学校 その4
3月28日。
ハナは今日もキスでおはよう、お食事美味しいな。そして、みんなで校舎へ。
今日は教室でシセ先生がハナの体の大きさを測っていく。
一定間隔に印が入った紐で身長やら、胸囲やらを測っては紙に記入する。
今さら測っているということは制服はまだまだできないということだ。ハナのやる気少しダウン。
「先生、制服はどんな物ですか?」
「皆さんと同じですよ」
同じということは真っ白ワンピース。非常に女の子っぽい。
「えー、男の制服もアレですか。ぼくはズボンのほうがいいんですけど」
ハナも元々は普通の日本の男の子だ。スカートは好みじゃない。
こっちの世界でも男は普通スカートをはかない。
「え?」
爆弾発言にシセ先生の顔が固まる。
「え?」
ハナも首を傾げ、何故驚かれたのかという顔をする。
自分の発言に国を揺るがす事実が含まれているなんてわかるわけもない。
「ハナさんは……男性なのですか?」
「そうですよ。他言は控えてください」
すかさず答えたのはいつも以上に目力の強いレーカだった。すさまじい眼力で有無を言わせない。
シセ先生は何かを察したのか深くうなずいた。
「わかりました。制服を作るために報告しないわけにはいきませんが、それ以上は口外しないよういたします」
「お願いね。今は知られたくないの」
「はい。では、みなさん。いつも通り時間まで自習をしていてください」
そう言い残してシセ先生は教室を後にした。かなり急いで。
「ねえ、さっきのってどういう意味?」
ハナが尋ねても、誰もいつも通り答えてはくれない。
「ぼくってそんなに男らしくないのかな? 普通に男の子って感じするよね?」
ハナはとりあえず聞いても答えてくれそうな質問をしてみるが、レーカは微笑むだけ。
「ね?」
他の3人も肯定なし。否定もなし。生暖かい笑顔がそこにはある。
「はあ~、じゃあ、みんな魔力の訓練しようよ。訓練」
しょうがなく訓練に話題を変える。
皆の魔力が増えていけばハナの立場もどんどん上がるはず。
今は性別なんて関係ないかわいいペット扱いでも、そのうち超面白かっこいい美少年扱いに変わるはずだ。冒険だってしまくりだ。
そんなことを考えながら、今日も皆で魔力の圧縮と体内での移動を繰り返す。
「魔力を右手、左手、右手、左手に順番に動かして。次は足ー」
基本が大事。これが基本かどうかは誰も知らないが、ハナが基本だと決めた。勝手に決めた。
「ほら、ちゃんとできてるでしょ」
「わたしも問題ありません」
ルーとケイトは普通にできる。
「私達のほうが上手いわよね」
「私には違いがわかりませんよ。見えないんですから」
レーカとシノンはルーたちよりも上だ。魔力も魔力操作も。
それでも皆等しく魔力は見えていない。
魔力が見えるようになれば、ハナが居なくても自分たちだけで確認し合うこともできる。
「あ、じゃあ魔力が見えるようになったら? ぼくの場合は魔力を見たいって思ったら見えるようになったよ」
「何言ってるんです。そんなことで見えるはずが……、ありましたね」
「ほんとだー、なんか光って見える!」
ハナの気軽な一言で皆は魔力を視認することができるようになった。
彼女たちは魔力に関する能力がこの国のトップの実力者たちなのだ。やれるのだと認識さえできれば魔力視ぐらいは朝飯前の前の前ぐらい簡単なのだ。
(うん、こんなに簡単にできるなら何でやってないんだろう?)
ハナは疑問に思ったが、今は細かいことは気にしない。できることは深く考えない。
「ハナもこうしてみるとほんとに魔力あるわね」
「ぼくの魔力も普通に見えるんだ」
「見えますわよ。私たちとは何か違うような感じもしますが」
ハナの体内魔力はより圧縮されている上に、体内の魔力空間が拡張されている。外から1mmでも中では10mを軽く超えている。だから見た目通りの量ではもちろんない。
「じゃあ、これ見える?」
ハナは手の平を見せ、『〇』を手の平に魔力で描く。
「丸だね!」
ルーが一番先に答え、他の皆も軽く頷いている。
見え方に問題なし。
「皆できるようになったし、いつも通りの魔力の訓練に戻ろう」
そうしていつも通り訓練を行う。
そんな中、ハナは皆が見た時にすごいと思えるような魔力の模様を自分の中に作り出していく。
魔力を見るようになった皆はその綺麗な動く模様に見とれている。
ハナ劇場が終わってから皆も真似をしようとしてみるが、他人から綺麗に見えるように体内の魔力を動かすなんてことすぐにできるわけもない。こればかりは練習量がものを言う。
皆のあれやこれやとがんばる様子を眺めていたハナはこういうのも楽しいなとかなり満足げだ。
ハナは学校生活を着々とより楽しいものへと変えていく。
だがその裏で、ある人たちの不幸のカウントダウンが刻々と進んでいた――




