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幻界創世記  作者: 冬泉
第五章「聖剣の影」
48/50

SCENE#4◆「惑いと葛藤」

■この世の彼方の島/神殿


「判りますか、ショウ?」

「・・・はい。まだ、微かにですが・・・」


 知恵の女神の神殿の奥津城おくつきで、ショウは知恵の女神直々に、魔導の修練を受けていた。何度教えて貰っても、初級を越える魔導の実現が出来ない自分に、翔ははたして自分に魔導の才など有るのだろうか、と溜息を付いた。


「ショウ、魔導は才ではありませんよ」


 落ち込み気味の翔に、女神は変わらぬ優しい言葉を掛ける。


「魔導は、意志の力こそが大事です。焦らず、自分がそれを成そうという、自分の想いを感じて下さい」

「はい・・・」


 語尾が濁る辺り、翔にして、まだ魔導への理解が判然としていないことが見え隠れしている。


“焦っても仕方が無いけど・・・時間がどれ位あるかも判らないし。そんなに悠長に構えていられないんだけどなぁ”


 心の中でぼやく翔。如何せん、魔導習得は遅々として進まない。


「今日はここまでに致しましょう」


 暫し、試行錯誤の時間が過ぎた後。知恵の女神が翔に言った。


「女神様、まだやれますが?」

「いいえ、直接の修行はこれまでと致しましょう。ショウはこの後、“聖泉の座”に座って、心を無にする修行を行って貰います」

「心を無に?」

「はい。ショウには、自分の心を力を自分で明確に感じる必要があります。“聖泉の座”は、その修行に最適です」

「その“聖泉の座”とは何処にあるのですか?」

「今、見せましょう」


 知恵の女神は、円形の泉の中心を指し示した。するとそこに、泉の中から円形の台が浮かび上がって来るではないか。完全に泉の水面上に浮かび上がった台座は、不思議な事に全く塗れていなかった。


「これが・・・」

「えぇ。この座の上に座って、自分の心を見つめて下さい。何かを感じるまで・・・」

「座り続けます。何かを感じることが出来るまで。」


 何処か自分に言い聞かせる様に、翔は言った。


               ☆  ☆  ☆


「どうです?」

「どう、とは?」


 小首を傾げて、知恵の女神はリュオンに問う。


「嫌ですね、お判りでしょうが」

「口にせねば、応えられぬ――それがことわりだと思うのですが?」

「はぁ、女神様は相変わらずですね」


 苦笑いを浮かべると、リュオンは肩を竦めた。


「ショウの事です。アオイには本人に心配を掛けない為に、ショウが順調だとは言いましたがね」

「アオイの方は、順調なのでしょう?」

「そこそこには。しかし、あとどれ位時間があるかが計算できない以上、今の実技の上達速度では不十分ですね」


 残念ながら、と珍しく真面目な表情のリュオンに、宝石の様な碧の双眸を細めて、知恵の女神が返す。


「“ここ”に居る事が出来なくなってからでは遅すぎますね」

「然り――です。しかしながら、能動的に対応する事を考えれば、“ここ”が最高位に近い次元に有る事が幸いします」

「修練を積む時が在り、影に邪魔をされない場所――」

「無論、どの場所が最適か、女神様はご存じですよね?」


 知恵の女神は、リュオンの問いに対して、何処までも透明な笑みを浮かべた。


「ははは、愚問でした。では、早速二人を連れて行くとしましょうか――緑の魔境にね」


☆☆ SCENE#5に続く ☆☆



 お待たせしました、「幻界創世記」の続きです。少しずつですが、剣技と魔導の腕を上げる葵と翔。しかし、彼らには十分な時間が残されていません。そんな中で、リュオンが打った手は? 次回、ご期待下さい。

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