STAGE04◆「光と、舞と」-SCENE#10
神殿の奥で、翔と葵がみたものは・・・
■南の島?/神殿?
アーチウェイの向こう側は、広い空間となっていた。正面には大きな円形の泉があり、その蒼い水が光を放っている。
泉の奥は、何段もの滝となっていた。先程耳にした水音は、この滝の流れる音だった。
その泉の辺で待っていたのは、見知った人物だった。
「よう。遅かったな。」
「リュオン!」
「リュオンさん!」
驚く葵と翔に、その金の戦士はにやりと笑った。
「ま、無事にたどり着けてほっとしたぜ。何分、ショウとアオイが来るのを手伝うのは“ルール違反”になるからな。」
「何ですか、その“ルール違反”って?」
「字面通り、ルールに違反するってことだろ?」
おいおい、子供でも判るぜ、と呆れたようにリュオンは肩を竦めた。
「そう言うことを聞いているのではないわ。」
「葵さん・・・」
眉を寄せた葵は、リュオンに鋭い眼差しを投げ掛けた。
「聞きたいのは、“誰の”、“何の”、“何時の”理に違反しているのか、ということよ。」
「それも話せない、と言ったら?」
「・・・帰りましょうか、翔くん。」
それならば結構です、とばかりに昂然と胸を張り、翔の手を取ると葵は踵を返す。
やれやれ、と肩を竦めてリュオンは苦笑した。
「相変わらず短気だな、アオイは。判ったよ、ネタ晴らしをしよう。」
出番ですのでお願いします、とリュオンが宣言するように言うと、唐突に目映いばかりの光が、上方より差し込んできた。
それは恰も光で出来た柱のように、円形の泉を取り囲む。
唐突に、泉の中央が盛り上がると、凄まじい勢いの噴水が巻き起こった。
「な、何ですか!」
葵の手を無意識に握りしめて、翔は叫んでいた。
葵も目を見開いて、驚きの表情を浮かべている。
「お出ましだ。」
短くリュオンが言うと同時に、噴水が花開くように七つに分かれると、その勢いが弱まった。
そして、その噴水の中央に、一人の女性が静かに立っていた。長い銀の髪は足下に広がり、その鮮やかな碧の双眸には、人知を越えた知恵の輝きが宿る。完全な造形の完全な美――その容姿は、明らかに定命の者とは異なっていた。
「ようこそ、神和姫葵。
ようこそ、三奈瀬翔。
ようこそ、この世の彼方の島へ。」
天井の旋律のようなその声は、翔と葵の心の琴線を揺らした。
「あなた方を待っていました。わたくしが、知恵の女神です」
☆☆ STAGE#4.5に続く ☆☆