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幻界創世記  作者: 冬泉
第一章「出会いは唐突に」
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SCENE-04◆「予想外な反応」

屋上で葵を見つけた翔は、謝ろうとするが・・・

■UNO学院/学部棟/屋上


「あれ? 誰かいるんだ」


 翌日の昼休み。教室に食後の惰眠を貪る彰を残し、考えが纏められそうな静かな場所を求めて屋上に上がってきた翔は、人影を見つけて驚いた。


「え? あれは・・・」


 屋上に佇んでいたのは、神和姫葵だった。葵の姿を見て一瞬躊躇した翔だが、意を決して葵のところに歩いていく。


「あの・・・」


 葵は、黙って遠くを眺めている。翔は、言うべき言葉を慎重に探した。


「神和姫先輩、1年の三奈瀬です。この間は、唐突に不躾なお願いをしてしまって、本当にすみませんでした」

「・・・気にしなくてもいいわ」

「えっ?」


 葵は翔に向き直ると、フェンスに背を預けた。


「この間の話。あなたたちに、問題があったわけではないのだから」

「でも、見ず知らずの人に話すのに、少々強引だったかと・・・」

「都合が悪ければ、その場でそう言っているわ。その人の都合は、当人に聞いて見なければわからないでしょう?」


 翔は驚いたように葵を見た。知的で、冷静な表情だった。変わってはいるけれど、合理的な考え方に、翔は共感を覚えた。


「それはそうですが・・・」

「おかしい?」


 問い返されて、一瞬言葉に詰まる。


「い、え・・・そうは思いません」

「そう・・・。なら、いいわ」


 それっきり、会話が途絶えた。海からの微風が、葵の長い髪を解きほぐす。どれくらいそうしていただろうか。


「・・・わたし、行くから」


 聞こえた時には、すでに葵は歩き出していた。とっさに声を掛けられずに、翔は黙ってその後姿を見送る。と、葵が途中で立ち止まると振り返った。


「三奈瀬くん・・・」

「は、はい!」

「最後のユニコーン、どう思った?」


 唐突な質問に、翔は驚いた。


「そうですね。良い話ですが、リーア王子とアマルシア姫の心の交流が、離別という形で終わったことが、とても不満でした」

「・・・そう・・・」

「種族を超えても、ことわりを超えても、理解しあえる関係があってもいい・・・そう思えたんです」

「でも、現実には二人の道は分かれた。再び、お互いが出会うこともない・・・」

「はい。だから彰と二人で話して、違う結末を考えてみたんです。リーア王子とアマルシア姫、二人の育んだ心の交流が、何かを生み出せるんじゃないかと思って」


“心の交流・・・何かを生み出す流れ・・・。それを押し留めるのは・・・不自然なの?”


 目の前の男子生徒を見ながら、葵は思った。


“真剣な目・・・”


「あの・・・。神和姫先輩は、どのように思われますか?」

「え?」


 翔は、自分の前に立つ小柄な上級生をじっと見つめた。昨日の、亜里沙の警句が思い出されたが、葵の意見を聞いてみたいという衝動を、翔は押さえることが出来なかった。


「いえ・・・最後のユニコーンの結末です。神和姫先輩は、あれで良いと思われますか?」

「・・・あの小説は、作者の創作物。だから、その結末も作者の自由。でも・・・」


 葵が顔を上げた。その深い、褐色の瞳が翔を射る。動悸が早くなるのを感じながら、翔は葵の次の言葉を待った。


「・・・定められた結末を受身で辿るだけというのは、好きじゃない」

「しかし、小説ってそういうものですよね?」

「小説は、ね・・・」

「それって・・・? では、それ以外に表現する方法ってあるっていうんですか?」


 思わず声に熱がこもる。


「えぇ。あるわ」


 あるかなしかの微笑が、葵の口元に浮かぶ。


「本当ですか? それは、なんなのですか?」

「知りたい?」

「はい、是非!」

「そう・・・わかったわ。じゃあ、放課後。またここで」

「えっ?」


 問い返した時、すでに葵は校舎内に消えるところだった。翔は二、三度あたまを振って意識をはっきりさせた。どうにも、今の話に実感が沸かなかった。


☆☆ SCENE#5に続く ☆☆

 いや〜どうなるかと思いましたが、翔は葵になんとか謝れましたね。誠意を見せるっていうのは大切ですが、相手に伝わって、相手が受け止めてくれるかどうかは相手次第です。「謝ったのに、なんで許してくれないんだよ!」とか逆ギレするのは、本末転倒な話ですね。まぁ、相手のことを考えて、低姿勢で行きましょう(笑)。

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