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冥府の剣と蒼天の絆  作者: 壱春
第1章 偽りの帰還
20/30

燃える教会

 炎はあっという間に教会全体を包み込み、その全てを燃やし尽くした。レインとリソラは教会から離れた安全な場所へ避難し、アスティの手当てにあたった。


「アスティ、しっかりして! アスティ!」


 荒い呼吸を繰り返すアスティにリソラが必死で呼び掛ける。


 アスティの腹部は傷口から流れ出る血で真っ赤に染まっていた。リソラは狼狽えながらも必死で止血しようと傷口を抑え、アスティは痛みに呻いた。


「レイン、どうしよう! 血が……、血が止まらない……!」

「……あれほど無茶はするなと言ったのに」


 焦るリソラを他所に、レインは呆れた様子でアスティを見ていた。


「そうだ、あの本で傷薬を作れば……!」


 以前、毒に犯されたアークを救った本の事を思い出したリソラは、もう一度、薬を作り出そうと思い立った。


「その必要はない。こいつなら大丈夫だ」


 レインがリソラを制するように右手を伸ばした。


「ヒューイ、出てこい」


 そう言って、レインが右腕を伸ばした。するとローブの袖口がもぞもぞと動き出し、中から白いトカゲのよう生き物がひょっこりと顔を覗かせた。


「え?」


 リソラは初めて見るその生き物に目を奪われてしまう。ヒューイと呼ばれた白い生物は大きな瞳でリソラを見つめると、首を捻り「キュイ?」っと小さく鳴いた。


「ドラ、ゴン……?」

「……しー」


 リソラの言葉にレインが人差し指を立てて声を潜めた。


「この事は誰にも秘密だ。いいな?」

「……え? あ、はい」


 呆気に取られたリソラが訳もわからず、返事を返すと、レインは少しだけ笑みを浮かべた。


「ヒューイ、悪いがまたこいつを治してやってくれ」

「キュイ!」


 ヒューイは袖口から首を長く伸ばすと、アスティの首に鼻先を近づけ、クンクンと匂いを嗅いだ。そして次の瞬間、ヒューイは大きく口を開け、思い切り首元に噛み付いた。


「いったあああああ!!」


 突然の激痛にアスティが大声を上げて飛び起きた。


「……あ、あれ? ここは?」


 噛まれた首元を摩りながら傍に座るレインとリソラを交互に見やり、首を捻った。


「2人とも何して……? アレ、そういえば俺、怪我を! ……あれ、してない?」


 アスティはアークに引き裂かれたはずの腹部を弄ったが、傷はいつの間にかなくなっており、破れた服に血痕が残っているだけだった。レインの袖口から顔を出していたドラゴンは姿をいつのまにか姿を隠してしまったようだ。


「……アスティっ!!」

「え? ……うわっ!」


 目を覚ましたアスティの胸にリソラが飛び込んできた。アスティは勢いに押されそのまま地面に倒れこんだ。


「よかった、無事で…本当に……」

「ソ、ソラ?」

「ありがとう、ありがとうぉ……う、うぇぇぇぇん!」


 リソラはアスティの上に覆いかぶさったまま何度も何度もお礼の言葉を繰り返した。その瞳からこぼれ落ちた涙が、アスティの仮面にぽたりぽたりと滴り落ちる。


「……えーと」


 アスティは泣きじゃくるリソラをどう慰めたらよいのか分からず、レインに視線を送ったが、レインは自分でなんとかしろといった感じで、可笑しそうに笑った。


「あの、ソラ?」


 リソラが我に帰り、体を引き起こした。


「あ! ご、ごめんなさい!」

「い、いや、別に……」

「わたし、リサ達の様子を見てくるね!」


 急に気恥ずかしくなったリソラはそそくさとその場を離れて行った。アスティは走り去る後ろ姿を見ながら、身体を起こす。すると先程までピッタリとくっ付いて離れなかった仮面がポロリと外れ、地面に転がり落ちた。


「仮面が!」


 アスティが落ちた仮面に気づき、驚きの声をあげる。


「ようやく呪いが解けたみたいだな」

「え?」

「仮面の呪いだ」

「そういえば、なんで急に?」

「……仮面の呪いを解くには乙女の涙が必要だったからな」

「乙女の涙?」

「それなりに高価な代物だ。探す手間が省けてよかったじゃないか」

「なるほど……」


 アスティは落ちた仮面を拾い上げ、ポリポリと頭をかいた。


「まだ火が残っているな……。幸い、周囲に燃え広がるような建物もないから、このまま放っておいても大丈夫だろう」


 教会の様子を見ながらレインはそう言った。


「そうだ、あの司祭はどうなったんだ?」

「……さぁな、確認のためにも魔法で消火したいところだが、残念ながらマナ切れでな」

「あ! そういえば、さっき教会で人影を見たんだ」

「人影?」

「もしかしたら逃げ遅れてる人がいるかもしれない! 俺、ちょっと様子見てくるよ!」

「あ、おい……!」


 アスティはレインの静止も聞かず、教会へと走っていった。

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