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幻界創世記  作者: 冬泉
第四章「光と舞と」
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STAGE04◆「光と、舞と」-SCENE#4


リュオンの話に、葵と翔は何を思うのか・・・

■UNO学院/医療室→葵自宅


『FORTUNE(運命)』


 その言葉を聞いた時、私の心の奥底に何かが触れたかのようだった。

 躰を抱きしめて身を震わす私を見て、翔くんが心配そうに私の顔を覗き込む。


「葵さん、大丈夫ですか」

「・・・心配、ないわ」


 自分でも、素っ気ない言い方だと判っている。他意は無いのだけれども──翔の隣を歩くリュオンがくっくっく、と笑っている。疳に障る態度だ。


「何か?」

「なんでもないさ」


 そんなに思わせぶりに笑っておいて、何でも無い訳がないでしょうが──そんな言葉を飲み込む。これが性格なのだから、ムキになっても仕方がない。今はそれよりも気に掛かることがあった。


「それよりも──“神”というのは?」

「興味があるのか?」

「・・・質問で返すのは、不作法ではなくって?」

「おっと。こいつは失礼」


 仰々しく一礼する態度をあえて黙殺してあげると、リュオンは苦笑いして先を続けた。


「こっちの世界で、“神”と言う存在がどのように理解されているかは知らないが──俺が知っている“神”と言う存在は、“時のことわりを超越した者”のことをいう」

「時間?」

「そうだ。生きとし生ける者全てに共通する絶対的なことわり──それが“時”だ。俺の言う“神”とは、この“時の縛り”から逃れることが出来た全ての者を意味する」

「“全能の存在”という訳ではない?」


 私とリュオンの会話を黙って聞いていた翔くんがぽつりと言った。


「あくまで俺の世界での理解さ。普遍的に全てがそうだと思うなよ、ショウ」

「難しいですね」

「簡単に理解できるようだったら、世界は今頃“神”だらけになってるさ」


 そんな状況は願い下げだけどな、とリュオンは笑った。

 この世界がそうじゃなくて良かったですよ、と翔くんも相槌を打っている。

 何を二人でほのぼのとした雰囲気をつくっているのかしら。


「・・・それで?」


 片眉を僅かに上げて見せると、リュオンはごほんと一つ咳払いをして本筋に戻った。


「うむ。大概の“神”は、我々“定命の者”には無関心だ。だが、中には毛色の違ったのもいる。残念ながら、そういう“存在”からの干渉は、殆どの場合干渉を受ける側にとって、不幸な結果に終わっていると言えるな」

「一切関わり合いにならないほうが、余程賢明に思えますが?」

「俺もショウの意見に賛成なんだが、今回はそうも言ってられん。まぁ、心配するな。俺等が会おうと思っているのは、悪い相手じゃない」

「・・・心休まる説明だこと」


 辛辣に聞こえるように言ってあげたのに、リュオンには堪えていないようだった。軽く肩を竦めると、だからな、と話を続ける。


「悪い相手じゃないんだが、その代わり簡単に会うことができないのさ」

「何か、会う為の条件でもあるんですか?」

「勿論さ、ショウ。世の中には、“物事には釣り合う対価が必要とされる”って言うことわりが存在してる。それを無視し、気にしない輩もいるにはいるが、そう言った手合いはどこかでその対価を払わされている。それも、普通払うよりも遙かに割り増しでね」

「ルールを破った場合のペナルティってどこの世界にもあるんですね」

「そうさ。だから俺等としては、きちんとその対価を払って、“会う権利”を獲得しておく必要があるのさ」

「それは──どのような条件なの?」


 返ってくるだろう答えの内容を予期しながらも、私はその問いを発していた。


「判ってるんだろう?」


 だから・・・私に、何を期待しているのか知らないけれど──その思わせ振りな笑みは止めなさい。私の苛ただしげな視線もなんのその、リュオンは涼しい表情のままだった。


「はっきり言うとだな──俺たちをその“神”の元に導いてくれるのがてくれるのが、その剣だ。」


 やっぱり、予期した答えが返ってきた。何かを感じさせてくれる黄金の剣──袋に包まれて、手の中にあるそれを強く握りしめる。


あるじを得た今、その剣の力は解放されつつあるが、いまだ不安定だ。剣にその力を取り戻し、この状況を打破しなければ・・・」

「・・・私たちに、未来はない──そう言う事ね」


 リュオンの言葉尻を引き取ってあげる。

 選択の余地がないことは、あの“金杯”が出現した時から薄々感じていた。

 いや、“既に選択は為されていた”という言い方をした方が正しいと思う。本当の選択は、恐らく“あの時”に下されていたのだろうから。


「悪い。少し直接的に言い過ぎたか?」

「・・・気にしないで。その方が、迷いも消えるから」

「強いんだな。」

「凄いですね、葵さん」

「・・・」


 私はそんなに強くはない。覚悟が出来ている訳でもない。だから翔くん、そんなに感心した顔で私を見ないで。私は、あなたにそう思われるような立派な人間じゃないのだから。

 知らず知らずの内に、私は唇を噛んでいた。悪い癖だ。そんな私の頭を、リュオンがポンと軽く叩いた。


「あまり深刻に考えるなよ、アオイ。一人でやるって訳じゃないんだ。なぁ、ショウ?」

「勿論です! 葵さん、微力ながら僕のことも当てにしていて下さい!」

「・・・でも・・・」

「俺のことも当てにしてくれていいぜ。大体な、今回の事が解決しないと俺は帰れないんだ。ちゃっちゃと片付けるとしようぜ」


 悩んでる暇はないぜ、と後押ししてくれるリュオン。お役に立って見せます、と励ましてくれる翔くん。私がどんなに捻くれていようとも、二人がいることがとても嬉しいという、今のこの感情は本物だった・・・。


☆☆ SCENE#5に続く ☆☆

 前回が翔の視点からでしたので、今回は葵の視点から書いてみました。相変わらずのヘッポコ文章ですが、不出来な部分は度外視してお読み頂ければ幸いです。STAGE4も中盤に差し掛かっています。これから、更に急展開で状況が進みます。刮目してお待ち下さい。

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