8.格別
水曜日の17:00
僕と彼女が出会ったあの日から2ヶ月ほどの間必ずこの時間に彼女は僕のギターを聴きにきた。
でも今日は来ない
なぜ。どうして。と
ぐるぐると考えているうちに心臓のBPMが上がっていく。
僕にとって彼女がいることが当たり前になっていることに僕は気がついた。
約束していたわけじゃない、来ないなんてなんらおかしなことではないのに、チラチラと携帯を見て連絡を待っている自分が怖くなる。
この日は待っても待っても連絡は来なかった
ぽつ、ぽつ
雨が降ってきた
「はぁ……」
深いため息をついて、僕は帰る準備をした。
「ただいま、」
扉を開けると目の前には父がいて「おかえり」
3週間ぶりに聴く父の声
驚いて「ぇあ」なんて情けない声が出た
「なんでいんの、?」
そういうと父は笑って僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でた
「いつもいなくてごめんなあ」
母さんと父さんが離婚して2年、漁師の父は家にいないことが多いから僕はいつも1人だ。
「あぁ、そうだ魚待って帰ってきたから」
「まじ?」
「まじまじ」
父の持ってくる魚は格別にうまい。
自然と口角が上がる
「んま」
父は料理はうまい。父の料理は世界一だと思う。
「はは、よかった」
食卓に誰かがいるのは久しぶりで箸が進んだ
あぁ、幸せだ、こんな日々ができるだけ長く続いてほしいと心から思った
この日、僕は初めて凪に自分から連絡を送った。




