第九話:地底の巨鳴、その余韻
(……ようやく、世界の震えが収まっていく。
足の裏を激しく叩いていたあの巨大な地鳴りは、
今はもう、深い底の方で小さく喉を鳴らすような、
穏やかな残響へと変わっている)
砂の海を支配していたあの「歌い手」の主は、
僕たちの存在を確認しただけで、
満足したように深く、深く潜り込んでいった。
あとに残されたのは、
嵐が過ぎ去った後のような、
どこまでも広く、密度の高い静寂だ。
――砂の沈殿音:
巻き上げられていた無数の粒が、重力に従って「サラサラ……」と静かに降り積もる、微細な摩擦の合奏。
――彼女の安堵の鳴動:
強張っていた彼女の装備から、緊張が解けたことを知らせる「カラン」という、短くも澄んだ金属の余韻。
――遠ざかる巨体の余波:
砂の深層を何かが進むたびに、遠くで「ズズ……ズズ……」と、重い溜息のように漏れ出す地響きの名残り。
(……助かったんだね。
彼女の指先から伝わっていたあの硬い震えも、
今はもう、いつもの穏やかな拍動に戻っている)
僕たちは、もはや歌うのをやめた砂の上を、
一歩ずつ、その質感の変化を確かめるように進む。
すると、前方から砂の流動音とは明らかに違う、
「硬質な旋律」が風に乗って運ばれてきた。
――新しい世界の予兆:
風に揺れるたびに、何万もの「硬い結晶」が互いに触れ合い、チリン、チリン、と鈴を鳴らすような高い響き。
(この音……。
砂の「こすれる音」じゃない。
もっと硬くて、鋭くて、叩けば今にも割れてしまいそうな、
そんな繊細な響きが辺り一面に満ちている)
足元の感触も、いつの間にか、
指の間をすり抜ける粒の集合体から、
踏みしめるたびに「カチリ」と小気味よく鳴る、
平坦で硬い面へと切り替わっていた。
――境界の残響:
一歩踏み出すたびに、足元から「キィィィン」と、繊細な弦を弾いたような高い音が、地を伝って遠くまで響いていく。
(砂の海は終わったんだ。
ここからは、すべての歩みが音を奏でる、
響きの原野が始まっているみたいだ)
背後で聞こえていた砂の溜息は、
今はもう、反響の届かない過去へと消え去った。
けれど、これから踏み込むこの場所からは、
僕が今まで一度も聞いたことがないような、
「あまりに純粋で、鋭すぎる音」が聞こえ始めていた。




