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5日目後半

記憶を蘇らせる薬……その味はすさまじいものだった。

赤褐色の銅のような色をした液体は、粉の風邪薬を煮詰めたような味がし、

ある意味でよく効きそうだった。


「まずぅっ!」


俺は吐き出したくなるのをこらえながら、

フラスコの記憶蘇生薬を飲み干すと、


「何も起こらないんだが……」

「そんなはずはないんですけど……サユの薬ですし」

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「いや、全然なんともな……」

「セナ君?」


ナミが心配したその時だった。突如胸のあたりが熱くなり、

動機は速く、頭がぼうっとしてきた。



気づいたときに目の前に移っていた光景は、昔の光景だった。

幼くなった幼馴染と妹が、どこかの家の子供部屋で遊んでいる。


いや、これは昔の光景だ。

その隣には、子供の頃の俺が居心地悪そうに座っていた。


「セナくんとけっこんするのはわたし!」


小さな幼馴染がそういうと、小さな妹と何かを言い争っていた。


「やだ!おにいちゃんはあたしがすきなの!」

「ふたりとも、おれがげーむしてるときにけんかするなよ……」


俺はテレビの前でゲームをしているようだ、どうやらRPGらしい。

このゲームには確か仲間を選んで結婚できるシステムがあったはずだ。


幼いナミは、幼いセリカとまだ小競り合いを続けている。


「このまえはセリカちゃんがけっこんしたんだから、わたしにもゆずってよ!」

「やだ!やだもん、うわーんおにいちゃん!」


そうだ、このゲームのシステムである結婚は、鉄巨人を倒すことによって条件が満たされる。

そして、そのゲームには名前変更システムがあったはずだ、小さな二人はそのことで喧嘩している。

俺はそんなことを思い出しながら、その光景をぼうっと見ていた。


「ふたりがそんなこというなら、おれはもうこのげーむやらないぞ」


俺、いや幼い俺は、子供ながらの短気さで怒ってしまい、部屋を出ていく。

画面に映った鉄の巨人は倒されないまま、ただ同じモーションを繰り返している。


そう、こいつの弱点は確か……

それを思い出したとき、俺は再び頭がはっきりしてきて、

目の前には心配そうな顔で見つめる大きくなったセリカとナミと、サユがいた。



「鉄巨人の弱点を思い出した」


正気を取り戻した俺がそう言うと、女子3人はホッとしたようで、


「やっぱり薬に問題があったんじゃないの?」

「そんなことありませんよーだ、調合に問題はなかったですし」

「セナ君が無事でよかった……」


胸をなでおろすナミに、サユを少し睨むセリカ、反論するサユに、

俺は安心を覚えながらも、続ける。


「俺の昔やったゲームのボスなんだ、

あいつには背中の真ん中にコアがあって、それを壊せばいいんだ」


記憶蘇生の体験を探りながら、俺は気まずい所はぼかす。


「セリカとナミ、お前らと三人で遊んでた頃、俺は……

俺はあいつを放って逃げてしまった、だから倒さなきゃいけないんだ」


ようやく分かった。

なぜこの世界が作りだされたのか、なぜ鉄の巨人を倒さなければいけないのか。

記憶から作られた世界には、強い印象を持った記憶が色濃く反映されるのだ。


「お兄ちゃん、よくわかんないけど、倒さなきゃいけないのは最初からそうでしょ」

「まあな、でも、決着をつけるんだ」

「そうだね、えへへ、なんか子供の頃一緒に探検したりしたよね」


セリカとナミが、和やかに笑う。


「話は固まったみたいですし、いつ倒しに行くんです?」


サユが痺れを切らしてそういうと、俺は外の景色を確認し、

日が暮れかかっていることを見てとるとこう言った。


「明日にしよう、それで、明日帰るんだ」

「あれ、帰っちゃうんですか?まあ構わないですけど」


サユは少し寂しいのか、少しうつむきかける。


「また俺とサユは会うよ、だからその時は仲良くしてほしい」

「当たり前じゃないですか、なにいってるんでしょう……」


サユは異世界の住人だが、今なら俺は、現実のサユさんとも仲良くなれる気がした。


「サユさん、あたしたちは明日帰ってしまうかもしれないけど、ずっと友達でいようね」

「別に寂しくはないんですけど、まあそういうならしょうがないですね」

「サユちゃんって思ったより話しやすい子でよかったよ、えへへ」


ナミとセリカがサユにそう語りかける。


鉄巨人を倒したら、ゲームはクリアされ、

俺たちは元の世界に帰る。


ボス戦こそ本番だが、俺は奇妙な勝利の確信と、

この異世界に別れを告げることの寂しさを感じていた。

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