表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻界創世記  作者: 冬泉
第一章「出会いは唐突に」
10/50

SCENE-09◆「誘惑と克己心」

葵に与えられた課題に取り組む翔に、思わぬ手助けが?

■三奈瀬宅←→UNO学院


◆初日

 夜─―三奈瀬宅。

 卓上灯を付けて机に座った翔は、受験勉強をしていた時を懐かしく思い出した。葵から借りたマニュアルを鞄からそっと取り出すと、英語の辞書を棚から引っ張り出す。中学に入った時に購入したその辞書は、年数の割には新しかった。持ち主の使用頻度が伺えるかのようだ。


「さてっと・・・」


 おもむろに、1ページ目を開く。「ADVANCED DUNGEONS & DRAGONS」とタイトルが書いてある扉絵のページだ。次の2ページ目はどうやら前書きの様に思えた。


「『Foreword』って、前書きだ。一応、読んでおかなくちゃ駄目だろうな。『It has been a long time getting here.』、えーと、長い事ここに居た???」


 前書きの時点で、既に失速気味の翔。だが、意を決決して辞書を手に取ると、パラパラとめくっていく。それが数回続いた後、ピタリと止む。


「駄目だ。紙にでも書かなきゃ、覚えきれないや」


 引き出しからノートを取り出すと、今調べた単語を書いていく。単語に矢印をひっぱたり、線で消したりすること10分。


「これで出来たかな?」


 自分の迷訳(?)を見直してみる翔。


『長い事ここに居た。これは月じゃなく、もしかすると数年、貴方はADnDの改編され、拡張され、改善されるのを待っていた』


「・・・何となく、意味が分かるような、それでいてやっぱり判らないような・・・」


 ちらりと時計を見る。すでに、マニュアルを開いてから30分は経ってしまっている。


「まだ1ページも進んでないのに、もうこんなに時間がたってるよ・・・」


 心の片隅に昼間の光景が蘇る。あの時は、熱に浮かされたように、思い切って“やる!”と言い切った。

 だが、実際に取り掛かってみると、目の前に横たわる膨大な英文の量に、少しだけ後悔を覚える翔だった・・・。


◆二日目

 朝─―UNO学院高等部一年学習室。


「よぉ、翔。なんか眠そうだな!」


 自分の席に座ると、さっそく彰が話し掛けてきた。眠そうに掌で目頭をこする翔を見ていると、唐突にニヤニヤ笑いを浮かべた。


「翔ク〜ン。どうしたんだ〜い、そんなに眠そうで。じ・つ・は・深夜にいかがわしい記録ディスクでも見てたんだろ〜。判ってんだぞ、おい。ホントにイヤラしいやっちゃな〜」

