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冥府の剣と蒼天の絆  作者: 壱春
第1章 偽りの帰還
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見えない星

「レイン!」


 勢いよく部屋に飛び込んできたアスティに、レインは怪訝そうな顔をした。


「なんだ、いきなりどうした?」

「あ、もう話は終わった?」

「ああ、大体は」


 レインはマイルズとエシルに視線を向ける。


「じゃあ、僕はまだ仕事が残ってるからそろそろ行くよ」


 マイルズはレイン達に軽く会釈をすると、静かに部屋を出て行った。


「あ! そこのペンと紙を借りていいかな」


 アスティは机の上に置いてあった紙とペンを手に取ると、慣れた手つきで絵を描き始めた。


「この紋章のこと、何か知らないか?」

「これは……」


 レインは紙に書かれた紋章を見て、眉をひそめた。


「知ってるのか!?」

「待て、何を興奮しているんだ。少し落ち着け、一体何があった?」

「あ、ご、ごめん。ちょっと色々あって……。えっと、さっきこの紋章を付けてる女の人を見たんだ。それで、レインならこの紋章について何か知ってるんじゃないかと思って……」

「……存在しない星(ニルステラ)


 レインは小さな声で呟いた。


「たしかに心当たりはあるが……」

「ほ、本当? それは一体……」

「待て待て、そう、結論を急ぐな。先程あった出来事をもう少し詳しく話してくれ」


 興奮気味のアスティは深呼吸をしてから、先程あった出来事をレインに伝えた。



「……なるほど、状況は理解した。その女が探していた宝石が本当に卵殻石だとすると、その紋章は神都直属の騎士団、"存在しない星(ニルステラ)"の可能性は高い」

「それは、神都に行けば会えるのか?」

「いや、その女が何者かは分からないが、神都が滅んだ今、騎士団だけが単独で活動しているとは考えづらい」

「……そうか、でもやっと見つけた手がかりなんだ。俺は彼女の後を追うよ。それに、あの卵殻石を持ってる三人の事も心配だ」

「そうだな。石を持って行かせたのは俺にも責任がある。幸い行き先は分かっている。準備を整えたら直ぐに向かおう」


 レインの言葉にアスティは大きく頷いた。


「どうやら話はまとまったようじゃな」


 部屋の隅にいたエシルが口を開いた。


「なんだ、まだいたのか」

「ずっとおったわい!!」

「ごめん、話に夢中で全然気づかなかった」

「追い討ちをかけるでない!」


 エシルは憤慨しながら、話を続けた。


「それで、レイン。さっきのマイルズの話に戻るが、ワシにまで真相を聞かせて、お前はどうしたかったんじゃ?」

「ああ、この街で起こった事の全て、とまではいかなかったが、事の次第はさきの通りだ」

「ん? ああ、まぁのぉ……」

「この事を領主に伝えるかどうかはエシルの判断に任せる」

「んなっ!?」


 エシルは口を開けて驚いた。


「俺たちは先を急がなくてはいけなくなったのでな。街の復興までは付き合えそうにない。だから、後のことは次に会った時にでも聞かせてくれ」

「お、お前はまたそうやって! ま、待たんか!」


 レインはエシルの静止を無視して部屋を出て行った。



「なんだか、後始末をエシルさんに押しつけたみたいで申し訳ないな」

「気にするな。アイツはなんだかんだで面倒見がいいからな。俺達なんかよりも上手くまとめてくれるだろう」

「エシルさんとはどういう関係なの?」

「……それはどういう意味だ」


 アスティの質問にレインは怪訝な顔で振り返る。


「あ、いや、なんか歳はすごく離れてるのに、仲がいいっていうか……」

「まぁ、そうだな。アイツは幼馴染みたいなものだ」

「幼馴染って……え?」

「ああ見えて意外と若いんだ」

「え? え?」


 アスティの混乱をよそに、レインはニヤリと笑った。


「あ、いたいた! 二人とも!」


 声のした方へ目をやると、ミレイユが手を振りながらこちらに駆けてくるのが見えた。


「ミレイユ! さっきはごめん。一人で置いてちゃって」

「ううん、大丈夫! 急ぎの用事だったんでしょ? もう用事は済んだ?」

「うん……。でも、ちょっと気がかりな事があって、先を急がなきゃ行けないんだ」

「え、そうなの!?」

「旅の支度が出来次第、ここを立つつもりだ」

「それは寂しくなるわね……」


 ミレイユは寂しそうに目を伏せたが、すぐに顔を上げて笑顔を作った。


「でも今日はもう遅いから、出発は明日でしょ?」

「ああ、そうだな」

「じゃあ、今日はウチに泊まって行ったらいいわ!」

「でも、迷惑じゃ……」

「全然、むしろお礼をさせて欲しいのは私のほうよ。 今夜は腕に寄りをかけてもてなすからぜひ泊まって行って」

「では、お言葉に甘えるとしよう」

「うん、ありがとう。ミレイユ」


 ミレイユの後を追いながら、アスティは陽の落ち始めた空を見上げた。そこには小さな星がひとつだけ瞬いていた。

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