6日目前半
クリアされなかったゲームは、どうなるのだろう。
倒されなかったボスは、どうなるのだろう。
勇者を待ち続けるのだろうか。
同じ場所で、登場の時を。
昔答えられなかった問いに、時を越えて答えることができるとしたら、
それは仮想現実の中でぐらいなのだろう。
それぐらい現実は取り返しのつかないことが多すぎて、
時に残酷な出来事を見せてくれる。
俺たちは6日目の朝、宿屋を出発し、鉄の巨人が待つ西の森の奥に出発した。
前に一度通ったことのある道だ、そう時間はかからなかった。
新調したスチールソードを片手に、俺はセリカとナミとサユを後ろに森を進んでいく。
木がそこを神聖な場所と避けるように大きな広場が自然にできている。
はたしてそこに鎮座していたのは、鉄の塊でできた、それは大きなゴーレムだった。
「よう、待ちわびたって顔してやがるな」
俺が巨人の前に到着し、仲間も駆けつけると、セリカとナミは俺の隣に立ち、
サユは後方から支援する形となった。
巨人は無表情な鉄の面を変えることなく、動き始める。
地鳴りが鳴り響き、咆哮を上げる巨人に、俺たちは武器を構える。
「俺があいつを引き付ける、セリカはその間にコアを頼む!
ナミは魔法で援護してくれ!」
俺は仲間に作戦を指示し、散開させる。
「回復は任せてほしいですよ」
いつでも傷を癒してくれる薬士サユの言葉に、力強く頷く。
頼もしい仲間がいる、勇者を待つボスがいる。
俺は、戦闘開始の号令を上げた。
「攻撃開始!」
その合図に巨人も答えるように拳を繰り出す。
ブンッ!
鉄の塊だ、それを食らったらひとたまりもない。
俺は必死にそれをダッシュで避ける。
「ナミ、頼む!」
「焼き尽くせ!ファイアーボール!」
ナミが巨人の裏方向から火の玉をぶつけると、
コアを攻撃されてはたまらないといった風にナミの方に向き直り、
身長ほどもあるパンチをナミに当てようとする。
ドゴォ!
セリカはすぐさまナミを抱え、敵の攻撃範囲外へと退避する。
ナミがいた場所の地面は、えぐれて土が見えていた。
「セリカちゃん、ありがと~」
「もう、ナミさん危ない……」
「あっぶねぇ……」
擦り傷を負ったナミをサユが治療している間に、
俺はさらに巨人と回避の攻防を続けていた。
黒い巨大な身体を利用し、重みのある動きで広場を支配する巨人は、
やはり一筋縄では攻略といかないようだ。
俺は徐々に追い詰められていた。
後ろが木の場所に追いやられたのを気づいたときにはもう遅く、
俺は巨人の鉄拳をまともに食らおうとしてしまった。
「おっ、うおおおおおっ!」
とっさに構えたスチールソードを盾にして、防ごうとすると、
巨人は少し傾いて腕が少しずれる。
ドガガガガッ!
後ろにあった木がなぎ倒されるのを見て、俺は青ざめたが、
転倒した擦り傷ぐらいで身体はなんともないようだ。
「お兄ちゃん、これが弱点なんだよね!?」
セリカはいつの間にか裏に回ると、鉄巨人の背中のコアにダガーを突き刺していたのだ。
それで巨人が揺らいだのか……そんなことを思っていると。
オオオオ……と巨人が叫び、セリカを振りほどこうとする。
セリカはその力にたまらず吹き飛ばされる。
「きゃあああああっ!」
「セリカ!」
「セリカちゃん!」
地面に叩きつけられたが、幸い受け身は取れたようだ。
「今回復します!」
サユが回復魔法を唱えると、巨人は厄介な相手と認識したのか、
サユの方に向き、追いかけようとする。
俺はその隙を逃さなかった。
おそらく、剣を持って走るなんて人生でこれっきりだろう。
その一度に、俺は全力をかけた。
自分でも驚くほど力がみなぎる足に全てをかけ、
無防備な背中のコアに、全速力でスチールソードを突き刺した。
「こんのおおおおおおお!」
ザシュッ!
サユを狙おうとした鉄巨人は、慣性を残しながら、
しかし行動停止の様を知らせる光の消えた瞳を宿し、
地面に倒れ込んだ。
完全に動かなくなったのを確認すると、
俺たちは散り散りになった仲間の顔を見合わせ、
「お、終わった……」
空気の抜けた風船のように、緊張を解き、
その場にへたり込んだのだった。
「セナ君、お、お疲れ~」
「ヒヤヒヤしたわ……もっとスムーズに行きたかったのに……」
「回復が間に合わないような事態にならなくてよかったです」
それぞれが思い思いの言葉を吐く。
鉄の巨人は、完全に機能を停止し、
鉄の面は、理由は分からないが、不思議と俺には満足そうに映るのだった。




