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幻界創世記  作者: 冬泉
幕間1
22/50

STAGE2.5◆「悪意の、影」


葵がリフトホールで出会ったのは・・・

■UNO学院/学部棟/屋上→ルフトホール


 堅い靴音を響かせて、葵は階段を駆け下った。


“また・・・逃げてしまった・・・”


 心に後悔の念が渦を巻く。弱くて臆病な自分が、まだ何も克服できていない自分が──悲しいほど不甲斐なかった。

 零れ落ちてきた涙を拭うと、少し落ち着こうと足取りを緩める。リフトホールに付く頃には、大分冷静になっていた。


“もっと冷静にならないと。周りにも心配を掛けてしまう”


 思考に深く埋没していたのだろう──リフト・ホールで唐突に声を掛けられて、葵は吃驚した。


「これは、これは──」


 心に突き刺さるその冷徹な声を聞いて、葵は思わず躯を強ばらせた。

 今、何を於いても一番会いたくない相手。一遍の躊躇もなく、冷静に自分を弾劾したその相手が、葵に冷笑を向けていた。


「奇遇だな、神和姫葵さん」

「・・・」


“相手には、ならない。なっては、いけない”


 葵は努めて押し黙り、無反応でいた。


「黙りか。相変わらずだな。自分が不利な時は、黙秘を使って話さない」

「・・・」


 湧き上がる激情に、葵は自分の自制の枷が千切れそうになるのを覚えた。


――自信がない? 言うに事欠いて、何を根拠にそんなことを言うのだろうか!


 言い返せたら、どんなに気持ちが晴れるだろうか。だが、そんなことをしても相手を喜ばせるだけ。俯いて、床を見つめるしかないことがとても辛く、悲しかった。


「あっ・・・」


 顎に手をやられ、強制的に顔を上げさせられる。

 その手のぞっとする程の冷たさに、悲鳴を上げそうになるのを必死に噛み殺す。


「泣きもしないか。ふふ、気丈なものだな。もう少し、可愛げがあれば、別の手立てを考えるに吝かでもないのだが・・・」

「琉央っ!」


 蒼白な表情で今にも崩れ落ちそうな葵を、疾風の様に走ってきた人物が間髪抱き留めた。

 冷笑する琉央に鋭い視線を投げかけながら、亜里沙は葵を庇うように二人の間に身を置く。


「あんた、葵に何不埒なことやってんの!」

「これはこれは。正義の使者サマの登場か」

「やるに事欠いてまだ葵を嬲る気なの! 言われの無い中傷を散々まき散らしといて!」

「心外な言い方だな。私は事実を話したまで。全ての責は、そこの神和姫さんにあると思うが?」

「それはあんたが勝手に言ってるだけでしょう!!」

「亜里沙、もう、いいから・・・」

「だって、葵っ!」

「ありがとう、でも、もういいの・・・」


 縋り付く葵を支えながら、亜里沙は琉央を親のかたきが如く睨み付けるのを止めなかった。


「ふっ、好きにすればいい。何れせよ、事実が揺ぐことはない。事実が揺らがなければ、神和姫さんの復権もならないだろう」

「あんた、ねぇ・・・」


 ぎりぎり、と奥歯を噛み締める亜里沙に嘲笑を投げかけながらも、琉央は丁度来たリフトに乗り込んだ。


「エントランス・ホール」

『リョウカイシマシタ』


 リフトの扉が閉まる寸前、琉央は駄目押しの打撃を葵に放った。


「確信犯の高国さんは兎も角、下級生を君の運命に巻き込むのは止めるべきだ。自分の始末ぐらい、自分だけでつけたらどうだ?」

「下種野郎っ! とっとと消えろっ!」


 亜里沙が力任せに投げつけた鞄は、すんでの所で閉まったリフトの扉に当たって跳ね返った。


             ★  ★  ★


「くくく・・・」


 リフトは、僅かな機械音と共に下降していく。磨き抜かれたリフトの壁面に映る琉央の表情には、酷薄な笑みが浮かんでいた。


「神和姫葵さん。キミが、その程度の自己認識と知識で、MASTERとなることなど有り得ない。MASTERたるこの僕が、それを謹んで保証してあげよう・・・」


☆☆ STAGE03/SCENE#1に続く ☆☆

 本編で、漸く「導入部分」が完了です。これから、物語も佳境に入っていく・・・といいなぁ(笑)。相も変わらず読み難い拙文ですが、今後とも宜しくお願い申し上げます。

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