表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻界創世記  作者: 冬泉
第二章「仲間と呼ばれて」
19/50

STAGE02◆「仲間、と呼ばれて」-SCENE#8


わだかまりの解けた二人の絆は更に強固になる・・・

■UNO学院/学部棟/屋上→リフトホール


 屋上を後にすると、翔と彰はリフトホールへの階段をゆっくりと下った。途中、折り返しの踊り場を抜けたところで、翔がおもむろに口を開いた。


「彰。ちょっと聞いてくれるかい?」


 翔の声は真剣だった。彰は、いいぜ、話してみろよと気軽に応じる。


「自分の自己満足だって事は判っている。それでも、これからの君とのことを考えると、どうしてもはっきりさせておきたい」

「何をだよ?」

「僕は、君のことを羨んでいたんだと思う」


 大きく息を吸うと、翔はゆっくりと先を続けた。


「僕と違って明るくて、決断が早くて何でもできて・・・正直、君に嫉妬していたと思う」


 黙って、聞いている彰。


「漸く自分で出した結果も、君に取られるかも知れないと思った。神和姫先輩にも指摘されたけど、本当に自分でも嫌気がさすよ。それでも、僕は君と友人でいたい。こんな僕でも友人でいさせてくれるなら・・・」


「ざーけてんじゃねぇよ、翔」


 彰は、翔に仕舞いまで言わせなかった。顰めっ面をしながら、彰は強く言った。


「俺のセリフを取らないでくれよ、翔。だいたいな、俺の方こそ、お前に謝んなきゃならないことがある」

「彰が?」

「そうさ。俺こそ、お前のことが羨ましくなっちまったのさ」

「えぇ?!」


 心底驚いた表情の翔に、彰は、何だよ気が付いてなかったのか? と、呆れた様な笑みを浮かべた。


「あぁ。お前は俺には無い才能を持っててよ、俺よりも真面目で物事をとことん追求する。そんな殊勝なこと、俺には出来ない。正直、先輩とサシで話しているお前が羨ましかった。俺も参加したかったが、自分の実力じゃどうにもなんないってことも判ってた。だから、ちょっと卑怯な手を使っちまったよ」


 はぁ、と彰は肩を僅かに落として溜息を付いた。


「でもな、先輩の言葉を聞いて──これじゃアカンと思ったんだ。このまま、翔と袂を分かってしまっていいのかってな」

「それは──ぼくもそう思った。最後の最後で・・・ここで踏み留まらなきゃ駄目だって思ったら、自然に言葉が出ていたんだ」


 翔は自分の言葉に苦笑いしながら言った。


「それもこれも、その事を気づかせてくれた人のおかげだけどね」

「そっか。そいつはホントによかったな」


 そうだね、と頷く翔。


「お互い、動機は似た様なもんだったってことか・・・」

「そういうことだな」

「そうか」

「そうだぜ」


 何時しか、二人の表情には笑みが浮かんでいた。あははは、と笑い始めると、それが止まらなくなる。二人で腹を抱えて涙が出るまで笑った。


「なぁ、翔」

「なんだい?」

「もっと気兼ねなく、お互いに色んな事を話そうぜ。こんなこたぁ、もうこれっきりで御免だぜ」

「そうだね。僕もそう思う。彰とはずっと友達でいたい。だから──隠し事何かしたくない」

「なら、友情の再確認と行くか!」

「ははは、全く彰らしいね」


 がっちりと握手する二人。二人の絆が、今まで以上に固く組み合わさった瞬間だった。彰は、翔の手を握りながらもにやりと笑って宣言した。


「でもな、翔。神和姫先輩のことは簡単には譲らないからな!」

「はぁ、まだそれかよ、彰」

「それ以外に、何かあるって言うんだよ翔!」


 ここがポイントなんだぜ、翔はホントに判ってないな、などと一人で盛り上がっている彰の傍らで、賞は大きく溜息を付いた。はたして彰と友人を続けるのは本当に賢い判断だったのか、今一自信が持てない翔だった。


☆☆ SCENE#9に続く ☆☆

 言葉にしないと、旨く伝わらないことがあります。自分の価値観を相手に押しつけると、無用な軋轢を生みます。相手の価値観を認め、自分の価値観を話してみる。お互いの、相互理解への第一歩です。翔も彰もまだまだ未熟ではありますが、それでもお互いの事を理解しようと勇気を振り絞りました。この一歩は、きっと今後の二人にとって大きな力となることでしょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