「はぁ・・・お前と一緒にするなよ、彰」


 突拍子もない彰の想像に、翔は目一杯脱力した。ただでさえ疲れているのに、ますます精神的疲労が嵩む。


「へっ? 違うのかよ」

「違う」


 きっぱり返した翔を、不思議そうに見る彰。


「じゃ、なんかのゲームをやってて填り込んだとか?」

「それも違う。」

「彼女と長電話・・・おっと、この線は絶対に無いな」

「大〜きなお世話だ!」


 いい加減頭に来た翔は、渋面を作って彰を睨んだ。


「彰には判りっこないよ。いいかい、僕は英語の本を読んでたのさ」

「へぇっ?!」


 翔が退学届けでも書いていた、と言った方が彰には想像しやすかっただろう。


「お、おい。翔、とうとう悪いびょーきに脳まで犯されたか? ついに、行くとこまでいっちまったのか?」

「いい加減にしろ。寝不足は睡眠時間の不足。睡眠時間の不足は、英語の本を遅くまで読んでた為。だから今は眠い。邪魔すんなよ、彰」

「えぇっ、マジかよ! 英語の本って、いったいどうしちまったんだ? 英語って、お前学科ん中で一番苦手じゃないか!」

「五月蠅い。寝る」


 切り口上で会話を打ち切ると、翔はこれ見よがしに向こうを向いて寝てしまった。彰に向けた背中から、“これ以上一切話さないぞ”と言う堅い決意が伝わってくる。

 しばらくブツブツ言っていた彰は、翔が全く反応しなくなったので、諦めて自分の席に戻った。


 こうして一日中惰眠を貪った後。放課後、彰が声を掛けるよりも早く、ダッシュで教室から翔は飛び出して行った。

 取り残された彰は、ちょっと唖然とした表情でつぶやいた。


「ホントに、どうしたんだ、翔のヤツ?」


◆三日目

 爽やかな朝。だが、翔は半分死んだような、どんよりとした表情での登校だった。マニュアル翻訳は遅々としてはかどらない。

 昨晩も、夕食後6時間はマニュアルに向かったが、辛うじて『FOREWORD』2ページと『Welcome to the ADnD Game』の最初の部分を訳しただけだった。


『努力と根性だ!』


 葵に言い切った時の高揚感を思い出す。自分を鼓舞しようとするものの・・・努力と根性でも太刀打ちできないように思える高い山に、気力が萎えそうになる。翔は鞄をぐっと握った。

