2.波
某日 午後16:20分
海辺に向かった
いつもの防波堤、ギターを取り出してまた昨日と同じ曲を弾いた
「あ」
そんな声が聞こえた気がして、振り向いた
そこには昨日のあの女の子がたっていた
「それ、青でしょ?」
そう にこっ と笑う彼女はサンゴ礁のように美しかった
「私、その曲すきだなぁ、なんだか寄り添ってくれるかんじ」
そんなことを言いながら僕の隣に座った
彼女は言った
「ねぇ、あなたのお名前教えてくれない?」
「僕の、名前?」
「うん。あなたの名前」
「えっと、森下日向」
少し照れくさい、自己紹介なんていつぶりだろうか
「日向くん、いい名前だね!!私、凪、汐見凪です!」
へへっと無邪気に笑う彼女は僕とは正反対に見えて僕には少しだけ眩しかった
「日向くん、ひとつ質問してもいいかな?」
僕は頷いた
「どうして日向くんはギターを弾くの?」
どうして、か
思考を巡らせる
ぼくはなんでギターを弾き始めたんだっけ
ずっとひとりぼっちで、誰も僕に関心がなくて
それが
「さみしかった、からかなあ」
「寂しかった?」
「うん、その寂しさを紛らわせるために始めたんだ、でも今はもうギターはぼくの命同然のものだよ」
少しの沈黙
困らせることを言ってしまっただろうか
「日向くんはすごいね」
「ぼくが、すごい???」
ぼくがすごいだなんて、この子は突然どうしたんだ?
「すごいよ」
褒められ慣れてない僕は、褒められるということがなんだか恥ずかしくてまた目を逸らした
プルルル
突然電話が鳴る
ぼくじゃない
「あ、私だ、」
凪は少し悲しそうな顔をして言った
「私いかなきゃ、、ひなたくん、またね」
そう言って凪は重そうな足取りで帰って行った
日向は凪がいなくなったあと、なんだか少し弾き足りない気がして
肌寒い中1時間ほどギターを弾き続けた




