表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/58

透明人間の人間投下事件(其ノ陸)

 健治のポケットでスマホが小刻みな揺れていた。健治はスマホを取り出して話し出した。


「……はい。はい、はい。はい?えっ、死体から大量の睡眠薬の投与がされていたって!!?」


 ルインはその言葉を聞いて察した。

 鑑識からの情報が回ってきたのだろう。晴秀の身体から大量の睡眠薬が投与されていた。

 パネルの周りのピースが一気に色付き始めた。


「そうか……。事件の真相が掴めてきた。」

「本当かっ!?それはそうと、確認のためにまたアパートに行く。着いてきてくれ!!」

「ああ、分かった。それと、祥子さん……」

「はい」

「お願いがある。容疑者友香と竜也の直近の買物履歴を調べてくれないか?」

「分かりました。今すぐ調べて来ます。」


 祥子は向かう場所を変えて独自で行動した。

 ルインは助手席で外の景色を眺める。木々が流れていく。もう何台かに追い越された。健治は「安全運転」を心掛けているのでこれ以上のスピードは期待出来ない。


「だがなぁ、お前、(こく)だなぁ!」

「何が酷なのだろうか。」

「わざわざ祥子一人に調べさせなくても……。そもそも、探偵の方が得意じゃねぇか?履歴調べるの」


 信号機はトマトの色を強調させる。

 そこから滴り落ちる果汁がピースに落ちた。ピースはその液体を弾き飛ばした。


「私が二人に増えることができたのなら私がやっていたかも知れない。」

「つまり、時間がないんだな」

「ああ、飯田が関わっている。長引くと面倒事が待っていそうだ。」


 赤は(おとろ)え青がしゃしゃり出る。

 健治は右足のアクセルを踏んだ。また、変わりゆく景色。ルインは肘を窓に当てながら景色を傍観(ぼうかん)していた。

 健治は横目でそれを見る。


「そりゃあそうだな。早く解くに越したことはない!」


 さらにスピードが増す。強くアクセルが踏まれた。それでも規則以内のスピードだった。

 外の景色はより自然を伝えるようになる。そして、車はアパートの目の前に来ると泊まった。

 その車の近くに来た一人の男。愛家だ。

 ルインと健治は愛家の目の前に立った。


「情報提供をお願いします。」

「ああ。結論からすると被害者の娘が怪しさを増したということだ。まず、被害者の身体から大量の睡眠薬が投与されていた。時刻は一時間前には投与されていたと考えられている。つまり、容疑者友香と竜也のいた時刻だ。」


 友香は睡眠薬の入れた水を晴秀の前に出す。

 健治はそのコップを持って口へと近づけた。

 机にコップを置く。遅れて襲ってくる睡魔。手に持ったコップが小刻みに揺れ机に何度も衝突し音を出す。

 バタンという音とともにコップは横向きになって円を描くように回っていた。


「それに、晴秀が死んだ後すぐに友香は保険金を得ている。自殺や身内の殺害ではお金は下りない。そこで、第三者の透明人間が殺したように見せかけた。と推測される。」

「ふむ。お金のために殺した。充分な殺害動機だ。」

「しかし、どのように殺したのか……だ。友香は犯行が行われる当時現場にはいなかった。その夫竜也は犯行するためには四階にいなければならないのに、四階とは程遠いアパート外にいた。犯行をしに行くのは不可能だ。」


 テレポートによる瞬間移動。それしか、四階へと行くことが出来ない。

 首を絞めて窓から落とした後、どうやってバレずに逃げたのか。四階から一階に向けて怪我(けが)なくして落ちることは不可能に近い。


「やはり、透明人間の殺し屋を(やと)ったのか。くそう、解けそうで全然解けない。」


 透明人間が扉をすり抜ける。

 眠って動かない晴秀に縄を引っ掛ける。寝ている晴秀は抵抗しなかった。そして、強く首を絞めて殺害した。

 窓から晴秀を落とす。

 ずらされた窓ガラスには透明人間の殺意の目だけが反射した。犯人は笑みを浮かべて窓に後ろ姿を映させた。

 ハンカチで指紋(しもん)を拭き取り、ポケットに入れる。

 犯人は障害物をすり抜けながら帰っていった。

 吹き荒れる風が透明な身体を消した。

 透明人間とは一体全体誰なのか……。


「そこでだ。飯田と交渉することにした。明日の夕頃だ。そこでの情報を伝える。明後日にまた会おう。」


 愛家は苦渋の表情をしていた。

 それを見たルインは爽やかに微笑んだ。


「もし、交渉までに真相が分かったらその交渉を無しにして貰えますか?」

「勿論だとも!!」


 愛家の返答がルインを高揚させた。


「ジグソーパズルはもう埋まる。」


 ルインの目の前に広がるパズル。空白となっている部分は残り(わず)か。

 ピースは段々と色を得ていく。

 そして、希望を示す色へと変わった。

 ルインの眼差しは希望の光を真っ直ぐに捉えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