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学校   その6

「それでは、今日はここまでにしましょう――」


 授業が終わるとシセ先生は少し急いで教室を出る。恐らく魔力値の事を知らせに行くのだろう。

 ハナたちが受けた最初の授業は文字の基本の授業だった。基礎の基礎だ。

 普通は何かに書いて練習するものだが、ここの生徒が使えるのは魔力を使って書く魔道具しかない。それを使うことが決まりなのだからハナには書いて覚えるという選択肢はないのだが、それでもハナは困らない。

 一度覚えたものならば忘れても魔法で思い出すことができるからだ。記憶を回復させることで、いくらでも思い出すことができる。もちろん魔法での記憶力も向上でき、文字はすぐに覚えることができた。


「ねえみんな、授業始まっちゃったからいつもやってた訓練はこの後にやるんでいいんだよね?」

「ええ、そうね。それでいいわ」


 答えるのはレーカ。現時点でのボス。


「それで気になってたんだけど、午後にお祈りをいつもしてたけどあれって何の意味があるの? もう教えてもらえるんだよね?」

「あれは神様に祈ることで加護のレベルを上げてるのよ」

「加護ってどんなもの? ぼくにもある?」

「ハナは私達と同じ加護は持ってないわね。髪が黒いもの。それに魔力が違うとしても、同じ神様の加護が違うなんてことはないと思うわ」

「ふーん。みんな白いのはその加護の影響なんだー」


「加護の効果については私が説明しますね。私たちが持っている加護は回復魔法を使う時に魔力消費を抑えるものです。この国の中だけでしか効果がありません。それでもレベル1で魔力消費が100分の1になるんですから非常に効果の高いものだと言えます。確認された最も高いレベルは4で魔力消費が400分の1になったそうです。レベルに上限があるのかどうか、わたしたちも知りません」


 シノンの説明によってハナは皆と同じ加護を持っていないことを気にする必要がなくなった。

 この国でしか使えないものでは意味がなく、平和すぎてハナの膨大な魔力の1%すらも使う機会がない状態だからだ。

 魔道具にもハナの魔力が使えず、魔力の余裕がありすぎる状態だ。

 だからハナの『魂側』にどんどん貯めている。貯めすぎている。


「ふーん。魔力消費抑えるだけならぼくには必要なさそうかな。でも、ぼくも祈ってたらみんなと同じ加護を手に入れて、髪が白くなるのかな?」

「加護は生まれてきた時から持っているもので、後から手に入れることは不可能よ」

「ならよかった」


 髪が真っ白けになることは避けられたと思い安堵する。たとえ髪の毛が白くなるのだとしても、それが嫌だからという理由で神に祈らないという罰当たりなことをしないのがハナだ。


「みんなが持っていない別の神様の加護も効果は似たようなもの?」

「効果は色々あるみたいね。力が強くなったり、早く動けたり。髪の色が変わるのは私達の加護だけよ」

「ふーん……そういえば、みんなが祈ってる時にすごく少ないけど魔力が上の方に上がってるの見てたけど、それってレベル上げに関係ある? 同じ部屋の2人の魔力がねじれるようにして上がっていってたんだけど」

「え!? そうなの? 皆さん気づきました?」

「いえ、私はわかりませんでした」

「わたしも気づきませんでした」

「わたしも」


 魔力は普通見ようとしなければ見ることはできない。その見えないものがさらに見えないほど細いものになっているなのだから気づけるはずもない。体のどこかにすごく小さなほこりがついていることに気づくのと同等の難しさだ。


「もしかして、レベルが簡単に上がるようになったりして……」



 ――ということで皆で検証が始まった。

 レベルの確認には同じ魔法での魔力消費量を比較する方法を使うことになった。鑑定紙がすぐには用意できないためだ。

 もちろん消費量を比較することは簡単ではない。

 魔力が少なければ全体量からどれほど減ったのかわかるが、ここに居るのは魔力が多くて加護によって消費が少なくなっている人ばかり。

 瀕死の人を回復させたりしない限り比べるのは難しい。


 しかしハナが教えた魔力操作ができればそれが可能になる。小分けの魔力を使って魔法を行使すれば使用量が比較できる。

 例えば指先に一定の魔力を集め、魔力の使用を指先に限定して魔法の消費量を量り、後で同じ量の魔力を指先に集めて同じ魔法を使えば消費量を比べることでレベルの上げ下げがわかる。

 指先に集めた魔力の圧縮率を通常に戻して行えばより分かりやすくもなる。


 後はどこで行うかだ。普段の場所は礼拝室、校舎の中庭に植えられている『アーの樹』の周り、浴場の3か所だ。

 だが今回はこの教室で祈ることにした。祈る場所や同室の者と祈る行為はより多くの魔力を送るために必要だと思われるが、自分で意図的に魔力を送れるようになればそれらの意味はない。


「じゃあ、そういう訳で試してみよう」

「ではみなさん、自分に浄化魔法を行って今の必要魔力を量りましょう」


 そうして皆は【浄化】と唱え、きらきらぴかぴかに。

 それが終われば魔力を送る番だ。


「じゃあ、レーカから祈ってみて。みんなは魔力を見えるように集中して様子を見てて」

「では皆さん祈りますね……。ん、本当に何かあるわね。これに魔力を流せば……」


 レーカが祈ることで生まれた蜘蛛の糸よりも細い魔力の道に沿って大量の魔力が流されていく。


「わあすごーい。魔力が上の方に流れて消えていってる!」


 レーカから流れ出た魔力は天井付近で途切れていた。恐らく別のどこかの入り口がそこにあるのだろう。


「魔力を流しすぎて1日の回復量よりも多くならないように気を付けてね」


 ハナの言葉を受けてレーカが余裕をもって魔力を流すのをやめ、レベル確認を行う。


「では、やってみます。【浄化】……え。みなさん、落ち着いて聞いてください。10分の1ほどでしたわ」

「え、レーカ様ほんとなのですか!?」

「そうよ、そうなのよ! 卒業までにレベル3以上になっていたらいいって話だったのに、もうそれを軽く飛び越えちゃったわよ!」


 ハナ以外にはなるべく丁寧に話すレーカもどんどん興奮していき、言葉にまで気が回らない。あまりにも簡単にできてしまったレベルアップはそれほどの事なのだ。



 この後、残りの3人も同じように魔力を天に流すことができ、すぐに加護のレベルを上げることができた。

 これでまた一つ、歴史が大きく動いたのだった――

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