 いつもより心持ち重い学生鞄には、葵から借りたマニュアルが入っていた。昼休みの時間も翻訳を続けようと思って持ってきたのだ。

 進まぬ翻訳作業に多少はげんなりしているものの、翔は決して諦めてはいなかった。少なくとも、今はまだ。


「おー、今日もどんよりか」

「・・・」


 教室に入ると、さっそく彰が話し掛けてくる。ここ数日で妙に迫力を増した視線で彰を睨みつけると、無言で席に座った。


「おーこわ」


 軽口を叩きながらも、彰は改めて友人を見てみた。赤い目、憔悴している顔、眉間の縦皺。いずれも典型的な夜更かしの症状に思えるが、どうもそれだけではないようだ。

 やれやれと肩を竦めると、彰は翔の前の席に後ろ向きに座り、翔の顔を見る。


「・・・なんだよ」

「なぁ、翔。俺たちゃ友ダチだろ?」

「それがどうしたんだよ」

「友ダチなら、抱え込んでるモノを少しは話してくれてもいいんじゃないか? ここ数日のお前って、心労の種をまき散らしているような感じだぞ」

「・・・」

「俺に何ができるか判かんないけど・・・話してみるだけでも、多少は荷が軽くなるっていうもんだ。なぁ、翔。話してみろよ」

「・・・仕方がないなぁ」


 根負けした感じで、翔は大きくため息をついた。


「神和姫先輩と話したんだ」

「あぁ。会ったって話は聞いた。何があったんだ?」

「これだよ」


 翔は、鞄からマニュアルをそっと取り出して見せた。


「これは?」

「ADnDの“マニュアル”、つまりルールブックなんだけど、これを100ページまで読んで、内容を先輩に説明することになってるんだ」

「げっ! これを100ページか!」

「あぁ」

「そりゃ、えれー話だな。それで? コイツをいつまでやっつけなきゃなんないんだ?」

「来週の水曜日まで」

「な、なんだって!!」


 椅子の背に頬杖をついていた彰は、思わずずっこけた。


「100ページを来週水曜までだって! できるんかよ、翔!」

「だから、毎日こうして夜遅くまで努力してるんだよ」

「努力ったってなぁ・・・お前、出来ることと出来ない事ってあるんだぜ。こんなのを100ページ一週間で読めなんて、あの嫌みな学年主席の樫村でも出来ないぜ!」

「はぁ・・・それを言わないでくれよ」


 目に見えてがっくりする翔を、彰はあわてて励ました。

 もっとも、支離滅裂、滅茶苦茶な励まし方だが。


「いや、でもな、人間やってみないとわかんないぜ! だいたい、人間には未知のパワーがゴマンと宿っているんだ。努力と根性でぶち当たれば、きっと路は開けるぞ!」

「はぁ・・・」


 ますます脱力しかかる翔だが、彰がなけなしの脳みそを絞って励ましてくれているかと思うと、内容はさておき、その心遣いは嬉しかった。


「サンキュ、彰。諦めるつもりなんかないよ。それに、日数はまだ半分あるんだからね」

「そうだ! 翔、その意気だ!」

「あ、彰! ちょっとタンマ。そんなに叩くなよ」


 ばんばんと肩を叩きながら屈託無く笑う彰を見ると、翔は頑張ってみようと言う勇気が沸いてくる思いがした。

 一人より二人。分担して担げば、重荷はそれだけ軽くなる。翔も、いつしか笑みを浮かべていた。

 そんな二人を、じっと伺う視線があった。絡み付くように翔と彰を睨め回すと、二人に気付かれる前に視線を逸らす。


「待ってなよ。今に、僕が助けてあげるからね。クククク・・・」


◆四日目

 眠い。限りなく眠い。夢遊病者のようにふらふらと学校に行くと、ようやく辿り着いた自席でそのまま沈没する。

 どうにもならない。これほどまでして、寝る間も惜しんで翻訳しているのに、読むスピードは遅々としていてはかどらない。


「よっ、翔」


 彰にしては珍しく、心配しているような表情だ。


「酷い顔色だな」

「言わないでくれよ。殆ど寝てないんだ」


 ぐったりしている翔には、それだけ言うのがやっとだった。


「で、どこまで行ったんだ?」

「聞かないでくれよ」

「それだけでだいたい想像がつくぜ。半分も行ってないんだろ?」


 しばしの沈黙の後。


「計画進捗度、予定に対してマイナス80%」

「二割かぁ・・・。今晩入れてもあと三日。そんな状況だと、全ページ完訳はかなりムズイな」

「まぁね・・・」

「どうすんだ?」

「続けるさ」

「終わらなくてもか?」

「・・・今は、結果のことは考えたくない。目先のことを精一杯やるまでだよ」

「やれやれ・・・エールだけは目一杯送ってやるよ」

「ありがたくて涙が出るね」

「へへへ、礼なら要らないぜ」

「言ってろ」


 翔は、少し気分が晴れるのを感じた。昔から、自分が落ち込むと彰が気を紛らせてくれる。

 翔自身を除けば、翔の性格を一番良く理解しているのが彰だろう。見かけはアホでも(実際にアホだという話もあるが)、こんな時に頼りになる親友だった。


◆五日目

「三奈瀬君。ちょっといいかな?」


 昨晩も夜遅くまでマニュアルと格闘していた翔が、精根尽き果てた感じでぐったり学習室の自席で沈没していると、いきなり耳慣れぬ声が掛かった。

 大儀そうに顔を上げると、視界に細面で色白な顔が入ってくる。


“あれ? 誰だっけ?”


 睡魔にぼけた頭でぼんやり考えていると、相手は構わず先を続けた。


「実はね、君と河邑君の話を偶然耳にしてしまってね。一昨日から、同じクラスメートとして何か手助けできないかと考えていたんだよ」

「はぁ・・・そうなんだ」


 我ながら、間の抜けた返事だと思ったが、とりあえずそれ以上の返事が思いつかなかったので仕方がない。


「そこでね、これを君に貸してあげようと思って持ってきたんだ」


 そう言うと、その相手は手にした薄いプラスティックケースを翔の鼻先でヒラヒラさせた。物言いたげに翔が見上げると、相手はにっこり笑って言った。


「この記録ディスクには、“翻訳大王墓帝ビル”というソフトが入っている」

「はぁ・・・」

「そう。これを使えば、君の抱えている英文100ページなんてあっと言う間だ。どうだい、使ってみないか?」

「あっという間にだって?」

「あぁ。手順は簡単だ。まずは、学校のスキャナーを使ってその英文を全文取り込む。それを、この翻訳プログラムをインストールした君のパソコンに転送して、プログラムをランさせればOKだよ。翻訳された文章は多少修正が必要だが、それもご愛敬。まず間違いなく、今晩中に仕上がるね」

