怪盗"M"からの予告状(終章)
章をつけることにしました。
臼田の高笑いは闇の中に消えていた。
パズルを破壊するその腕で扉を開け、部屋を出ていった。
*
「早速だけど、テンパズルしようぜ!」
「切り替え早すぎないですか!?」
ルイン探偵事務所内は青空の色に照らされていた。そこは、夏の砂浜のような雰囲気が漂う。
そこを無邪気に駆け出す健治と、戸惑う祥子。
「そうか?」
「そうですよ。さっきまで怪盗騒ぎに対処してたじゃないですか。まだ解決から数時間しか経ってませんよ。」
「ま、いいんだって!」
健治はすぐに椅子へと座る。
「ま、付き合ってやってくれ。」
そう言ってルインも椅子に座る。それを聞いて半ば呆れながら座る祥子。
「シーナ。今回は本気でやって大丈夫だ。」
「分かりました。」
シーナも椅子へと座る。
「おいおい、前の時のシーナは本気じゃなかったってか?」
「そうだ。私が最初に難題を解いて二人に圧をかけて欲しいと伝えた。後は、様子見をして欲しいと、ね。」
健治の空いた口が塞がらない。
「そうなのか。いや、実はシーナもあれ以上解けなかったんじゃないか?」
「そんな訳……」
ルインは砂時計を机の真ん中に置いた。
「シーナ。」
「はい、先生。」
「健治をこてんぱんにしていい。」
「分かりました。」
そんな行を聞いてケラケラと笑う健治。シーナは冷静に健治を見た。
「徹底的に、立ち上がれないように、こてんぱんにします。」
健治は「やってみろ!」と言わんばかりの態度を取っていた。
「それでは、始めよう。時間は三分間だ。後は……」
「そうだ。間違えたらマイナス一点ってことにしないか?」
「必要か?それ。」
「いや、何となく……だぜ!」
「……。まあ、健治の希望通り間違えたらマイナス点にする。」
健治を除いた三人の心の中で、答えを見つけてから口に出すから間違えることなんて滅多にない、と思っていた。
「それでは、適当に数字を一つ言っていこう。」
健治が身体を前に出した。
「じゃあ、俺は三を選ぶぜっ!!」
「シーナは好きな数字の九。」
「それでは、七にします。」
「私は前回と変わらず七だ。」
ルインは砂時計をひっくり返した。
砂がガラスの下へと滴り落ちていく。
「それでは、三、七、七、九で、十にするゲームを始める。」
頭の中で演算していく。
しかし、何度も何度も計算しても十にならない。
「先生……」
「なるほどな。」
シーナとルインの頭で行われていた動作が止まる。さらに、その様子を見ていた祥子は何か察したようで彼女もまた動作を止めた。
しかし、健治は察することが出来なかった。
健治は斜め横にいるシーナをちらりと見た。
「本気出すって言ってまだ出ないのか?やっぱり、分からないんだろ!?」
シーナは、表情が乏しいせいで外見上は分からないが、内面では少し苛立っているように見えた。
それを察してか祥子が呆れた心で聞いた。
「山内警部補は分かったんですか?」
「もうすぐ分かりそうな気がするんだ。」
健治は頭の機械をフル回転させた。
砂時計の砂が三分の一、下の階へと落ちた頃、健治に閃きの電撃が貫いた。
「分かったぜ!!」
ルインは少し戸惑うように健治を見た。
「お、おう。聞かせてくれ。」
自信げに答える健治。
「まず九ひく七で二になるだろ。」
「そうだな。」
「その二かける七で十四で、そこを三で引いて……」
「それだと十一だな。」
そこで我に返る健治。
「しまった!間違えた!!」
「健治……墓穴を掘ったな。健治の加えたルールでマイナス一点だ。」
「しまったぁ。だが、まだ取り返せる!!」
そこへシーナが水を差す。
「それは無理。」
「何故だ?」
「この問題の解答は零通り……だから」
ルインがクスクスと笑い始めた。
「今回の勝負は私、祥子、シーナが同順位で健治が一点失って最下位だ。やはり、健治だけ最下位だったか。」
健治は頭を描き始めた。
「くっそー、また負けたぁ!!」
そんな様子を見て心底笑う三人。
ルインは温かい陽射しが射し込む窓辺へと歩いた。
眩い光が数字へと化けていく。
その数字を自らの近くを舞うように操った。すぐに、数字はひらりと舞った。桜のように舞った。数字が舞い散るその下でルインは優しく微笑んでいた。
~怪盗"M"からの予告状~end
其ノ壱と終章がコメディ風で気軽に読める気がします。
次回は事件ではなく過去回です。
事件にするなら0.5の事件。一つの事件とは見なしてません。




