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依頼


「ラウゴさん、なんか外が騒がしくないですか?」

「あぁ?」


 人質を監視していた男がラウゴに呼びかける。何かあれば納屋の近くにいた者が、知らせに来るはずだが、それも一向に来る気配がない。


「馬鹿どもが馬鹿やってるだけだろ。気になるなら見てこいよ」

「わ、分かりました……」


 木箱の上に座り込むラウゴに凄まれ、おどおどと男は入口へ向かった。

 そして扉を開けた途端――。


「お勤めご苦労さんです!」


 煙の匂いと共に、突然顎に何かを押し当てられる。


「え――」


 それが銃口だと気づいた時には、もう遅い。乾いた破裂音が響く。男は顎から脳天を打ち抜かれ、ばたりと倒れる。


「あ?」


 ラウゴが振り返ると、仲間はすでに死んでいた。血で濡れた顔が涙を流し、虚空を見つめている。


「お前がラウゴか」


 納屋の入り口にマグナスが立っていた。

 二丁の拳銃を両手に構え、まっすぐに歩み寄ってくる。


「ちょっと気を抜きすぎじゃないか? せっかくの配置がもったいない。……後で旅立ったお仲間に忠告しといてやれよ」


 ラウゴは理解する。外の連中は、全員こいつが殺した。


「ふん、それは貴様のことだろう」


ラウゴが嘲笑い首をかしげる。すると、隠れ潜んでいたもう一人の仲間が、人質の首元にナイフを突き当て出てくる。


「のこのこと入ってきやがって……詰んだな。せっかく救えそうだった人質が危険に晒されてしまっているぞ?」


 少しでも照準を誤れば、人質に当たる。さらに相手の背後にはほかの村人たちの姿もあった。もし撃てば、敵を貫いた弾が確実に村人を巻き込む。


 ラウゴたちは勝ち誇った笑みを浮かべる。マグナスも諦めたように両手を上げて見せた。


「ま、参った。降参だ降参」


 ラウゴの口角がつり上がる。だが、違和感が脳裏をかすめた。マグナスは両手に二丁の銃を持っていた。しかし、今のマグナスの手には黒銃ゼルファしかない。


「なんてな」


 銃声が響いた。

 マグナスの弾丸が狙った先――それは床に転がっていた白銃キリエル。


 次の瞬間、キリエルの引き金がひとりでに引かれる。

 まるでそこに“もう一人のマグナス”がいるかのように。


 放たれた弾丸は、刃物を構えた男の首筋を正確に撃ち抜いた。

 男は糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。


「なっ、なにぃ……!」


 ラウゴの表情に、初めて動揺の色が現れ始めた。

 残ったのはラウゴのみ。額からにじみ出る冷や汗が頬を伝っていく。


 対するマグナスは、先ほどまでと打って変わって軽薄な笑みを浮かべていた。その表情がラウゴの神経を逆撫でした。


「ふざけやがって……! 青二才が! ぶっ殺してやる!」


 怒りに声を震わせ、背負っていた大斧を振りかざす。

 マグナスは即座に斧の持ち手部分を打ち抜こうとした。


 しかし――


 キンッ。


 火花が散る。弾が一歩手前ではじかれた。ラウゴを守るように、青の半透明な円盾が彼の周囲を包んでいた。


「ちっ、魔力障壁か」

「おうらあああ!」


 斧が振り下ろされるたび、轟音と風圧が納屋を揺らす。マグナスは身を翻し、バク転で後退しながら間合いを取る。壁も床も無残に抉られ、納屋は瞬く間に崩壊していった。


「コルト、村人の安全確保を頼む。俺はこのままあいつを外に誘導する」

「了解」


 マグナスの背後をシェネルコンドルが通り過ぎていく。それと同時にマグナスは床に一発撃ち込み、跳ね上がったキリエルを掴み取る。挑発するようにラウゴの頭部を数発狙い撃ち、走り去った。ラウゴもまた怒り狂い、雄叫びとともに彼を追う。


 そして二人は外へと飛び出していく。


 コルトはその背を見送り、すぐに村人たちの傍へと近づく。


「大丈夫、怪我はない?」

「と、鳥がしゃべった……?」


 ぽかん答えたのは一人の少女だった。コルトは爪で器用に縄を切り、彼女を解放する。


「今は驚いてる場合じゃないわ。他の場所に囚われてる村人はいる?」

「い、いないと思います。他の人たちはきっと……」


 少女の言葉は重々しい。もう殺されているのだろう。


「分かったわ。じゃあほかの人の縄をほどくのを手伝って」

「あの、さっきの人は……?」


 少女は村人コルトを手伝いながら尋ねた。


「彼はあなたたちを助けに来た人よ」

「助け……?」


 少女は目を丸くする。どうして村の惨状を知り、救いに来られたのか。疑問が浮かんで当然だった。


「私たちの仲間には、外の情報に詳しい人がいるの。そのおかげで、間に合ったのよ」

「す、すごい……!」


 少女は畏敬のまなざしをコルトに向ける。その視線に、たじろぎつつもコルトは村人たちを次々と解放していった。


「ありがとうございます……! なんと礼を申せばよいか……!」


 村の長とおもわれる老人も、深く頭を下げる。


(こっちは大丈夫……あとは任せたわよ、マグナス)


 コルトは崩れ落ちる納屋の隙間から外の光を見つめた。


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