界鬼
私の名前は神憑と書いてかみがかり読む。
神憑 愛。
別に、私が神がかっているわけではなく、
たまたまお父さんの名前が神がかっていただけだ。
自分でも思うけど、ものすごい苗字だ。
神が憑いちゃうって。
そういう私はそろそろ進路を決めなくてはいけない高校2年生の女子ですが。
まあ、そんなのは関係なくなるのですが。
私は今、日本にいるのです。
それがどうしたかって?
実は私、ドイツ出身なんです。
ドイツ生まれのドイツ育ちです!
お父さんがドイツに出張の際に、たまたまピザ屋で出会ったのがお母さんらしいです。
そして二人はそのまま交際し結婚し私が生まれ・・・。
17年間(あと少しで18年)過ごしてたら・・・。
お父さんの仕事の都合で日本に住むことになりました。
まあ、友達なんてあまりいなかったし、日本語もお父さんの影響でかなり得意なのであまり嫌な気はしませんでした。
もちろん、17年間ほど過ごした土地から離れるのは少し寂しいのですが。
でも、それはもう過ぎたこと。
先日、近くの高校の編入試験を無事に終え、学校に通うことになったのです。
というか今から向かいます。
学校にいくための準備を終え、早々と学校に向かいます。
不安も期待も背負いながら。
なんというか、新しい環境というのは不安もありますが、なんというかこう・・・
夢を持つことができるというか。なんというか。
などと考えていると、本日最初の日本人を発見しました。
どうやら自販機で何を買うか迷っているようです。
私と同じぐらいの年齢の男性です。 身長が高い。
といっても私もかなり身長が高いのです。ちょっとしたコンプレックスです。
そんなどうでもいいことを考えてると彼は、天然水を買いました。
あり得ない。
お金持ちなのでしょうか。
水を自販機やお店で買うなんて...
公園とか家でいくらでも飲めるじゃない!
本当にありえない。(あとでお父さんに聞いた話だとこれはドイツの人のほとんどの方がこの思想だそうです。)
そんな風に思いながら見ていると、彼は私の視線(決して+のイメージではない)に気づいたようで、私の顔をじろじろとみてきました。
「な、なに・・・?」
彼は私を十分に見た後(これは視姦として訴えてもよいのでしょうか)
ああ、と頷いて
「神憑か・・・。珍しい名前だよな。」
!?!?!??
おかしいなあ。
私、名札とかそんなのつけてないのに。
なんか名前が見知らぬ人にばれたようです。
顔に書いてあったのでしょうか。
「ま、俺らにはかかわるなよ。。」
そういって彼はどこかに去っていきました。
な、なななんでしょうか。
いきなり話しかけられて私のことを知っているような素振りを見せた後関わらないほうがいいって。
これ絶対関わる感じのあれじゃないですか。
やっぱり日本怖い。帰ろうかな。
まあ帰るわけにもいかないのでそのまま学校へ。
適当に挨拶を済ませて適当にやじうまさんたちに話を合わせる。
入ってきたばっかりだから、今は物凄く親切にされるけど、1か月もすぎたらこれもなくなるのかなあなんて思う。
そういう考えだから友達ができないんだとか誰かに言われた気がする。
これはもはやテンプレートなんじゃないかって思うほどの来たばかりの転校生への質問攻めとかに適当に受け答えて、そのまま放課後。
部活勧誘とかあったけど、当分は帰宅部の予定。
いやー、楽でいい。
帰り道。今朝怪しい青年にあった通学路を通ります。
もちろん、自動販売機の前にはいませんでしたが。
あの怪しい青年は一体なんだったのでしょう・・・。
そういえば、鞄とか何も持ってなかったし、そもそも服も私服でした。
学校にいってないのでしょうか。
もしかして不良?
思えば顔もどことなく怖かったし不良なんでしょう。
不良がいるのかー。やだなー。
「おや?」
目の前に、小汚い袋が落ちてます。
「なんでしょう?」
恐る恐る手に取ろうとします。
「っあっはっはははははっはっははは!!!!」
「ひ!?えあ!!??」
ふ、ふふ袋が笑った!?
