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第4話 入部

「――”魔雨”」




凛の頭上に展開した魔法陣から、水滴が一つ落ちる。




次の瞬間、それは無数の水弾へと分裂し、豪雨のように降り注いだ。




「……っ!」




凛が即座に踏み込み、剣を振り上げる。




魔力を帯びた斬撃が水弾を裂き、白い蒸気が弾けた。




(反応が速いな)




「その程度?」




「いや、まぁ……様子見で」




「何が様子見――」




軽口を叩きながら、彼女が一瞬まばたきをした。




その刹那。




俺は一気に距離を詰める。




凛の目が、わずかに見開かれた。




シュッ!




横薙ぎの一閃。




速い。重い。正確だ。


C級相当という自己評価は、妥当だろう。




(でも――)




剣先が頬をかすめる寸前、俺は凛の剣の持ち手を()()した。




「な――!?」




剣が、重くなる。




重心が崩れた、その一瞬。




掌底を打ち込む。




ドンッ!!




衝撃がプロテクター越しに伝わり、凛の身体がわずかに浮いた。




結界が鈍く波打つ。




俺は追撃しない。




そのまま後方へ跳び、距離を取る。




(……あ、やりすぎたか)




場内が静まり返っていた。




凛は剣を構え直すが、呼吸が乱れている。




「今の……なに?」




さっきの、剣の持ち手が重くなったことを言っているのだろう。




「えっと……なんのことでしょう」




視線を逸らす。




正直に言えば、かなり抑えた。




本気で踏み込めば、今ので終わっていた。




凛の魔力が跳ね上がる。




「本気でいくわ」




「え、いや、これテストですよね?」




返事はない。




次の瞬間、凛の姿が消えた。




――背後。




反射で腕を上げる。




腕に重い衝撃が走り、痺れが広がる。




だが。




(遅い)




俺は凛の軌道を読む。




魔力循環。


重心移動。


呼吸の間。




基礎に忠実で、洗練されている。




だからこそ、予測できる。




俺は最短距離で踏み込み、凛の手首に触れた。




一点集中。




パチン、と乾いた音。




凛の剣が弾き飛ばされ、床を転がった。




その瞬間。




俺の指先は、凛の喉元で止まっている。




――止めた。




ほんの数ミリの距離。




タイマーは、残り十二分。




「……えっと」




静まり返る結界の中。




「俺の勝ち……ですよね?」




(……勝ってしまった)




沈黙。




凛の肩が、小さく震えている。




「……負けよ」




かすれた声。




凛は視線を逸らし、拳を握る。




「……今回は、ね」




俺は慌てて手を引いた。




「ありがとうございました」




顔を上げた凛の視線は、刺すように鋭い。




「……認めない」




それだけ言って、彼女は足早に結界を出ていった。




重たい空気が残る。




「え、俺なんかまずいことしました?」




「あははは! さっちゃん空気読めなさすぎ!」




さっきタイマーを起動した女子が、俺を「さっちゃん」と呼びながらゲラゲラ笑う。




(あの……会って三十分も経ってないですよ?


いつの間にそんな仲になったんでしょうか?)





――この日、俺は魔導競技部に入部した。




===============




後日。


「おい慧! 魔導競技部に入部したって本当かよ!?」




教室に入るなり、久保田が叫んだ。




突然の質問に、俺は思わずうろたえる。




「え……まぁ、うん」




「なんだよ、その歯切れの悪さ。本当なのか?」




「うん。入部した」




「はぁー……ついにお前も青春を感じたくなったか」




「何を言ってるんだよ」




「あれだろ? 凛さんと話したかったんだろ?」




「違うわ!」




まったく、こいつは何をどう勘違いしているんだ。




「慧くん」




そのとき、背後から声がかかった。




振り向くと、凛が立っていた。



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