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学校   その3.5

 神の世界で変化が起きていた。

 今まで見逃されていた神様の呟きを偶然・・精霊が聞いて実行するという平和の国で行われてきたことが匿名の情報により広く認知されたことで問題視され、通信規制が行われることとなったのだ。

 今回の規制の対象は神と精霊間の音声通信だ。

 これにより平和の国で神の声を聞き届けてきた水の上位精霊スイコに神の声が届くことがなくなった。

 今回の規制で影響を受けるのは精霊と繋がっていた平和の国の神デンリーと精霊スイコのみで、他の国への影響はない。


 しかし、タイミングが非常に悪かった。

 最後の呟き『ハナという少年はもう守らなくていい』という言葉が別の意味として受け取られていたのだ。

 今まで神に名前を呼ばれた者は存在せず、ハナが初めてだったのだ。そのためハナを神に選ばれた特別な者であると誤認し、もう守らなくていいという言葉は守る必要もないほど強いという意味だと受け取った。


 この国の回復術師の適正は一定以上の魔力と回復魔法が使えるかどうかで判断されている。デンリーの加護は最低レベルであっても平和の国の国内に限り、回復魔法に必要な魔力が100分の1になる。よってデンリーの加護持ちは魔力量を100倍にして判断されるが、ハナは加護を持たずしてその基準量を遥かに凌駕りょうがしていた。

 回復術師の選定には魔力の種類の違いは考慮されていない。元々精霊と人間は魔力が異なっているため、魔力の違いには寛容なのだ。


 この突出した魔力量に関してだけでもハナが強いということに信ぴょう性は生まれてしまう。

 今は魔族との戦いに向けて準備をしている段階であり、大切な中心戦力を1つ失ったタイミングでもあったため、ハナがその後釜であると考えるのには十分であった。


 こうして上位精霊スイコ下の教会と精霊は、ハナに関することは神の意志の下にスルーすることに決めた。

 どんな障害もより強くなるための糧になると考え、ただ見守ることにしたのだ。戦いが始まるまで時間はあまり残されていないのだから。


 すでに神の通信は遮断され、それを訂正できる者はもういない。

 この国の行く末は先の全く見えない霧の中に突入したのだった。


 


 3月27日。

 前回に引き続き会議室に学校の校長たちが集まっていた。

 学校に入ることのできない回復術師学校の校長カヌイはつながりの深い魔術師協会の建物の中で主に仕事をしており、ここもその一室だ。

 今日も進捗状況の確認だけでは終わらない。


「それで、上手くいったのだな」

「はい、何とか魔法付与前の制服を手に入れることができました。資金もギリギリ足りそうです。ただ、教会が全く協力しないのは想定外でしたが……」


 カヌイを除いた校長たちは新たに集められた寄付金の額を聞き安堵していた。

 制服についても無事譲ってもらえ、後は魔法付与すればいいだけだ――となればどれだけよかっただろうか。


「実はな、件の村人だが、魔力が全くないことが、鑑定紙でわかった。さらに加護も、持っていないそうだ……」


 カヌイはぽつりぽつり言葉を紡ぐ。顔色はひどい状態だ。いくら回復してもすぐに胃に穴が開きそうなのだ。


「ば、ばかな!? 何故そんな奴が回復術師学校に⁉」

「おい、言葉に気を付けんか!」


 上級魔術師学校のヌテは悪態をつき、魔術師学校のケノがそれをすぐに諫める。


「回復術師の制服は付与された魔法で守らないといけないんでしょう? 魔法付与しても魔力を本人から流さないと全然持たないでしょう。どうしますか?」


 商業学校のガラマは対策を考え、初級学校のチャイがおろおろしながら聞いている。


「金がかなり掛かるが、方法があるだろ……」

「ま、まさか。正気か⁉」

「ああ、魔石を使うしかなかろう」


 カヌイの一言は皆の顔を青ざめさせるのには十分だった。

 その方法とは魔石に魔力を貯めるという方法である。制服に魔石を付けることで単純に制服の制作費が倍になる。

 だが、不可能ではない方法があるのだから、やらなければ財産没収。逃げ道はない。


「で、魔石はどうするんだ? それだけの量の魔力を貯めることができ、その上身につけれるようなものだと限られているだろ?」

「どうにかして手に入れるしかあるまい」

「いや、1つだけのとっておきが魔術師協会にある。剛龍の瞳の魔石が」

「そうか……、そうだな。その手があったか。回復術師様に必要と言えば拒否もできないだろうし、ここなら支払いを先に延ばすことも問題ないか」

「支払いは学校として長い期間をかけて無理せず払うのですね」


 話は纏まり、制服には魔術師協会に保管されている国宝級の魔石を使うこととなった。

 魔術師協会のシンボルとして目立つところに魔石のレプリカまでも展示されている象徴の品を。

 代金は無利子無期限の学校払いという形で。自分たちが辞めた後に誰かが払うだろうと。


「で、魔法の付与は誰がやるんだ?」

「皆でやるしかないでしょう。1人ですぐにできるようなことでもないですし」

「私もそれでいい」

「おお、みんなやってくれるか。それなら早く終わりそうだな」


 他に選択肢がないのですぐに決まる。だらだら作っている余裕はないのだ。


「では、念のため服の大きさが問題ないのか確認してから魔法の付与を開始しましょう」



 今日の会議は未来の学校の支払いが残っただけでまだ平穏に終わったと言えるだろう。

 だが、彼らはまだ大切なことを知らない。

 ハナが何者なのか。普通に話をするだけでも知ることができていたであろうそのことを。


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