鬼器
「本当にいいのかい?」
笑い袋が僕に話しかけてくる。
「ああ。俺には必要ない。」
「必要ないって言ってもねえ。今日死ぬかもしれないんだよ?」
「別に、今更死にたくない理由はない。死ぬ覚悟はできた」
わけじゃない。
僕の家族に別れの言葉を言いたい。
もちろん、それは叶わない夢だけど。
月が上がってきてからかなりの時間がたっている。
時間で言うならおそらく今は11時ぐらいか。
2時に戦いが始まる。
そこで僕は、
死ぬ。
「今ならまだ間に合う。早く彼女と会うんだ。」
「もういいだろ。あいつを、誰かを巻き込みたくない。俺は、」
僕は。
責任を背負いたくない。
「僕は、そんなに強くないんだ。」
「あっはははは!久しぶりに「僕」っていったね。
そんなに気にすることじゃあないのに。
っま、君が死んだら僕は笑ってあげるよ。 気が済むまでね。」
僕の安否を祈るのか祈らないのかよく分からないセリフを無視しながら僕は、昼間にあった彼女のことを思う。
綺麗だった。
――
パチクリと目が覚めました。何か嫌な気分です。
時間は。
12時過ぎ。
家に帰ったのがたしか、6時で・・・。
単純計算で6時間。お風呂も夕食もまだいただいてません。
両親は、私が既に食事などは済ましたと思って起こさなかったのでしょう。
That's 放棄教育です。(はたして教育といえるのか。)
お腹がすいたので、何か食したいのですが、今から料理を作るのはめんどくさいので。
ッピ!
「240円です。」
コンビニで甘いパンを買いました。
日本のコンビニは便利ですね。
むしろ、ドイツだけなのでしょうが。
ドイツでは、休日法とかいうものにより、休日とか、24時間営業とかは駄目なんです。
もしもなかったら飢死にするところでした。
ブルブルブルブル。
胸ポケットが揺れています。やらしい。
豆。
あの時貰った豆でした。
正確には前回。
冷たい。とても。
こういうときは、普通熱いものだと思うのですが。
とても冷たい。
私の足は既に山を登っていました。早足で。
嫌な予感がするのです。体中の血液が震えているような嫌な予感が。
それは正解でした。
屋敷の前には3人の人がいました。
とても美しい女性と
中性的な顔をした人と(性別は分からない。)
血まみれの少年。
血まみれの少年は、昼間出会ったあの少年でした。
「あら。お客さんかしら。」
美しい女性は、こちらに目線を向けます。
「と思ったら、ただの人間ね。」
中性的な顔をした方は、血まみれの少年をずっとにらみつけています。
「ははは!お嬢ちゃん、来るの遅いねえ!」
どこからともなく勢いよく笑い袋さんが現れます。
「これは、一体?」
「見ての通り。彼は死にかけている。」
体だけ見ると死んでいてもおかしくない状態。
ぱっくりとわれて、中身が見えています。
それでも、息はしているようでした。
「彼の器になってくれ。そうしないと死んでしまう。」
笑い袋さんは笑いながらも切羽詰った様子で言います。
「よくわからないけど、どうすればいいの?」
「昼間あげた豆を2つにわって、片方を食べて、もう片方を食べさせるんだ。」
「わ、わかりました。」
豆は真ん中に切れ目みたいなのがあったので、簡単に2つに割ることができました。
先ほどの2人は、何もせずに(正確には中性顔の人が何かをしようとしましたが、女性の方が抑制しました)見たままです。
片方を食べる。
味はしない。
もう片方を彼に。
「・・・いらない。」
「え?」
「俺は、・・・頼らなくても・・・」
拒絶。
困ります。
「いいから早く!早くしないと彼は死んでしまうぞ!」
笑い袋さんが急かします。
とにかく、目の前で人が死ぬのは見過ごせません。
例え拒絶されても。
「 やめ ろ 」
無理やり口に押し込み、顎を動かして飲み込ませます。
すぐさま私は痛みに襲われ
絶望に浸り
凄惨に笑い
気絶。




