも俺との手合わせで7~9割で撃ち合うからな。


 あれ。この人数でかかってコレとかヤバくない?


「6割でこれか。これは本格的に鍛え直しが必要だな」


「あぁ、このままじゃ隊長格との差がひでぇからな。第1の隊長さんも歳だからって、そろそろ引退考えてんだろ?順当にお前が隊長へ昇進するにしても副隊長どうすんだよ」


 それな!

 我らが第1の隊長殿は以前の軍が貴族血統などの権力主義で腐っていた時代から王家をお守りするために真面目に勤めていらした方だ。

 まぁ、第1は他の隊と違い仮にも王家直属。敬愛する方々の護衛任務メインで仕えている。腐った軍内でも隊長殿のお陰で一番マシな状態であったのだ。


 だが、他の隊も実力主義改革で力をつけてきた今、第1も多少地力は上がれど隊長格ほどかと言われると中々適任者がいない。


 あ。フルーツサンド発見。

 甘いのも好きだからちゃっかり食べる。もぐもぐ。

 因みにアーモンディは横で補給ドリンクの樽にタバスコ混ぜ出した。え!?何してんのコイツ。


「・・・実力主義とはいえ、何も腕だけで決まるわけではないからな。隊長殿の判断では様子見て駄目なら他の隊から引き抜くやもと言われた。まぁ、他もいい勝負だとは思うが」


「あ~、そうだな。これより弱かったクソみたいな過去が懐かしいなぁ。これでも昔よかマシって酷すぎんだろ」


 全くだ。

 やはり戦争のない今は緊張感というか、命のやり取りが少ない分危機感も少ない。

 だから足りない。

 もっと強くなろうと、誰にも負けないと腕を磨く努力が。

 死ぬ気で限界突破を試みる執着が。


 まぁ、普通に王城や宮で王家守っててピンチに陥るなどそうそうない。あったら不味い。


 しかし、若い騎士に限らず慣れるとそれで満足してしまう者が出てくるのが問題だった。


 特に、隊長格との差を諦めて努力を怠るとかな!


 ・・・うん。まぁ、人外級もいるから否定はしない。

 だが、まだ伸び代がある者が諦めるのは違うと思う。勿体無い。


「そうだなぁ、疲れていても敵は待ってはくれないから・・・ロープレでパターンごとに対策、実行の防衛戦でもさせてみるか?俺とアーモンディは暗殺者役で、陣営のリーダー(疑似王族)を狙って突っ込み、防衛人員である全隊員を攻めるとか。ハンデ力4割として、あと俺らは相手の武器以外に此方から攻撃しない、対峙した時に初撃は向こうからとか」


「ククッ、ありだな。これであっさり負けるとか許さん!んじゃ、叩き起こしてやるかな!」


 脳筋アーモンディが楽しそうである。

 訓練中は基本楽しそうだが。


 ってか、タバスコドリンク放置すんな!

 どうすんだコレ!?


「あ、ツヴァイ!お前は愛しの化け物令嬢とやらに会いにいってたんだろ?恋に現を抜かして訓練腑抜けてたら雑魚隊員とタバスコドリンク(それ)イッキ飲み勝負な!!」


 マジかよ。

 俺辛いの苦手なんですけど!?


「―――ってか、シェイラ嬢を化け物というな!アーモンディ、暗殺者に仲間はいないから覚悟しろよ」


 俺の愛しのシェイラ嬢を見てもいないのに化け物呼びした罪は重い。

 訓練中アーモンディもボコボコにしてやろう。

 休憩してた俺と違ってアーモンディも体力の消耗はしているからな。








 ―――結果。



 俺のひとり勝ち。

 セコい手を使ってきたアーモンディには辛勝だったがボコボコにはできた。


 部下達とアーモンディに責任もってタバスコドリンク飲ませていたら、隙を狙ったアーモンディに無理矢理飲まされてちょっと泣けた。



 シェイラ嬢、一緒に甘いもの食べにいきませんか?



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