「あっははは!お嬢ちゃん、中々面白く驚くねえ。ひえあ!って!はははは!!」
「な、ななななんですかあなたは!?」
「んん、人に名前を尋ねるときは自分からって、名乗らなかったかい?
といっても僕は人じゃないけどね!」
とても豪快に笑う袋です。
「え、えっと私の名前は――
「おっと、言わなくてもいい。
君は、神憑のものだろう?確か...神憑 愛とかじゃなかったかな」
なんと。
1日に知らない人からこんなに名前を呼ばれたのは始めです。
学校のクラスメイトとなった人たちと今朝あった青年ともう1人(1人と、1袋?)は別に私は名乗ってないのに。
「僕は・・・『笑い袋』っていう妖怪だよ。といっても信じられないか」
省略していますが、この笑い袋さんは常時笑っております。
「笑い袋って、何十年も前に流行ったおもちゃでは?そもそも妖怪って・・・。」
怪奇現象です。ありえません。でも、目の前の袋としゃべっているこの事実を証明するにはそういう心霊的なものがあるのでしょう。もしくは私がドイツに来たせいで精神的に参ってるとか。
「僕はね、力のない妖怪なんだ。人を驚かせることで存在しているんだ。」
ああ、駄目だ。私は日本に来ておかしな精神状態になっているんだ。
帰って病院にいこう。
「そうなんだ。頑張ってね。私これから病院にいくことにしたから。」
「ちょ、ちょっとまってよ!僕をこんな道端に置いてかないでよ!」
「人を驚かせるためにそこに移動したんじゃないの?」
「普段なら動けるんだけど、今は動けないんだよー。
頼むから、僕を家まで送って行ってくれないかい」
嫌です。お断りします。
なんで、あってまもない知らない訳の分からない袋のために日本に来たばかりの私が尽くさなくてはいけないのでしょうか。そもそも私は、これから病院にいって頭が大丈夫かどうか確かめなくてはいけないというのに。あー、やっぱり日本に来て心の奥底では病んでいるのかなあ。
早く病院にいかないと。
30分後、小汚い袋を持った少女が袋の言いなりになって道を歩いている姿が。
私でした。
「ねえ、笑い袋さん、いつになったらその、あなたの住処の森につくの?
疲れたんですが。」
「あっはは!!嬢ちゃんは普段歩いていないのかい? そのままじゃ太るよ!」
む。いちいち気に障る袋です。
「そんなこといっていると、下水道に流しますよ。」
「ははは!冗談がきついねえ!」
冗談がきついのはあなたです!
レディーに対してそんな口ぶりは
「おっと。 あの森だよ。」
森でした。
というか、ここは町はずれの山でした。
道路は舗装されてなく、山に入るための道らしきものもかなり古ぼけています。
「家賃がとてもお安そうですね。」
「家賃は月3000円だよ!君もすまないかい?」
「絶対に住みたくありません。というかその家賃は一体誰に払うんですか?」
「僕。」
「もっと嫌になりました。」
それにしてもこの袋、なかなかボケがいい線いってる。
前世はお笑い関係でもやっていたのではないのか。
なんだかんだいって仲良くやっていけそうな人(袋)です。
「ほら、立ち止まってないで早く登りなよ。」
「えっ、この山を?」
「ほかにどの山を登るんだい?」
「えっ、でも山登りの準備とか何もしてないし...」
「まあ、頑張ってよ!あっははは!」
「えっ、えっ。」
ということで日本に来ての初の山登りが近所の山になりました。
しかも、半強制的に。
スポーツは、それなりにできますが、それと山登りはまた違います。
はっきりいって、疲れる...。
「ほらほら、どうしたんだい?あと少しでつくから頑張りなよ!」
「あ、あのね・・・。少し静かにしてもらえますか?」
呼吸がとても乱れてます。
というかそもそもこんなところに住処なんてあるのでしょうか。
あってもどうせろくなものでは・・・
「ろくなものじゃ・・・あった。」
そこには、とても大きな屋敷がありました。
何百年も前からここにあったと思わせるような木造建築の屋敷が。




