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幻界創世記  作者: 冬泉
第三章「開かれた扉」
23/50

STAGE03◆「開かれた、扉」-SCENE#1


その幻想的な光景は、一体何を意味しているのだろうか・・・

■何処かの場所/“聖域”


『シャン、シャン』


 鈴の音が鳴った。薄衣を纏い、ベールで顔を覆った踊り子が六人。いつの間にか柱の影に現れると広間の中央に進み出る。どこからともなく流れてくるもの悲しいハープの調べに合わせて、軽やかに踊り出す。


『シャン、シャン』

『タン、タタン』


 手足に付けた鈴の音と、軽い靴音が交錯する。その間を縫って、高い澄んだソプラノの詩が聞こえてくる。


「・・・踊れ、踊れ 時を忘れて

 黄泉の踊りを、さぁ踊れ

 まこと現世うつせしがらみ

 想い その身に解き放ち

 黒き流れに 溺るるならば・・・」


 声のする方に、華奢な“黒の女王”の姿があった。滑る様に進み出ると・・・。


「皆様、“アルカナの舞”にようこそ。いにしえことわりに従い、定めの席へと御案内致しましょう」


 そう言うと、“黒の女王”は一人一人を石の椅子に導いていった。


「魔導卿、北天座へどうぞ」

「姫君、北天座へどうぞ」

「龍の盾様、北天座へどうぞ」

「大戦士様、北天座へどうぞ」

「吟遊詩人様、東天座へどうぞ」

「近衛騎士様、東天座へどうぞ」

「騎士総帥様、南天座へどうぞ」

「守護者様、遊星座へどうぞ」

「魔剣士様、西天座へどうぞ」


 最後に、“黒の女王”は“黒の王”の手を引いて西天座に導いた。


「さぁ、相方を御紹介致しましょう。歓迎して下さいませ」


 ふっと全体が暗くなった。そして、唐突に紅い光が広間の周囲に生じた。その光は次々と広間に滑り込んでくると、それぞれの石の椅子に停まった。激しく光ると、黒い姿の人影を生んだ。


「方々、紹介を。」


 黒の女王の言葉に、一人一人立ち上がると名乗りを上げる。


「黒の巫女。宜しくお見知りおきを」

「黒の剣聖・・・」

「黒の導師。よろしゅう」

「黒の使者です。またお逢いしましたね」

「黒の魔王・・・」

「黒のぉ、恐騎ぃ!」

「黒の聖女。お初にお目に掛かります」

「黒の衛士と申す」

「黒の楽人です」

「そして、わたくし。黒の女王はご存じですわね」


 一つ、空席が残った。


「まことに残念ですが、我らがあるじは所用でこの“舞”に来ることが出来ません。何れ、直々に皆様方に御挨拶に参ることでしょう。さぁ、まずは宴をお楽しみ下さい。」


 女王が手を振ると、黒い姿のサーバントが宙から生まれた。手に捧げた金の杯を一つ一つ、恭しく配って行く。


「詩を、踊りを」


 陽気な曲が流れ、舞姫達が優雅な踊りを披露する。


 吟遊詩人が星天球に投げた杯は、手を離れた瞬間に金の盾へと変化していた。近衛騎士の杯もまた、宙でその姿を変貌する。今や二十枚の金の盾が浮かぶ広間は、金色の輝きで淡く照らされていた。

 そんな中、黒の女王の澄んだ声が広間に響き渡る。上古の詩なのか、言葉を理解は出来ないものの、意味するところは不思議と全員に理解される。


「・・・そに輝くは“大地の精髄”、“大地の証”

 運命のことわり、我は畏敬を持ちて尊ばんとす

 光、尚も眩しく輝けれど彼方に遠く離れ

 近き隣人とて、その背に影の有するを知る

 時至れり、望みの扉よ開かれん

 総てこれ初見にあれど、人よ努々(ゆめゆめ)忘るるなかれ

 そは生まれし時に失われし記憶也・・・」


 金色に輝く盾は、一斉にその者の頭上へと浮かび上がった。

 星天球の中心に燃える緑の旭光が一段と輝くと、二十二本の光の剣となってその切っ先を四方に伸ばした。


「汝の行い、ここに現れよ!」


 緑炎の剣が、金色の盾に突き刺さった。そして、女王の呪言と共に、盾は剣の刺さった箇所から変化を始める。黒の陣営の盾が調和の中にて一様に変わる中、白の陣営の盾は己が矜持故か、各人各様に変わって行く。


「魔導卿には“魔術師”を」

「姫君には“女祭司”を」

「黒の女王には“女帝”を」

「大帝には“皇帝”を」

「龍の盾には“大祭司”を」

「黒の巫女には“恋人”を」

「大戦士には“戦車”を」

「吟遊詩人には“均衡”を」

「黒の導師には“隠者”を」

「黒の剣聖には“運命”を」

「近衛騎士には“意欲”を」

「黒の使者には“犠牲”を」

「黒の魔王には“死”を」

「騎士総帥には“芸術”を」

「黒の恐騎には“悪鬼”を」

「黒の聖女には“塔”を」

「守護者には“星”を」

「黒の衛士には“月”を」

「魔剣士には“永遠”を」

「黒の楽人には“道化”を」

「・・・かくて“舞”は始まらん

 在りしが如く、今も何時も現世に伝わらん

 子らよ、汝恐るるを知れ

 躰に記し、始源の定めを」


 詩が止んだ。今やその身に“影絵”を映し出した金色の盾が宙に輝いていた。


“・・・然り・・・然り・・・然り・・・”


 無言の声か。心に肯定が伝わると、盾と盾が緑光で結ばれる。


 “魔術師”と“塔”が。

 “女祭司”と“悪鬼”が。

 “女帝”と“芸術”が。

 “皇帝”と“死”が。

 “大祭司”と“犠牲”が。

 “戦車”と“道化”が。

 “均衡”は空位を。

 “隠者”は“永遠”を。

 “運命”は空位を。

 “意欲”は“月”を。


 総ての闇を“星”が照らし、総ての光を“恋人”が導く。


「・・・独星には一位を

 連星には二位を

 星座には整合を

 遊星には自由を

 ことわりには定めを

 運命には言葉を

 流るる時には 終焉の刻を・・・」


 盾の輝きが薄れてくる。それと共に、周囲の状況が朧気になって行く。


「・・・踊れ、宴に・・・さぁ踊れ・・・」


 女王の声が遠くなっていく。それと同時に、その光景が遠くなり、ぼやけていく・・・


☆☆ SCENE#2に続く ☆☆

 いきなりのシーンで始まりましたSTAGE3。何が何だか、判りませんよね。それもその筈──訳は、SCENE#2をお読みになれば判・・・ればいいなぁ(笑)。

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