「・・・」

「じゃ、渡したからね。いや、御礼なんて構わないさ。君の役に立てるようなら、僕もクラスメートとして嬉しいからね」


 一方的に話すと、唖然とした翔を残して相手は自分の席に戻った。因みに、その席は教壇の真ん前の、通称“ブリッジヘッド(橋頭堡)”と呼ばれ、誰もが敬遠する素敵な特等席である。


「おい、翔。お前いつから御殿山なんかと知り合いになったんだ?」

「知り合いも何も・・・名前すら覚えてなかったよ」

「そっか。しっかし、なんでアイツがお前にそんなもん貸してくれるんだ?」


 そう言うと、彰は翔が手にしているDVD-ROMのケースを指さした。


「僕にも判らないよ、そんなこと」

「そっか。まぁ、不思議なこともあるもんだ。もしかして、アイツ翔にホ・の・字・かもし・・・」

「絶対にあり得ないっ!!」


 彰の言葉を途中でへし折って、翔は完膚無きまでに否定した。


「まぁ、そんなことはどうでもいいんだけどな。それより、そいつを使えば翻訳完了って訳だろ?」

「そうとは言ってたけどね。実際に試してみなければわからない。まぁ、本当に旨く作動してくれたら大助かりということろかな」

「期限まであと二日だからな。そうと決まれば、早いトコデータをスキャンしちまおうぜ!」

「そうだね・・・」


 彰の言葉に頷きながら、翔はどこか心に引っかかりを感じていた。


◆六日目

 翌朝。珍しくすっきりした顔で翔が登校してくる。その変化を目聡く見つけた彰が、翔の席に寄ってくるなりしたり顔でのたまった。


「よぉ、翔! よく眠れたみたいだな。その感じだと、うまくいったんだろ?」

「うん。凄いソフトだったよ、これって。僕のパソコンでも、100ページの翻訳に2時間掛からなかった」

「そりゃ〜いいな。それでよ、完成なのか?」

「いや、まだ翻訳された中味をきちんと確認していない。今晩やるよ」

「やれやれだな。まぁ、約束の期限にぴったり間に合ったから結果オーライってとこか」


 笑いながら話している二人の背後に音もなく忍び寄る黒い影。


「やぁ、三奈瀬君に河邑君」


 いきなり不意打ちを食らわすのが御殿山の趣味らしい。驚いて振り返える二人の反応を、御殿山は薄ら笑いを浮かべ見た。


「あの翻訳ソフト、簡単だったろう? 今どきね、手で翻訳するなんて流行らないんだよ。世の中には便利なアイテムがたくさんある。旨く活用して、つまらない手間を減らすのが現代人の知恵さ。“努力と根性”みたいな精神論は、とっくに時代遅れだね」


 その口調には、そこはかとない悪意が混じっていた。

 優柔不断でやや鈍感な翔も、体育会系で大雑把な彰も、言葉に含まれる“トゲ”を感じていた。

 翔の表情も、彰の表情も、険しさを増した。


「そう決めつけるのはよくないよ。」

「なんでかな? “努力と根性”とやらでやっていたら、君のその翻訳は終わらなかったのだろう? 結果から考えれば、どちらがより優れているか明確だよ」

「それは違う。今回の件は、単に僕が英語を苦手としているからに過ぎない。個人の能力と専門ソフトの能力を比べるのは、コンピューターの演算が人間より速いって比べるのと同じだよ。コンピューターの方が定型作業に向いていて、作業が早いのは当たり前。それだけを対比させて、“努力と根性”を否定するのは短絡的だ。」

「うっ・・・そ、そんなの、ただの屁理屈じゃないか!」

「俺も、翔の言う通りだと思うぜ。確かに、コンピューターの演算は速い。けどな、そのコンピューターも誰かが“努力と根性”で作ったんだろ? それを否定してどうすんだよ」


