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3日目前半

荒ぶるキノコを倒して一夜明け、

俺たち3人は宿屋の部屋で会議をしていた。


俺、妹尾セナはベッドの前の床に座り、セリカはその反対側に腰かけ、

長野ナミはベッドに腰かけるようにして座っていた。


まず俺が話を切り出した。


「えっと、昨日あの大化けキノコを倒して、

気絶してたセリカを担いで街に帰って、報酬をもらって宿に帰ったわけだけど……」

「そのことは感謝しなきゃね、お兄ちゃんありがと」


セリカは一応素直に感謝しているのか、礼を言う。

しかし、それに続けて質問を投げかけてきた。


「それで、なんでナミさんがここにいるの?」

「え~とね……気づいたらここにいて……」


ナミはあははと困ったように笑いながら、

ここに来た経緯、そして森にいた理由を説明しだした。


「私もやっぱりパパのゲームのモニターに参加することになっちゃって

それで……気づいたらここにいたんだ、えへへ」

「気づいたらって……俺たちと同じようにPCが光って飛ばされたのか?」

「え?うん、そう、そうだよ!」


ナミの反応はいきなり飛ばされたにしては少しおかしかったが、

俺がそのことを考える前に、ナミは話を続ける。


「私も帰れなくなっちゃって……

それで森の中を歩いていたら、悲鳴が聞こえて探してみたら、

セナ君とセリカちゃんがでかいキノコと戦ってたの!」


どうやら話によるとナミが飛ばされたのは街ではなく、森だったようだ。

俺はナミに、ここがどこか知ってるか尋ねた。


「ヨーネ大陸のソリューの街だよね」

「そう、そこで俺たちはキノコの採取依頼を頼まれて、

西の森にいたんだ

それよりここは、現実なのか?それとも……」


異世界。そう言おうとして、その発想の馬鹿馬鹿しさに我ながら苦笑した。

普通の平凡な高校生が、異世界に召喚される理由なんてない。

でも、確かにこの世界では空気を感じるし、人は生きている。

疑問をうまく言葉にできなくて、俺が黙ってしまうと、

セリカが口を挟んできた。


「妹のあたしが蚊帳の外なんですけど……

ナミさん、この世界から帰れる方法知らないの?」


なぜか少し怒った風な妹がそう尋ねると、

ナミは少し表情を曇らせ、


「帰れる方法は分からないんだ……ごめんね」


とだけ言った。セリカは、


「謝ることないって!一緒に帰る方法探そうよ!」


と慌ててフォローしていた。

昔からこいつらは変わらないなとふと懐かしくなった。


俺たち妹尾家と長野ナミの家は近所同士で、昔から一緒に遊んでいた。

セリカが大人びて、お姉さんぶるような性格だったのに対し、

ナミは元気でおてんばな性格だった。

セリカの方が一つ年下なはずなのだが、どっちが年上か分からないな、

などと考えていると、女子たちは勝手に話がまとまったようだった。


「ナミさん、とりあえずここは協力して一緒に現実に帰る方法を探さない?

たぶん2人より、3人のほうがいいアイデアも浮かぶと思う」

「そうだね……セリカちゃん、よろしくね!」


あっさり決められてしまった、異論はないのだが。

子供の頃よく遊んだ3人組、異世界という場所ながら、なんだか昔のようにワクワクしていた。


「お兄ちゃんもそれでいいよね?」

「セナ君もよろしくね!わーい、幼い頃みたいだね!」

「よろしく、それで当面の目的はどうする?」


俺はいよいよ本題を切り出した、最終目標は確かに現実に帰ることだが

それまでにくたばってしまっては仕方がない。

妹の口からある提案が飛び出した。


「あたしはもうあんなに危険な目はいやだな、

触手はもうトラウマ……」

「そりゃ仕方ないだろ、あんな目にあって、

服まで脱がされかけたんだから」

「脱がされかけたの!?」


セリカは一瞬びっくりして、


「お兄ちゃんまさか……気絶したあられもないあたしの姿を見て……」

「なにもしてないから!無実だ!」


俺は慌てて弁明したが、セリカは形のいい胸を自分で隠すように抑え、

疑いの目を向けられていた。

するとナミが助け船を出してくれた。


「セリカちゃん大丈夫だよ、私もいたし、

セナ君すごく心配してたんだから」

「そう、ナミさんがそう言うなら……

それにお兄ちゃんにそんな度胸はないか」

「お前は俺をなんだと思ってるんだよ……」


お兄ちゃん信用されてないのかな、少し悲しいよ。

しかし、女の子が2人もいると賑やかだ。

俺は異世界でもなんとかやっていける気がして、

笑っているセリカとナミの様子を見ながら、異世界生活を続ける決意を固めた。


このファンタジーな世界で、心もとない装備と、わずかなお金。

でもしっかりものの妹と、元気な幼馴染がいる。

それだけで十分に心強く、青い剣士と赤の盗賊と黒の魔法使いの、

俺たちの会話はしばらく昼過ぎまで続くのだった。

次回、働く場所を探すセナ達。

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