⑨心配症のあたし
【乗車から10秒】
ジェットコースターがそれほど好きなわけではなかったのだが、もしも今ジェットコースターに乗らなかったら友達とのこの先の関係がどうなってしまうのか、かなり心配なのでとりあえず乗った。
【乗車から30秒】
肩からお腹にかけて押さえつけてくれている安全バーを信頼してガッチリと両手で掴んでいたのだが、なぜかその安全バーが数センチくらいグラグラと上下に動いてしまい、もう心配で仕方なくなった。
【乗車から50秒】
降下を始めてまだまだ最高スピードには達していなかったが、安全バーが外れてしまうんではないかという心配や、もし外れてしまった場合の体力の心配などなど、様々な心配で想像は持ちきりだった。
【乗車から70秒】
あんなにジェットコースターに乗りたい乗りたいと言っていた隣の友達が、ギュッとしっかりと目を瞑っていて、しかも一言も喋らず無言を貫いていて、いったい何があったのかという心配も、他の様々な心配へ仲間入りした。
【乗車から90秒】
写真撮影ゾーンが少し前にあって、それで目を開けようと必死に頑張ったり、腕も精一杯上に伸ばしたつもりだったのだが、白目でオバケのような佇まいになっていたらどうしようという心配で今、脳が完全に賑わいきっている。
【乗車から120秒】
さっきの一回転では、ポケットから出しておくことをすっかり忘れていた財布や携帯などの所持品が下に落ちてしまわないか心配になったり、一回転で安全バーが外れてしまわないかもずっと心配で、安全バーを全力で抱き締めていた。
【乗車から150秒】
ジェットコースターの骨組みみたいなやつが顔のすぐ近くを通りすぎたり、走行する音が脱線しそうなほど大きかったり、色々な心配がドスンドスンと積み重なってきたのだが、終点に到着してもなかなか立ち上がれない友達のことが何よりも一番心配で心配で仕方なかった。