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幻界創世記  作者: 冬泉
第一章「出会いは唐突に」
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SCENE-01◆「全ての始まり」

翔と彰登場。映画をきっかけに話が展開するが・・・

■UNO学院/本部棟/カフェテリア


 緑の丘陵部に、唐突にガラスと金属の構造物が立ち上がっている。中心のひときわ高い円筒形の高層建築を、高・中・低の三つの円筒形の建築が取り巻く。ここは、UNO学院。UNO(国連)の教育局が世界各地で運営する学校組織の一つであり、横浜郊外にあるこの施設には中等部+高等部が置かれていた。


 昼休みのUNO学院管理棟。中等部と高等部が共用している広いカフェテリアは、大勢の生徒で大分賑わっていた。採光を重視している洒落たデザインは、とても学校施設とは思えないレベルの完成度である。

 UNO学院はUNO(国連)の直轄機関が運営する学校法人なので、運営方法や付帯設備に関しても、日本国内の学校とはその様相を大分異にしていた。


 三奈瀬翔みなせしょうは、この4月からUNO学院の高等部に入学した新入生だ。“中等部から大学部までの一貫教育による国際感覚を持った人材の育成”をポリシーとするUNO学院にあって、途中入学が許可されることは非常に珍しかった。編入試験は確かに難しいものの、成績だけを編入の条件にしているのではなく、本人の資質・姿勢をより重視している。そうでなければ、英語が今一つ不得意な翔がUNO学院に編入できる訳がなかった。


「おーい、翔!」

「やぁ、彰」


 声を掛けられた方向に視線を振ると、悪友の河邑彰かわむらあきらがトレイに昼食を載せて歩いてくるところだった。彰は、翔と同じく高等部からの編入組である。良く日焼けした陽気な顔つきで、勉強は限りなく×(ペケ)に近いものの、スポーツでは抜群に優秀だった。


「昨日の晩、見ただろ?」

「あぁ、“最後のユニコーン”だね。もちろん見たよ」


 トレイを抱えて器用に人混みを抜けてきた彰に、翔は笑って言った。


「ちょっと絵が洋風なのが気になったけど、あとは原作に忠実だね」

「俺は最後が気にくわないな」

「原作読んだ時も、彰はそう言ってたね」

「当たり前だぜ、翔! くっそー、俺だったらあそこでアマルシア姫を放さないぞ。精神的な愛情なんてくそくらえだ!」

「相変わらず過激だなぁ、彰は。・・・でも、確かに僕もあのエンディングには、僕もすっきりしないものを感じたよ」

「そうだろ、そうだろ!」


 友人からの同意に我が意を強くしたのか、彰は蕩々と持ち前の自説をまくし立てる。それを辛抱強く翔が聞いている──いつもの光景だ。

 その演説が一段落したところで、翔は合いの手を入れた。


「御高説は重々承知しているよ。でも、読者・視聴者としての僕らには、完成した作品を受け入れるか、受け入れないかの二択しかないと思うけど?」

「・・・」


 珍しく言葉を途切らせて考え込む彰。やがて何か考えついたらしく、顔を上げた。


「お前・・・」

「?」

「翔、お前書けよ!」

「え? 書くって何を?」

「続きに決まってるじゃないか! 最後のユニコーンのだよ。作品本体を変えるのは不味いだろうけどな、“IF”って形の続きならいいじゃないか!」

「無理だよ、そんなの」

「やれるって! お前、以前小説家になりたいって言ってたじゃないか」

「そう思ったこともあったけど・・・」


 翔は、自分があのファンタシィの続きを書く事を想像してみた。だが・・・。


「う〜ん。やっぱり無理だよ。僕には文才が無い」

「試してみたのかよ?」

「え?」

「実際になんか書いて、試してみたのか? 翔、いつもの悪い癖で、やる前から駄目だと思いこんでるんじゃないか?」

「いや、違うよ。実際に文才はないんだ。短い小説を書こうとして試したこともあるんだけど、時間ばかり掛かった上、出来上がりは酷いものだったんだ」

「そっか・・・」


 彰はちょっと考えると、パンと手を叩いた。


「いいことを思いついたぜ!」

「?」

「二年の神和姫先輩に相談しようぜ」

「え? あの文芸部の?」

「あぁ。先輩なら、いいアドバイスをしてくれると思うぜ」

「いきなりは無理だよ、彰。僕は神和姫先輩の事を全然知らないし、それに文芸部員でも・・・」

「ヘっヘっヘ」


 彰は、まるで悪巧みを考えた悪代官の様に笑うと、ちっちっちと首を振った。


「それがね、俺神和姫先輩と話したことあるんだ。たまたま、この間図書館で資料運ぶのを助けたことがあってね。だから、見ず知らずの初見さんって訳じゃないんだぜ〜」

「そうなのかい・・・」


 彰らしい行動力に思わず笑ってしまう。しかし、翔はそれも悪くない考えかなと思い直した。自分の物書きとしての実力が本当のところどの程度か、知りたくないと言えば嘘になる。それに、校内でもファンの多い神和姫葵と話す機会が持てるのも、ちょっと魅力的だと思ったからだ。


「・・・わかった。自信は無いけどね。試しに“IF”でラストを書いてみようか!」

「そうだぜ! そうこなくちゃ!」


 バン! と 背中を叩かれて、翔は少し咽せた。


「ったく・・・」


 現金な彰に苦笑いしつつも、翔の心の中では、“最後のユニコーン”の構想が膨らんでいく。一度決めたら、目標に向かってがむしゃらに邁進するのが翔の性格だ。


「・・・なんか、一気に書けそうだよ。帰って、今晩頑張ってみる」

「オッケー! そんじゃ、明日出来上がってたら、昼休みにでも先輩んとこ行ってみようぜ!」


 妙に力が入る彰にそこはかとない下心を感じながらも、翔は笑って頷いた。



 構想から大分時間が経ちましたが、最初に自分のサイトにアップしたものを改変して、「幻界創世記」は漸く発表まで漕ぎ着けました。あれを書こう、これも書こうと欲張っていたら、話が詰まって全く進まなくなってしまいました(涙)。やはり、「過ぎたるは、なお及ばざるが如し」ですね。

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