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4日目中盤

ナミから衝撃の事実を伝えられた後に、俺たちは酒場に来ていた。

とりあえず朝食をとって今後のことについて話し合うことにしたのだ。


この世界はサークルエンタープライズに勤めるナミの父が作った世界、

正確には俺たちプレイヤーの記憶を元に構成された世界だという。


「しかし、この酒場…確かに見覚えがあるな」


あの壁にかかっている鹿のような剥製は、

俺がファンタジーRPGでよく見るようなディテールをしていた。


先日のセリカとナミのメイド服も、ゲームのコスチュームチェンジでよく見るものだ。

俺たちは木製のテーブルを囲みながら、仔羊肉のローストサンドとコーヒーを注文した。


「それで……バグで帰れないってどういうことだ?」


焦げ茶の木目の椅子から身を乗り出し、俺は左隣に座るナミにいきなり本題をぶつけた。


「そのね、セナ君とセリカちゃんをゲーム世界に招待できたのまでは良かったんだけど、

ちょっと開発中のゲームだからね?バグが残っちゃったみたいなの」


前半で既に良くない。右隣に座る妹もそんな顔をして、ナミに質問を投げかける。


「ナミさんのお父さん、ゲームから脱出する方法は用意しなかったの?」


セリカの当然の疑問に、ナミは困惑顔で、


「ある程度データが取れたか、セナ君たちが帰りたいと思った時に、

自動で脱出するコマンドみたいなものが出る予定だったんだけど……」

「俺たちが見たことないということは、出るはずのものが出なかったと……」

「あはは……」


笑ってごまかすナミに、セリカは少し呆れる。


「でも、ナミさんのお父さんがナミさんをこの世界に送り出したってことは、

何か方法が見つかったんでしょ?」

「うん、そうなの、この世界から出る方法があるんだよ!」


おおー!っと雰囲気だけでもこの行き止まりの空気を盛り上げていく。

ろくでもない方法なのは、ナミの冷や汗を見る限り明らかなようだ。


「それで、その方法は?」


セリカは禁断の質問を口にする。

ああ、聞いてしまった、俺たちにはその方法しか残されてないのに。

ナミは重々しく口開いた。


「ゲームを、クリアすること……、

パパが言うには、セナ君の記憶を元に創られた一面のボスを倒すことだって」

「ボス?お兄ちゃんの記憶にあるボスってどういうのなの?」

「データを見る限りでは、鉄の巨人……」


なんてことだ、俺が想像してしまったボスは鉄の巨人だという。

俺はよりにもよって、無意識に難易度が高めのゲームのことを想像していたのだ。

高難易度アクションのブラックソウルの発売日が近かったからかな……

あまりに巨大な敵を想像し、俺は少し絶望した。


「ちょっとそれ以上想像しないでよ!また強くなるかもしれないじゃない!」

「あ、ああ……確かにな、イメージするな、イメージするな……」

「でも、打ち勝つためにはイメージトレーニングも必要だよね!」

「ナミ、お前はややこしくするな」


和気あいあいとしているのは、不安を払拭するためだった。

どうするんだ、これ……化けキノコにさえ苦戦したのに、鉄巨人なんか倒せないぞ。


ひとしきり騒ぐと、3人はずーんと重い空気に包まれた。


「とりあえず武器の調達、だな。」


ロールプレイングゲームの基本、装備を整える。

鉄の塊にショートソードで立ち向かうのはあまりに心もとないし、

初期装備で一撃でも食らったらひとたまりもない。

俺はそんなゲーム経験と、そしてキノコ経験から提案をした。

するとセリカの口から飛び出したのは意外な言葉だった。


「仲間を増やした方がいいと思う、

あたしたちは攻撃役しかいないでしょ?この世界がゲームなら、きっと回復役も必要だよ」


セリカの思いがけない提案に、俺とナミは顔を見合わせる。


「仲間って言ったって、どうやって……」


そう俺は言いかけて、この世界は記憶からできている、ということに思い当たる。


「ゲームでは回復役は必ず仲間になるし、俺たちの記憶から作られた世界ならいるってわけか」

「そういうこと」


妹は得意げに鼻を鳴らした。


「じゃあ、まずはセリカちゃんの言う通り、回復魔法の使える人を探しにいこー!」


ナミが元気にガッツポーズを取ると、俺とセリカはようやく気が緩み、

また3人に笑顔が戻っていた。


まずは一歩前進ということだ。

現実に帰る日もそう遠くはないのかもしれない。


俺は、じゃれあっている妹と幼馴染を見て、

やっぱり異世界生活もなかなか悪いものじゃないな、と再び思うのだった。

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