 二人に言い立てられて、御殿山は思わず後ろに二三歩下がった。顔色が紙のように白くなり、口元がブルブル震えている。


「な、なんだよ! 偉そうなこと言っても、結局は僕の貸したソフトで翻訳を完成させたじゃないか! そんなに言うんなら、“努力と根性”だけでやってみなよ!」

「なんだとぉ!」

「ヒィッ!」

「ちょっと待って!」


 一方的な“白兵戦”が始まる前に、翔は御殿山と彰の間に割って入った。

 不満そうに唸る彰を背中で押しとどめると、静かに御殿山を見つめた。疚しい思いを抱いているのか、御殿山はそわそわと目線を動かしている。


「御殿山君。まだお礼を言ってなかったね。翻訳ソフトを貸してくれてありがとう」

「・・・ふ、ふん」

「それから、もうひとつ。僕に大事なことを認識させてくれた」


 御殿山の讒言ざんげんを聞いて、翔は今まで漠然としていた想いが、胸の内に沸き上がってくるのを感じたのだ。どうして、自分はこんな翻訳をやると葵に言ったのか。自信なんかある訳がない。出来ると言い切る根拠のなさ。まさに蛮勇だ。それでも・・・自分は“やる”と言い切った。その時、不意に胸に沸き上がってきた想い・・・。それは人の心を動かし続けるエナジーだ。


「君が何を意図して、僕に翻訳ソフトを貸してくれたのか判らない。けれども、僕は自分が探していたものを見つけたと思う。それは、はからずしも、君が勧める“路”とは正反対の方向に伸びているようだけどね」

「何を言ってるんだ! 僕はね、君の苦労を軽くしてやろうと思ってだね・・・」

「ありがとう。でも、僕には必要ないよ」


 御殿山は、よろりとあとすざった。

 穴の開くほど翔の顔を見つめるが、全く付け入る隙が見つからない。

 白い顔が青くなっていくと、その場の圧力に耐えられなくなったのか、突然自分の席に走って戻った。慌ただしく机をかたづけると、鞄を掴み翔と彰を睨みつけた。


「み、見てろ! 今日の事を、今にきっと後悔するからな!」


 捨てぜりふを残して、御殿山は学習室から走り去った。


「・・・ヤレヤレ、朝っぱらから早退かよ。ま、アホは放っとこうぜ」

「あぁ」


 苦笑いして頷く翔。


「ところで、どうすんだ?」

「翻訳を続けるよ。翻訳ソフトで作った和訳は破棄する。楽してやっても、自分の為にはならない。それがわからなかったために、一日無駄にしちゃったよ」

「そりゃー違うぜ、翔」

「え?」

「何も無駄になっちゃいないぜ。その一日の経験が、今日の確信につながったんだろ」

「・・・そうだね。うん。その通りだ」

「そうと決まったら、時間を無駄にすんなよ、翔」

「わかってる。データは持ってきてるから、休み時間も翻訳を続けるよ。学校が終わったら、ダッシュで帰る」

「それがいい。授業さぼって翻訳してるのが神和姫先輩に知れたら・・・」

「本末転倒だね」

「ハハハ、違いないぜ」


 翔が、昨日から感じていた心の引っかかりは、どこかへ雲散霧消していた。

 翔はその日、晴れ晴れとした気持ちで授業にのぞんだ。


◆七日目

 最終日。朝日が東の窓から室内に射し込んでくる。翔はその眩しさに目を細めると、ゆっくりとマニュアルを閉ざした。

 やるだけのことはやった・・・そんな自負はあるが、それでも葵の言ったページはまだ遙か彼方だった。自力で翻訳したページ数は33ページ。昨日学校が終わったあと家に直帰して徹夜で翻訳を続けたが、それ以上は進めなかった。


「潔く、自分の負けを認めよう」


 葵の期待に応えられなかったのは残念ではあったが、精一杯やったと言う思いに、後悔は感じていなかった。


「さぁ、行こう!」


 自分を鼓舞するように言うと、翔はそっとマニュアルを鞄に入れ、駆け足で家を出た。



 いや〜長かったです、このシーン。書けども書けども、終わりがないように思えました。ボリューム的には、これまでのシーン四本分くらいありますから、長かったのも当たり前ですけどね(^_^)。次のシーンで、STAGE01は終了です。翻訳が未完な翔は、はたしてどうなるのでしょうか???

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