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幻界創世記  作者: 冬泉
第二章「仲間と呼ばれて」
13/50

STAGE02◆「仲間、と呼ばれて」-SCENE#2


またも葵を怒らせた翔。一体、どうなるのだろうか?

■UNO学院/学部棟/高等部二年/2-A教室


「・・・」


 端正な横顔は、全く無表情だった。先程から、葵は一言も発していない。まさに、時間が止まった様な雰囲気が屋上を支配していた。

 だが、そんな状況を全く感じ取っていないのか、脳天気な翔の親友は先程から屈託無い笑みを浮かべている。


“はぁ・・・”


 翔は何度目かの溜息を心の中で付いた。正直、流されるままに、ここまで彰に引っ張られてこられたことを、翔は心の底から後悔していた。


“『後悔役立たず』とはよく言ったもんだよね、ホントに。これは先輩、相当怒っている感じだよ──愛想が尽かされるかな”


 翔の場合、マイナスループに思考ルーチンが填り込むと際限がない。何度目かの溜息を付くと、翔は先程からの状況を思い返してみた。


                 ★  ★  ★


 事の起こりは、翔の課題が続く事を知った彰が、“自分も翻訳作業に参加する”という、己の語学能力を度外視した提案を行った所から始まった。

 翔と違って即断即決の彰は、早速葵に参加の許可を貰いに行こうとした。

 彰に引きづられるように葵の教室を訪れた翔を伴って、葵は屋上にやってきた。そこで彰が熱血口調で是非自分も参加したいと葵に直訴して・・・現在に至るという訳だった。


“神和姫先輩、どう判断されるだろうか? 課題・・・あるんだろうな。僕もあれだけ難しい課題だったし──でも・・・”


 自分と同じレベルの課題だと、飽きっぽい彰にはちょっと無理じゃないかかとも思う翔だった。


                 ★  ★  ★


「・・・わかったわ」


 やがて葵が言った。


「明後日から。放課後屋上で」

「えっ?」


 驚いて翔は顔を上げた。


「ホントっすかぁ! いやったぁ!! 先輩、ありがごっつあんですっ!」  


 短く言うと、葵はフェンスから躰を離すと歩き始めた。

 何語か判らないが、ともかく嬉しくて万歳三唱状態の彰を余所に、翔はあわてて葵の後を追った。


「先輩っ、ちょっと待って下さい!」


 階段を駆け下りて一階下で追いつくと、翔は葵を呼び止めた。


「何?」

「参加の条件は? 章には、課題か何かないんですか?」

「無いわ」

「どうしてかって、聞いても良いですか」

「不満?」

「納得・・・が、行きません」

「友達が一緒に参加することに?」

「いえ、そんな訳じゃないのですが・・・」


 澄んだ双眸が翔を見上げてくる。心の奥底まで見透かされる感じがして、翔は思わず視線を逸らした。そんな翔を見て、葵は軽く溜息をついた。


「・・・そう。じゃ、止めましょう」

「えっ?!」

「わたしのやり方に不満なら、止めましょうと言ったの。もう、来なくてもいいわ」

「そんな・・・」


 息をのんで見た葵の表情には相手を拒絶する様な冷たさが浮かんでいた。

 呆然とした翔をその場に残し、葵は立ち去った。


☆☆ SCENE#3に続く ☆☆

 更新に間が空いてしまっており、お待たせしてしまって恐縮です。出来るだけ、定期的(3〜4日に一回)ペースで更新しますので、今後とも宜しくお願い申し上げます。


 さて、お莫迦な翔は、また地雷を踏んでしまいました。実は、今回とと次回は“心情的に理解が難しい”例を題材にとっています。お恥ずかしいながら、私も過去に経験した口です。その時は、葵の様に断固とした態度を貫くことができませんでしたが(苦笑)。葵の行動を翔と彰が理解出来るか、それは次回のお楽しみ。では!

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