学校 その5
1か月以上が経ち、5月1日。
毎日毎日、基本的に同じことの繰り返し。
それでも確実に全員の魔力は上昇していた。その成果を確認をする日が今日。
レーカ達たちは今日の結果を待って、上級生たちに訓練の話をすることにしていた。
このことは自分たちだけの秘密にし、学校側に知らせる気はない――
ハナたちはいつも通り教室で先生を待つ。
教室のドアを開けて入って来たシセ先生の手にはついに出来上がった制服があった。
待ちに待っていたものがついに届いたのだ。
「ハナさんお待たせいたしました。制服が用意できましたので、これに着替えてください」
「ありがとう、シセ先生」
ハナは制服を受け取るとその場で今着ている服を脱いで着替え始める。
新しい制服は皆とは違う物だった。
皆の制服はスカートが足首辺りまである半袖ワンピースだが、ハナの上着はワンピース型だが裾は膝上までしかない。袖はその分7分丈ほどまで伸びている。制服はワンピースドレスというルール内で、できるだけ上着に寄せたチュニックだ。
そして、長ズボン。
上下とも皆とは違ってシンプルな生地そのまま。皆のような草花の模様などの刺繍は施されていない。
ズボンを止めるベルトには前側に拳大で琥珀色の宝石が付いているが、その宝石は上着で隠されるために外から見えることはない。
「こんな感じで大丈夫かな?」
鏡もないので、ハナは自分がどのように見えるのかわからない。と言う訳で、とりあえず皆に聞いてみることにした。
「うん、まあいいんじゃない」
レーカは肯定的。
「ハナなら何でも似合うと思うよ」
ルーは何でもいい派。
他の2人も肯定的ではあった。
カッコいいという物ではないが、ここで着るものと考えたらこんなものだろうとハナは思った。
皆と同じまるで天使か妖精かと思ってしまうような可愛いワンピースじゃないだけマシだ。それに最初に聞いた時はワンピースドレスだという話をしていたので不安にもなっていた。
「ハナさんも着替えたことですし、それでは皆さんの月初めの魔力鑑定を始めたいと思います」
毎月初めは魔力鑑定。それぞれの成長を確かめる事ができる。
神の加護がもし上がっていれば何か特別なことをしてないかの確認を行い、よりよい方法が見つかればそれが学校の決まりになることもある。
鑑定紙が一人ずつ順番に配られ、配られた者からすぐに紙に手を置き鑑定を始める。
鑑定し終わった紙を見た少女たちの顔には笑みが満ちている。
しかし、ハナは無表情。ハナは前回と全く同じ。でも、気にしていない。そういうものだから。
「まあ、まずまずの結果ね」
まずまずと言いつつレーカは口元が緩み切っている。
「ええ、まずまずですね」
シノンも喜びが隠せていない。
「やったー」
「うん、わたしも良かったよー」
ルーとケイトは素直に喜んでいる。
「では私も確認いたしますね。……まあー!?」
シセ先生は驚きのあまりとても高い声を上げてしまった。
それも仕方がない。皆の魔力は前回と比べ2、3割の上昇が見られるのだ。既にこの学校における最高値を軽く超えてしまっている。
それは今まで考えられていた上限値を超えるものである。
上限値は身長や体重によって変わるものだが、レーカとシノンは確実に超えている。ルートケイトもわずかだが超えていると思われる。これらが魔力圧縮と訓練の成果である。
「レーカ様。おめでとうございます。学校始まって以来の最高の魔力値です。他の皆さんもすばらしいですね。何か特別な事をなさっているのでしょうか?」
「ええ、どうしてなんでしょう」
「不思議ですね」
レーカとシノンは華麗に受け流す――ハナのことを話さないために。
もちろんレーカの不思議という言葉も嘘ではない。回復術師は嘘つかない。
「そ、そうですか。わかりました。これからの様子を見ていくことにいたしましょう。もし何かわかることがあればお知らせください。では、今日からはハナさんに常識を学んでもらいます。みなさんも同じ授業を受けてもらわなければならないことをご理解ください」
こうしてこれから毎日繰り返される午前中の授業が始まりを告げた――




