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18 シェイラと王城

 


 自分に関して揉め事を起こす少年達を前に少女はうんざりして呟いた。


「私の姿が良く見えなければ―――」と。


 好きな少女を取り合い喧嘩したのに、肝心の少女に逃げられた少年は呟いた。


「皆が彼女を嫌えば、僕がひとりじめできるのに―――」と。



 それらを側で見て聞いていた存在が愉しげに頷いた。


『では、真実を嫌悪で見えないように隠せばいいんだな!』と。









 ツヴァイ副隊長様とのお見合いから3週間。


 そうです。

 ツヴァイ副隊長様()()お見合いです。


 どうせ破談になるからお相手を知ろうともしなかった私。

 戻れるならば時を戻りたいです。恥ずかしい。


 あの怒濤の展開に混乱するばかりだったお見合いの日。

 ツヴァイ副隊長様の仰ることを疑うわけではありませんが、夢だったのではないかと、お父様にマカダミック伯爵家からの縁談の打診の手紙を見せて頂きました。


 そこには、きちんとお相手はツヴァイ・マカダミックであると、ツヴァイ副隊長のプロフィールと共に名が記されておりました。

 見間違いはないかと、夢幻ではないかと何度も確認してしまいました。


 ――――嬉しい。


 あれはツヴァイ副隊長様の優しい嘘でも誤魔化しでもなく、始めから私を望んでの求婚の打診でした。


 本当にツヴァイ副隊長様は存在そのものが奇跡です。


 あれから、お忙しいツヴァイ副隊長はお仕事の合間を縫って、メッセージカードを添えたお花を贈ってくださったり、短い文章ながらお手紙をくださるようになりました!

 真面目なツヴァイ副隊長様らしい、少し角ばった文字で綴られた挨拶や私の出す手紙への返事に胸がぽかぽか致します。


 ツヴァイ副隊長様からのお手紙が届くと頬が緩んでしまうので、ティリにニヤニヤ見守られながら読むはめになりますが、この嬉しさを伝えたくなってしまうので仕方ありません。


 当初お父様に伝えていたら、「娘から恋話を聞くのはまだ早い!」と泣かれてしまいました。親馬鹿です。





 本日は久しぶりにツヴァイ副隊長様にお会いできます。


 数日前頂いたお手紙に、会わせたい方がいると書かれていました。

 ツヴァイ副隊長様もその方もお忙しいらしく、先方の都合に合わせて私が王城に上がることになりました。


 王城に上がるのはツヴァイ副隊長様に出会った時以来。

 あの日はご結婚されたばかりの王太子妃殿下のお茶会に招待されたので、侯爵家の娘として断ることなどできるはずもなく参加いたしました。


 まぁ、結果はお察しです。


 見事私の顔を見たご夫人に泣き叫ばれました。

 ご夫人の「化け物!」と言う叫びに反応した、私の顔をまだ見ていないご令嬢にティーテーブルにセッティングされていた食器やお菓子を投げつけられ、中庭の隅に逃げるしかありませんでした。


 元々あのお茶会は王太子妃殿下の友人を増やす目的で開かれたので、醜い足の引っ張りあいもあるのは必然。

 これ幸いと確認されることもなく攻撃を受けました。

 今まで泣き叫ばれたり、失神、暴言醜態を招くことはありましたが、暴力や攻撃は受けたことがなかったので、びっくりして悲しくて涙が出てしまいました。


 ですが、あの日ツヴァイ副隊長様に出会えたことに感謝しました。


 今回は、前回の中庭ではなく城内の執務や応接室の並ぶ階に通されました。

 城の使用人に案内されたのは広すぎず狭すぎず品良くまとめられた応接室のひとつでした。

 ツヴァイ副隊長様はもう少しでいらっしゃるそうです。



 そして、目の前には予想外の人物。



「シェイラさんと直接お話するのは初めてね!」


 優雅に微笑まれているのは、あの日チラリと遠目にお姿を拝見した王太子妃殿下です!


 聞いてませんよ、ツヴァイ副隊長様!!!

 会わせたい方とは、まさか王太子妃殿下ですか!?


「はい、王太子妃殿下」


 何とか冷静を装い、淑女として挨拶をするので精一杯です。


「お茶会の時はごめんなさいね。主催者として騒ぎを抑えるのに手を取られてしまってシェイラさんを見失ってしまったわ。直ぐ侍女に追わせたのだけれど、貴女を見つけられなかったらしくて・・・」


 わかります。

 王太子妃殿下が自ら私を追いかけるなどあってはなりませんから、そんなに申し訳なさそうなお顔をされなくて大丈夫ですよ。

 そもそも王太子妃殿下が身分が下の者に簡単に謝る必要はありません。後日王宮から届いた謝罪とフォローのお手紙だけで十分でしたので!


 侍女は私が恐くて見つけられなかったのだと思います。

 誰も化け物に声をかけるなどしたくありませんから。


 そう考えていると、王太子妃殿下が爆弾を投下されました。


「ところでシェイラさん、帽子を取ってお顔を見せてもらえない?」


 ・・・聞き間違いでしょうか?


 王太子妃殿下は私がシェイラ・ヘイゼルミアで、噂の化け物令嬢だと既にご存知のはずです。


 化け物の顔を見たがる意味がわかりません。


 部屋には王太子妃殿下の護衛も控えております。

 王太子妃殿下が悲鳴を上げたり倒れられたりしたら、私は気分を害させたとか化け物だとかで切り捨てられるのでしょうか。

 それとも、顔を晒せない非礼から不敬罪で捕まるのでしょうか。


 どうしたらよいのかわかりません!


 早く、早く、来てください!

 ツヴァイ副隊長様!!



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